小児アレルギー科医の視線

医療・医学関連本の感想やネット情報を書き留めました(本棚2)。

“レプリコン・ワクチン”って何?

2024年09月26日 04時53分20秒 | 新型コロナ
2024年10月から新型コロナワクチンが定期接種化されます。
現在、新型コロナワクチンのは5つの製薬会社から販売されており、つまり5種類存在します。

その中の一つ、Meiji Seikaからは「コスタイベ®」という名前の新しいワクチンが発売されました。
これは従来の mRNA ワクチンと少々異なり、“自己増幅型”の mRNA ワクチンと説明されています。
これを“レプリコン・ワクチン”と呼ぶことを最近知りました。

新しいメカニズムのワクチン・・・とくれば、ワクチン反対派がザワつくことは想定内。
実際にあちこちで「レプリコン・ワクチンは危険だ!」という声が挙がっています。
ネット検索すると医療機関の中には「レプリコン・ワクチン接種者は出入り禁止」という穏やかでない措置を執るクリニックもヒットします(もともとワクチン反対派)。

私も医療者ですが、日本の医療は保険診療が基本で、国(≒厚生労働省)が安全性と効果を保証した医薬品を用いて診療しています。
そして今回のレプリコン・ワクチンも厚生労働省が審査して認可された医薬品です。
つまり、日本国が品質を保証したということで、
「何か問題発生すれば国が責任を持ちます」
というお墨付きがあります。

さてこのレプリコン・ワクチン、いったいどういうもので、我々はどう捉えたらよいのでしょう?
解説記事を拾ってみました。

<ポイント>
・これまでのmRNAワクチンでは、mRNAはヒトの体内でスパイクタンパク質を産出させるとすぐに消えていたが、レプリコン・ワクチンではヒトに注射すると、そのmRNAが体内で自己増殖を続ける。そのため、「自己増殖型(レプリコン)」を頭に付けて呼称する。免疫反応を呼び起こすmRNAが自己増殖を続けるため、少量の接種で長期間の効用が出ると期待されている。


▢ 新型コロナ「レプリコン・ワクチン」になぜ懸念の声?
〜mRNAが自己増殖し長期間の効果に期待、だが承認は日本のみ
2024.9.2:JBPress)より一部抜粋(下線は私が引きました);

 高齢者などを対象にした新型コロナワクチンの「定期接種」が2024年10月から始まります。秋からの接種では「次世代型mRNAワクチン(レプリコン・ワクチン)」が使用されますが、このワクチンに対しては一部の医療関係者が使用に懸念を表明しています。いったい、何が問題とされているのでしょうか。接種制度の変更点も含め、やさしく解説します。
・・・
▶ 2024年10月から「定期接種」に
 新型コロナウイルスのワクチンは、全額を公費負担とする「特例臨時接種」として2021年6月からスタートしました。厚労省のデータによると、2024年3月末までの接種回数は延べ約4億3619万回。全人口に対する1〜3回目の接種率は、80.4%、79.5%、67.1%と高い割合を記録しました。製薬企業の「ファイザー」「モデルナ」といった言葉が、連日のようにニュースとして流れたことを多くの人は忘れていないでしょう。
 全額公費負担のワクチン接種は2024年3月末で終了し、2024年10月からはコロナワクチンの「定期接種」が始まります。定期接種とは、季節性インフルエンザのワクチンなどと同じように、費用の一部を利用者が自己負担する接種のことです。対象となるのは、
 ①65歳以上の高齢者
 ②60〜64歳で重症化リスクの高い人。
それ以外の人は完全に「任意接種」となるため、全額を自己負担せねばなりません。
 では、接種費用はいくらになるのでしょうか。
 厚労省が全国の自治体向けに配布した資料によると、接種1回分のワクチン代は1万1600円程度。それに医師・看護師の「手技料」を加えた費用は計1万5300円程度となっています。厚労省は①と②に該当する利用者の自己負担額を1回7000円と設計しており、その差額は市町村への交付金で賄う予定です。ただし、自治体によっては独自の補助制度を設けているケースも多く、実際の自己負担額はさらに安くなる可能性があります。
 定期接種の期間は2025年3月末までで、この間に自治体は接種期間を設定し、希望者にコロナワクチンを接種していくことになります。
 この定期接種では、新たに「次世代型mRNAワクチン」も使用されることになっています。「レプリコン(自己増殖型)」とも呼ばれるこの新型ワクチンには、一部の医療関係者などから接種に懸念も示されていますが、いったい、どんなワクチンなのでしょうか。

▶ レプリコン=自己増殖型とは
 新型コロナ感染症対策のワクチンとしては、主にmRNA(メッセンジャーRNA)を利用したワクチンが使用され、多くの国民が接種しました。
 それまでのワクチンは、ウイルスや細菌などの病原体を弱毒化したり、ウイルスと同じ成分のものを人工的に作ったりしてヒトに接種し、その免疫を体内に作り出す仕組みでした。「不活性ワクチン」「組み換えタンパクワクチン」などが、これに該当する従来型のワクチンです。


図:フロントラインプレス作成

 これに対し、mRNAワクチンは、コロナウイルスの設計図となるmRNAを脂質の膜に包んだものです。これをヒトに注射すると、mRNAに書かれた遺伝情報をもとに体内で新型コロナウイルスのスパイクタンパク質(ウイルスがヒトの細胞へ侵入するために必要なタンパク質)が産出されます。すると、スパイクタンパク質に対する免疫反応などが起き、コロナウイルスそのものが体内に侵入するのを防ぐことができるという仕組みでした。
 mRNAを利用した医薬品は、世界の製薬企業による激しい開発競争が続いていますが、コロナワクチンで初めて実用化されたと言われています。
 では、2024年10月から使用される「次世代型mRNAワクチン」は、これまでのmRNAワクチンとどこが違うのでしょうか。最大のポイントは「レプリコン(自己増殖)」にあります。
 これまでのmRNAワクチンでは、mRNAはヒトの体内でスパイクタンパク質を産出させるとすぐに消えていましたが、レプリコン・ワクチンではヒトに注射すると、そのmRNAが体内で自己増殖を続けます。そのため、「次世代型」ではなく、「自己増殖型(レプリコン)」を頭に付けて呼称することもあります。免疫反応を呼び起こすmRNAが自己増殖を続けるわけですから、少量の接種で長期間の効用が出ると期待されています
 この次世代型mRNAは2023年11月、他国に先駆けて日本で初めて承認されました。2024年8月末現在でも、世界で唯一の承認国です。認可を受けたのは、米国のバイオ企業アークトゥルス・セラピューティクス社が開発したもので、日本では明治ホールディングス傘下のMeiji Seika ファルマ社(東京)が製造・販売権を取得。「コスタイベ筋注用」の名称で販売されます。
 Meiji Seika ファルマ社はこのワクチンを福島県南相馬市の施設で生産するほか、2028年の稼働を目指して神奈川県小田原市にも新工場を建設します。「夢の医薬品」と呼ばれた次世代型mRNAワクチンを国内で供給する体制がいよいよスタートするのです。

▶ 日本看護倫理学会が表明した懸念の中身
 もっとも、レプリコン・ワクチンに対しては、医療関係者からも使用に疑問の声が出ています。その最たるものは、一般社団法人・日本看護倫理学会(理事長=前田樹海=東京有明医療大学教授)でしょう。公表資料によると、同学会は会員数約900人。日本学術会議の協力学術研究団体には含まれていませんが、2008年の発足以来、多様な研究活動を続けています。
 同学会は2024年8月7日に「新型コロナウイルス感染症予防接種に導入されるレプリコンワクチンへの懸念 自分と周りの人々のために」と題する緊急声明を発表し、「安全性および倫理性に関する懸念」を表明したのです。5つ示されたポイントのうち、重要なのは次の3点です。

◎レプリコンワクチンが開発国や先行治験国で認可されていないという問題
 日本での認可から約8カ月になるが、開発国の米国や大規模な治験を行ったベトナムなど海外では今も承認国が出ていない。この状況は海外で承認が取り消された薬剤を日本で使い続け、多くの健康被害をもたらした薬害事件を想起させる。
◎シェディングの問題
 レプリコンワクチン自体が自己複製mRNAであるため、接種者から非接種者に感染(シェディング)するのではないかとの懸念がある。それは接種を望まない人にワクチン成分が取り込まれてしまうという倫理上の問題がある。
◎将来の安全性に関する問題
 遺伝子操作型mRNAワクチンは、人体の細胞内の遺伝機構を利用し抗原タンパク質を生み出す技術であり、人間の遺伝情報や遺伝機構に及ぼす影響、とくに後世への影響についての懸念が強く存在する。(最近の研究によると)ヒトの遺伝情報に影響しないという言説は根拠を失いつつある。 

 また、緊急声明は、従来のmRNAワクチンでは実験段階でも接種段階でも重篤な副作用について接種の際に十分な説明が行われなかったと指摘。コロナワクチンの接種は、インフォームド・コンセント(十分な説明を受け納得したうえでの同意)を基盤とする医療のあり方を揺るがしかねない事態になっていると強調しています。
 そして声明は「われわれは、安全かつ倫理的に適切なワクチンの開発と普及を強く支持するものではありますが、そのいずれも担保されていない現段階において拙速にレプリコンワクチンを導入することには深刻な懸念を表明します」と結ばれています。 
 旧来型のコロナワクチンについても、各地では数多くの副作用や健康被害が報告されました。
 厚生労働省の疾病・障害認定審査会(感染症・予防接種審査分科会 新型コロナウイルス感染症予防接種健康被害審査第一部会)の資料によると、予防接種の健康被害救済制度を使ったコロナワクチン接種による健康被害の申告は、2024年6月段階で1万1305件に達しています。この7割近く、7458件が実際に健康被害を認定されました。
 
 2024年10月から始まるコロナワクチンの定期接種でも、接種を希望する人は事前にレプリコン・ワクチンの情報を十分に集め、医師や看護師から副作用に関する説明なども十分受けて、接種するかどうかを判断することが必要になりそうです。


・・・この記事を読んでも、現状を列挙しているだけなので、いいのか悪いのか判断不能。

素朴な疑問ですが、レプリコンワクチンが「他人に感染する」というところが私には理解できません。
mRNAは遺伝子情報ですが、ウイルス粒子から見るとほんの一部で完全なウイルス粒子ではありませんので、基本的に体に入っても病原性を発揮しないはず。

“ウイルスが感染する”とはどういうことか、皆さんご存知ですか?
ウイルス粒子が人体に侵入し、さらに細胞内に侵入し、人間の細胞のシステムを借用してウイルス粒子をたくさん作り(複製)、それが細胞外にばらまかれ、その一つ一つがまた別の細胞に侵入して複製をして増えていく・・・というおぞましことが起きているのですよ。

mRNAワクチンが登場した際、「ワクチン成分が細胞内に入るなんてとんでもない!」というのが反対派の主張でしたが、実際のウイルス感染より全然まし、というのが科学的事実です。

人間に遺伝子情報の多くは、ウイルス遺伝子の残骸であることが指摘されています。
つまりウイルス感染は、人間に遺伝子に痕跡を残し得るのです。
その方が恐いですよね。

厚労省の会議の記事が目に留まりました。

<ポイント>
・他人に伝播するとの科学的知見はなく、体内におけるmRNAの自己増幅は一時的なもので、mRNAと抗原蛋白が一過性に発現後は経時的に消失することが非臨床試験で確認されている。

日本看護倫理協会その他で懸念されていることは起きていない、との見解ですね。
ただ、「起こらないことを証明する」ことは“悪魔の証明”と呼び、不可能なことが多いとされています。
つまり、ワクチン反対派が「危険だ!」というのは簡単ですが、「安全だ!」と証明するのは至難の業であり、新しいことをはじめるハードルになっていることはいつの時代も同じ、人類にはそれを乗り越える意志と勇気が必要であり、試されているのです。


▢ JN.1対応ワクチン了承‐今年度のコロナ定期接種 厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会 
2024年9月25日:m3.com)より一部抜粋(下線は私が引きました);

 厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会は19日、今年度の新型コロナウイルスワクチンの定期接種について、5社のJN.1系統対応1価ワクチンを使用する案を了承した。初回接種と追加接種の区分を設けず1回接種にすることも決めたが、使用予定ワクチンの一つであるmRNA(レプリコン)ワクチンに関する根拠不明な言説の流布を踏まえ、科学的知見の周知を求める声が相次いだ。
・・・
 厚生労働省の「新型コロナウイルスワクチンの製造株について検討する小委員会」では、世界保健機関(WHO)の推奨と同様、1価のJN.1系統を24年度定期接種で使用するワクチンの抗原とすることを5月に決定した。現時点でJN.1系統対応1価ワクチンは、ファイザー、モデルナ、第一三共、武田薬品、Meiji Seika ファルマの5社が承認を取得している。
 諸外国では、既感染率やコロナワクチンの接種率を考慮して1回接種の用法・用量としており、初回接種・追加接種を区別せず、追加免疫を主体として添付文書を記載している。
 これらを踏まえ、厚労省は今年度の定期接種期間を10月1日~来年3月31日とし、5社のJN.1系統対応1価ワクチンを使用する案を提示。初回接種と追加接種の区分を設けず、1回接種にするとした。
 委員から反対意見は出なかったものの、Meiji Seika ファルマのmRNA(レプリコン)ワクチン「コスタイベ」については、作用機序をめぐる根拠不明な言説がインターネット上で見られることを指摘する声が相次いだ
 厚労省は、「他人に伝播するとの科学的知見はなく、体内におけるmRNAの自己増幅は一時的なもので、mRNAと抗原蛋白が一過性に発現後は経時的に消失することが非臨床試験で確認されている。これを国民に周知したい」と説明した。
 笹本洋一委員(日本医師会常任理事)は、「製造販売業者は承認後も新規情報を公表する責任があり、医療機関と国民への分かりやすい情報提供を求めたい」と述べた。
 伊東亜矢子委員(三宅坂総合法律事務所弁護士)は、接種者への診療を拒否する医師が見られることを懸念し、「(医師法第19条に基づく)応召義務違反だと思うが、誤解を生まないよう科学的知見に基づく周知を徹底してほしい」と訴えた。
 厚労省は、医師法への抵触について「正当な事由の有無、患者の容態に応じた緊急性など様々な事情を勘案して個別具体的に判断するものであり、一概に回答するのは困難」と述べるにとどめた。


・・・というわけで、集められる情報をすべて分析した結果、「危険ではない」と国が判断したということです。
メカニズムではなく価格に言及した記事も紹介します。
レプリコンワクチンについては、mRNAを自己複製できるという意味ですが、この言葉が独り歩きして、周囲にシェディングをもたらすなどというデマが広まっているようです。生物学の知識があれば、誤ったことであることは読者の皆さんもおわかりかと思いますが・・・
と一笑に付していますね。


▢ 10月からの新型コロナワクチンの値段がヤバイ
 倉原優:医師
2024/09/19:ケアネット)より一部抜粋(下線は私が引きました);

▶ 10月から定期接種
 次の新型コロナワクチンの案内はいつ来るのかと待ちわびていたら、秋冬のインフルエンザワクチン接種と時期を合わせるかのように定期接種が開始されることになりました。
「2,000~3,000円なら余裕で打つっしょ!」と思っていたら、われわれ非高齢者の医療従事者の自己負担額は…
1万5,300円!!!
 グハッ!鉄板焼の高級店のカウンターで、神戸牛フィレ肉をカットしてもらうくらい高いでんがな!
 もともと新型コロナワクチンというのは、1回接種すると原価で1万5,300円かかるのです。そもそもが高い。65歳以上の高齢者や、60~64歳の重度の疾患がある場合には定期接種が適用され、安い値段で接種できるような仕組みになっています。この負担軽減は、国と自治体の両方が頑張ってくれていて、渋谷区や足立区のように、高齢者の場合は無料で接種できるところもあるようです。
 問題はわれわれ任意接種世代です。
 過去には医療従事者にも新型コロナワクチンの接種費用が減免された時代もありましたが、今やもう一般の方々と同じ扱いです。当院のスタッフに聞いたところ、打たない人のほうが多かったです。
 子供についても、何らかの助成があってしかるべきと思いますが、今のところ自治体に委ねられているようです。

▶ ワクチン流通量は?
 これまで圧倒的なシェアを得ていたmRNAワクチンが流通量のほとんどを占め1)、おそらく主にこれが選択されるでしょう(表)。SNSで炎上気味のレプリコンワクチンについては400万回程度の流通です。

表. 10月以降流通する新型コロナワクチン


 レプリコンワクチンについては、mRNAを自己複製できるという意味ですが、この言葉が独り歩きして、周囲にシェディングをもたらすなどというデマが広まっているようです。生物学の知識があれば、誤ったことであることは読者の皆さんもおわかりかと思いますが…。
 レプリコンワクチンは、1本16人分なので、集団接種とかそういうことになったら使いやすいかもしれませんが、クリニックや医療機関では外来用に使いづらいかもしれません。

▶ 外来で聞かれることが増えた
 最近外来で、「10月以降、新型コロナワクチンを接種すべきかどうか」という質問を患者さんからよくいただきます。個人的には、「これまでインフルエンザワクチンを接種していたなら検討いただく形でよい」と返しています。
 ただ、この値段だと、全員に強くお勧めするとは簡単に言えなくなりました。
 最近だと、帯状疱疹ワクチンもそれなりに高いですが、今後ワクチンの原価は上がってくる時代なのかもしれません。


 今回に限りませんが、医療情報はSNSの噂話ではなく、信頼できるサイトから入手することをお勧めします。
 しかし日本の厚生労働省は信頼されていない、という根本的なことが問題をややこしくしている感は否めず。
 そして医師の中にも、残念ながら不安に取り憑かれて判断力が鈍っている方がいます・・・。


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