少し前に「ヒルドイドの功罪」と題してブログに書きました。
注意喚起目的でこちらにも書かせていただきます。
私が勤務医時代にアレルギー学会で「保湿剤はヒルドイドが良い」と聞いてきて導入したのが約20年前。
その後どんどん使われ始め、現在では保湿剤のスタンダードになりました。
しかしこのヒルドイド、薬価が高いのが玉に瑕。
100gで3000円近くするのです。
ジェネリック医薬品も販売されていますが、2/3程度までしか安くならず、かつ使用感はオリジナルが勝っています。
そのことを知ってから、ヒルドイドの代わりになる保湿剤を探して探して・・・現在は軟膏タイプのプロペト、クリームタイプの親水クリーム、液体タイプのベルツ水にたどり着きました(“保湿剤”を塗り比べてみました)。
すべて500gで1000円程度です。
あ、頭皮だけは適当な代替品が見つからなかったのでヒルドイド・ローションを処方しています。
その間、ヒルドイドの評価は高まる一方で、メディアの影響もあり美容目的で処方を希望する患者さんも増えてきたらしい。
保険がきくから3割負担で手に入るという感覚ですね。
そして、
「ヒルドイドの処方が医療費を圧迫しているのではないか?」
と囁かれ始め、現在も喧々ガクガクの議論中です。
紹介記事の文中で「治療目的は保険適用だけど、美容目的は保険適用外とすべし」は的を得た意見だと感じました。
■ ヒルドイドの美容目的の処方はなくせるか
熊谷信:薬剤師
(2017/9/27:NIKKEI DI online)
ヒルドイドソフト軟膏をはじめとした、ヘパリン類似物質を含む製剤の美容目的での使用が話題になっています。8月に一般紙で大きく報じられたのを機に、ネット上でもそれに対して様々な意見が述べられています。
元になったのは厚生労働省が公表している「NDBオープンデータ」。2014年と2015年のデータを比較すると、ヒルドイドソフト軟膏やビーソフテン油性クリーム(現ヘパリン類似物質油性クリーム「日医工」)などは対前年比で軒並み増加しています。また、性・年代別に見ると、20~50代の女性で増加していることも分かります。
もちろん、このデータから「女性が美容目的に使ってけしからん!」とは断言できません。とはいえ、「ヒルドイド」でウェブ検索をしてみると、「美容クリーム」「アンチエイジングクリーム」といった紹介がなされていたりします。
経験がある方もいらっしゃるかもしれませんが、薬局で大量に処方され、「本当に全て病気の治療に使うのかな?」というようなケースに遭遇します。中には、体にはヒルドイドソフト軟膏を、顔にはビーソフテンローションを、なんて使い分けている人も(ビーソフテンローションは白濁しておらず、本当に化粧水みたいなのですよね)。
処方してもらう患者さんにしてみたら「ちょっと出してください」、そして処方する医師も「まあ、少しくらいなら」と、お互いに罪悪感はないのかもしれません。処方を断ろうものなら、医師に対して患者の間で「あの先生は」と悪評が付くなんて話も聞きます。
ご存知の方も多いと思いますが、OTC薬でもヘパリン類似物質を含む製品はあります。しかし普通は、医療保険を使った方が自己負担は安くて済むのですよね。これはヒルドイドに限った話ではありませんが、「それなら医療機関で出してもらおう」という意識が働くのは無理もありません。
薬剤師としては、窓口で患者さんに説明(説教?)をしたい気持ちはありますが、「美容目的であれば医療保険を使うべきではありません。自由診療扱いで処方してもらうか、OTC薬を買ってください」と言うのは、身もふたもないですが、まあ難しい話です。ではどうしたらよいのでしょうか。
2014年度から、予防目的でうがい薬のみが処方された場合は、処方料や調剤料、薬剤料などを算定できなくなりました。また最近では、湿布薬が1回につき70枚までと制限されたのは記憶に新しいところ。ヘパリン類似物質も、これと同じ運命をたどることになるのかもしれません。
個人的には、添付文書の保険給付上の注意に「治療目的で使用した場合にのみ保険給付されます」と、明示したらよいのではないかと考えています。タミフル(一般名オセルタミビルリン酸塩)を予防目的で使用する際には、保険が使えないことが添付文書に記載されているのと同じですね。ヒルドイドでも、意外に効果があるのではないかと思っています。
注意喚起目的でこちらにも書かせていただきます。
私が勤務医時代にアレルギー学会で「保湿剤はヒルドイドが良い」と聞いてきて導入したのが約20年前。
その後どんどん使われ始め、現在では保湿剤のスタンダードになりました。
しかしこのヒルドイド、薬価が高いのが玉に瑕。
100gで3000円近くするのです。
ジェネリック医薬品も販売されていますが、2/3程度までしか安くならず、かつ使用感はオリジナルが勝っています。
そのことを知ってから、ヒルドイドの代わりになる保湿剤を探して探して・・・現在は軟膏タイプのプロペト、クリームタイプの親水クリーム、液体タイプのベルツ水にたどり着きました(“保湿剤”を塗り比べてみました)。
すべて500gで1000円程度です。
あ、頭皮だけは適当な代替品が見つからなかったのでヒルドイド・ローションを処方しています。
その間、ヒルドイドの評価は高まる一方で、メディアの影響もあり美容目的で処方を希望する患者さんも増えてきたらしい。
保険がきくから3割負担で手に入るという感覚ですね。
そして、
「ヒルドイドの処方が医療費を圧迫しているのではないか?」
と囁かれ始め、現在も喧々ガクガクの議論中です。
紹介記事の文中で「治療目的は保険適用だけど、美容目的は保険適用外とすべし」は的を得た意見だと感じました。
■ ヒルドイドの美容目的の処方はなくせるか
熊谷信:薬剤師
(2017/9/27:NIKKEI DI online)
ヒルドイドソフト軟膏をはじめとした、ヘパリン類似物質を含む製剤の美容目的での使用が話題になっています。8月に一般紙で大きく報じられたのを機に、ネット上でもそれに対して様々な意見が述べられています。
元になったのは厚生労働省が公表している「NDBオープンデータ」。2014年と2015年のデータを比較すると、ヒルドイドソフト軟膏やビーソフテン油性クリーム(現ヘパリン類似物質油性クリーム「日医工」)などは対前年比で軒並み増加しています。また、性・年代別に見ると、20~50代の女性で増加していることも分かります。
もちろん、このデータから「女性が美容目的に使ってけしからん!」とは断言できません。とはいえ、「ヒルドイド」でウェブ検索をしてみると、「美容クリーム」「アンチエイジングクリーム」といった紹介がなされていたりします。
経験がある方もいらっしゃるかもしれませんが、薬局で大量に処方され、「本当に全て病気の治療に使うのかな?」というようなケースに遭遇します。中には、体にはヒルドイドソフト軟膏を、顔にはビーソフテンローションを、なんて使い分けている人も(ビーソフテンローションは白濁しておらず、本当に化粧水みたいなのですよね)。
処方してもらう患者さんにしてみたら「ちょっと出してください」、そして処方する医師も「まあ、少しくらいなら」と、お互いに罪悪感はないのかもしれません。処方を断ろうものなら、医師に対して患者の間で「あの先生は」と悪評が付くなんて話も聞きます。
ご存知の方も多いと思いますが、OTC薬でもヘパリン類似物質を含む製品はあります。しかし普通は、医療保険を使った方が自己負担は安くて済むのですよね。これはヒルドイドに限った話ではありませんが、「それなら医療機関で出してもらおう」という意識が働くのは無理もありません。
薬剤師としては、窓口で患者さんに説明(説教?)をしたい気持ちはありますが、「美容目的であれば医療保険を使うべきではありません。自由診療扱いで処方してもらうか、OTC薬を買ってください」と言うのは、身もふたもないですが、まあ難しい話です。ではどうしたらよいのでしょうか。
2014年度から、予防目的でうがい薬のみが処方された場合は、処方料や調剤料、薬剤料などを算定できなくなりました。また最近では、湿布薬が1回につき70枚までと制限されたのは記憶に新しいところ。ヘパリン類似物質も、これと同じ運命をたどることになるのかもしれません。
個人的には、添付文書の保険給付上の注意に「治療目的で使用した場合にのみ保険給付されます」と、明示したらよいのではないかと考えています。タミフル(一般名オセルタミビルリン酸塩)を予防目的で使用する際には、保険が使えないことが添付文書に記載されているのと同じですね。ヒルドイドでも、意外に効果があるのではないかと思っています。