徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

再度、「エアーマスク」の安全性と効果について

2014年02月08日 07時30分00秒 | 小児科診療
 首からぶら下げる「エアーマスク」が流行中のようです。
 エッ? これって以前危険が指摘されて販売停止になったものじゃないの?
 → 約1年前に扱った当院ブログ記事;

ウイルスより危険な「ウイルスプロテクター」(2013年2月19日)

 その後もたくましく生き残っていたのですねえ。
 業界発表では「次亜塩素酸ナトリウムは危険だけど二酸化塩素は安全」という論理らしい。

二酸化塩素を用いた空間除菌製品について(日本二酸化塩素工業会)

 安全性に関しては、国民生活センターの報告を見つけました(一部抜粋);

首から下げるタイプの除菌用品の安全性 -皮膚への刺激性を中心に-
・二酸化塩素への職業性暴露による主な健康影響は、気道、皮膚、及び眼の刺激であり、ヒト に関して信頼できる定量的データはないとされています。
・二酸化塩素による除菌をうたった 6 銘柄中 3 銘柄で、「中等度の刺激性」と評価されました。
・「人体に安心」等とうたった銘柄があり、消費者が商品の安全性を過信するおそれがありました。
・有効性をうたう表示の中に、1 銘柄で薬事法に抵触するおそれのある記述がみられました。No.5(Space Washer 株式会社ザッピィ)の事業者のホームページ内には、「インフルエンザ対策としても大活躍!」という記述があり薬事法に抵触するおそれがありました。


 業界が「安全」と謳う二酸化塩素でも、その放出速度・放出量によっては皮膚刺激性・繊維の退色などが認められるデータが示されています。
 また、「抗ウイルス効果」を表示している製品は「薬事法違反」の可能性があることを指摘しています。

二酸化塩素を使った「見えないマスク『ウイルスブロッカー』」の資料を読んでみた(某ブログ)から一部抜粋;
 『ウイルスブロッカー』に使われている固形二酸化塩素剤を使って、その上方1cmと上方30cmの濃度を、1分後と1時間後~20時間後に測定している。
 安全性に関わる数字なので、濃度の測定結果の一覧表のスナップショットを使わせてもらおう。

 上方1cmの、1分後の濃度で 0.55ppm なんですけど・・・
 部屋の隅に置く据え置き型の製品ではなく、身につける製品でこの濃度。固形二酸化塩素剤のガス発生量は安定している(0.009mg/g/hr)ので、製品のごく近くではいつも高濃度となるだろう。
 二酸化塩素の空気中の濃度基準は、日本では特に定められておらず、米国産業衛生専門家会議(ACGIH)が設定している基準がよく使われる。
・TLV-STEL(短時間被曝限度値)(成人が15分以下の短時間、断続的にでも暴露されてはならない濃度)は 0.3ppm 。
・TLV-TWA(時間荷重平均値被曝限度値)(成人が1日8時間または週40時間、繰り返し暴露しても健康上悪影響を受けないと考えられる濃度)は、 0.1ppm 。この製品を使っている人には、抱きついて、胸に顔をうずめない方がいいだろう(笑)
 『ウィルスブロッカー(CL-40)』詳細資料の6ページの「二酸化塩素固形剤安全性データ」には、固形二酸化塩素剤の安全基準濃度を0.017ppm以下とすると書かれている。
 実験の上方30cmは、ネームタグ製品や胸ポケットから口や目鼻への距離を考えているんだろうけど、その濃度は0.02ppm以上で、安全基準濃度の0.017ppmを超えている。実際はもっと拡散するということだろうけど、密着した状態だと高濃度の危険空域・・・。


 これを読むととても「安全」とは言えませんねえ・・・。

 一方、検索してもその「効果」を証明するデータが見つかりません。
 「抗ウイルス効果」を謳うなら装着時の口・鼻部位の薬剤濃度と各環境における安定性・持続性のデータがあってしかるべきなのに、メーカーサイトに見つけることができませんでした。
 この製品は”医薬品”ではなく”雑貨”扱いなので、取り締まる法律がなく「言ったもの勝ち」なのでしょうか?

 医療関係者が納得できるような効果を検証したデータが皆無という状況で、安全性が確保されていない製品が出回るこの国の危うさ。
 「清潔」「除菌」が大好きな日本人に受けする製品なのでしょうが、だからこそ安全性と効果を第三者(具体的には国?国民生活センター?)により検証される必要があると強く思います。
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