NHKスペシャル「生命大躍進」(2015年放送)
第1集 「そして"目"が生まれた」
第2集 「こうして"母の愛"が生まれた」
第3集 「ついに"知性"が生まれた」
3年前に録画してあった番組を見てみました。
第1集「そして“目”が生まれた」
地球上の生物の歴史は40億年と途方もない年月ですが、光を感じる“目”を持ったのは5億年前のことだそうです。
もともと光を感じる遺伝子(ロドプシン遺伝子)は、植物性プランクトンが有していました。
ロドプシン遺伝子をなぜ動物が持つようになったのか?
番組では、動物が食べた植物性プランクトンがたまたま生殖細胞に侵入し、遺伝子DNAの中に光を感じる遺伝子が組み込まれた、と説明していました。
昆虫(節足動物)の目は“複眼”で、輪郭がぼんやりとしか見えません。
一方、動物(脊椎動物)の目は“カメラ眼”と呼ばれ、くっきりハッキリ見えます。
カメラ眼はどうしてできたのか?
ここも、遺伝子の突然変異で説明されていました。
ふつう、生殖細胞の遺伝子数は、体細胞の半分で、精子と卵子が結合してもとの数に戻ります。
しかし、たまたま体細胞と同じ遺伝子数をもつ精子と卵子が発生し、それが結合して奇跡的に生を受け成長すると・・・ここまででもあり得ない確率ですが・・・細胞数が2倍のスーパー個体が発生します。さらに長い歴史の中で、同じ奇跡がもう一度起こり、4倍体の遺伝子数を持つウルトラスーパー個体が発生した。
4倍数の遺伝子をもつと、複雑に進化することが可能となり、その一つがカメラ眼であると説明されました。
奇跡に次ぐ奇跡、ホントかなあ?
ただ、環境に適応して変化すると長らく考えられてきた“進化”のとらえ方が変わっていることに気づきました。
遺伝子変異は常に発生しており、ほとんどが淘汰されてしまいますが、ごくまれに環境に有利かつ生体に有利なモノが発生するとそれが選択的に残される、というカラクリです。
これは、抗菌薬に対する耐性菌の発生と似ています。
抗菌薬の使いすぎで耐性菌が発生すると考えがちですが、そう単純ではありません。
細菌でも遺伝子変異は常に発生しており、その中のあるモノが抗菌薬投与中にたまたま生き残ると「耐性菌」と呼ばれるモノになるだけです(やはり単純か)。
第2集 こうして"母の愛"が生まれた
今から2億5000年前、初期の哺乳類は卵を産んでいたそうです。
卵を細菌感染から守るため、母親はリゾチームという殺菌物質を含む汗のような体液を皮膚から分泌してそれを卵に塗って保護していました。
あるとき、偶然の遺伝子変異で「αラクトアルブミン」というタンパク質が作れるようになりました。これは少し甘い栄養分。実はリゾチームと立体構造が酷似しています。
すると生まれた子ども達は、リゾチームとαラクトアルブミンを含んだ母の汗を舐めるようになりました。
これが母乳の始まりです。
私が驚いたのは、「リゾチーム」と「αラクトアルブミン」。
これは現在の人間の母乳にも含まれる物質であり、とくにアレルギーの原因になるコンポーネントとしても有名です。こんなに長い歴史があったとは・・・。
それから、卵として産み落としていたシステムを、体内に取り込み胎盤を介して育てるシステムへ変換しました。
これは、敵に襲われたときに一緒に逃げやすい利点があります。
どのようにしてほ乳類は胎盤を手に入れたのか?
意外なことに、これはウイルスから入手しました。
別の働きをするレトロウイルス由来の遺伝子が、哺乳類の祖先に感染した際、生殖細胞に進入して代々受け継がれ、それが発効したときに胎盤を造ることになった、という夢のような話。
ウイルス感染が遺伝子を修飾して人類を進化させてきたことは有名です。
ミトコンドリアもウイルス由来と言われているし、人間の遺伝子の9割はウイルス遺伝子の残骸と呼んだこともあります。
進化は奇跡の積み重ねから造られてきたのですね。
第3集 ついに"知性"が生まれた
ここでもやはり、遺伝子の突然変異やトラブルが偶然(というか奇跡的に)人類の進化に貢献したらしい、とのこと。
ネアンデルタール人は、人類の祖先(ホモ・サピエンス)ではなく、絶滅した特殊な霊長類と説明されていました。
彼らはホモ・サピエンスより脳の重量が1割多かったことが骨の分析から判明しています。
つまり、ホモ・サピエンスよりも知能が発達していた可能性があるということ。
それから、体格ががっしりしていて、腕力はホモ・サピエンスの2倍!
しかし彼らは進化の歴史から消え去りました。
なぜネアンデルタール人は絶滅したのか?
いろんな分析を統合すると、彼らは言語を持たなかった可能性が推測されています。
そのため、進化から取り残されてしまった。
ネアンデルタール人と人類の祖先であるホモサピエンスは、言語に関する40万の遺伝子情報のうち1つだけ異なるそうです。
それが言葉の発達に影響を与え、片や絶滅し、片や進化の頂点に君臨することになった、というファンタジー。
この分野ではまだまだ未解明の事がたくさんあり、研究は現在進行中。
<内容紹介>
第1集 そして"目"が生まれた
40億年前の地球最初の生命から私たち人間まで、一度も途切れることなく繋がっている命の記録、DNA。その中には私たちの祖先に当たる古代生物たちの“痕跡”が残されている。信じがたい幸運や、想像を絶する大絶滅といった波乱万丈のドラマの末、進化の大躍進を成し遂げてきた“私たちの物語”とは?「生命大躍進」では、遙かな時を超えた壮大な進化のドラマを3回シリーズで描く。
第1集は「目の誕生」の物語。今からおよそ5億年前、それまで目を持たなかった祖先が、突如として精巧な目を持つようになった。いったいなぜ、急に目を持つように進化できたのか?私たちの「目の誕生」に秘められた驚きのドラマに迫る。
(放送を終えて)
「遺伝子は時に、異なる種の間を移動し、それをもらった生き物は突然、“パワーアップ”できる。動物の目はそうして生まれた器官の一つ」3年前、国内のあるDNA研究者からこの話を伺い、ビックリ仰天したことこそ、「生命大躍進」シリーズの誕生の瞬間でした。なぜなら普通、「進化は親から子へ世代交代する過程で起こる」と考えられているからです。
DNA研究が示す「種を越えた遺伝子の移動」という進化メカニズムは、従来の進化論を根底から覆すような話でした。「ひょっとして自分もカニを食べたら、カニの遺伝子が移ってカラができるかも。葉っぱを食べたらその遺伝子で光合成ができるかも・・・(人ではさすがに起きません)」などと妄想しながら、その日、興奮して帰路についたことを鮮明に思い出します。
この取材のおかげで「DNA研究を取材すれば、過去の化石研究を軸とした生命シリーズと違う、全く新しい生命進化の番組ができる!」と確信することができました。
第1集では、その話をしてくれたDNA研究者を徹底的に取材し、研究者の脳内だけにあった「目誕生の物語」のビジュアル化に挑みました。実はDNA研究では肝心の「遺伝子をもらって大躍進をした祖先の姿形が分からない」という難題がありましたが、そこは化石研究者の助言を受け、当時の祖先の姿を科学的に推定することで乗り越えました。
こうして、DNA研究者が思い描く、眼誕生の瞬間を描きました。また、難解なDNAの話をどうかみ砕いて伝えるか、という点にも苦労しました。議論の末、新垣結衣さんに「進化に詳しい姉」と「あまり興味のない“ふつうの”妹」の二役に扮して頂き、二人の軽やかな会話の中でDNAの本質を伝えていく、という演出にたどり着きました。
この番組では、時にCGで再現した古代の生物たちが、新垣さんや研究者たちがいる現代の世界へと飛び出します。遊び心にあふれたこのシリーズを通じ、人がいまここにいるようになった理由である「太古からの命の物語」に、子供から大人まで、家族みんなで思いをはせて頂ければ、担当者として幸いです。
第2集 こうして"母の愛"が生まれた
第2集は、我が子を思う「母の愛」の誕生に迫る。今からおよそ2億年前、卵を産んだらそれで終わりだった祖先たちが、突如として献身的な子育てを始めた。それが、人間ならではの深い母子愛にまでつながった裏側には、祖先のDNAに起きた大異変があった!
俳優の新垣結衣さんが、一人二役で姉妹を演じ、番組をナビゲート。
(放送を終えて)
「ヒトのDNAの一部はウイルスに由来している」――そんな信じがたい話を研究者から聞かされたのが1年前のこと。しかも、そのウイルス由来のDNAが、ほ乳類の進化にも大いに関係しているというのだから、ますます信じられません。
しかし、取材を進めていくと、過去のウイルス感染によって生物が進化していった証拠が、次々と見つかっていることがわかり、生物の教科書で学んだ進化論とは全く違う、SFのような新たな進化のイメージにとてもワクワクしたことを思い出します。
番組では、こうした新しい進化論の中から、お腹で赤ちゃんを育てるための臓器「胎盤」の誕生にウイルスが関わっているという最新トピックと、それが人間ならではの「愛情あふれる子育て」へと繋がった物語をご紹介しました。
想像に難くないことですが、ウイルス遺伝子が動物のDNAに入り込む時には、深刻な病気を引き起こすことがわかっています。多くの研究者に協力していただき、胎盤誕生の際に起きたであろう、ウイルス大流行の様子をリアルなCGで再現することに挑戦しました。私たちの祖先が絶滅寸前の危機を乗り越え、さらには侵入したウイルスの能力まで取り込んで進化してきた、その「たくましさ」を表現できるように、なんどもCGを練り直しています。
私自身は、そうした祖先たちの苦闘の積み重ねの上に、自分の命があると想像すると、なんだか前向きに生きる力が湧いてきます。
この3回のシリーズで紹介する、いくつもの奇跡的な進化の物語から、何かポジティブなメッセージを受け取っていただければと願っています。
第3集 ついに"知性"が生まれた
最終回の第3回は、私たちの“知性”の誕生の謎に迫る。悠久の生命史の中にあって、文明を持ちうるほど高い“知性”を持った生き物は、私たち人間・ホモサピエンスだけだ。
どのような進化の物語の末に、私たちはこの“知性”を獲得できたのだろうか?
最新のDNA研究は、その謎をとく『鍵』ともいえる太古の事件を見いだした。実は、祖先達はおもいもよらぬことで脳を巨大化し、知性を高度化させたのだった・・・その驚きのドラマとは。
最新研究成果に基づく超リアルCGで、その太古の事件の現場にタイムトラベル!ナビゲーターの新垣結衣さんと一緒に、私たち人間に至る最後の、そして最大の大躍進を目撃する。
第1集 「そして"目"が生まれた」
第2集 「こうして"母の愛"が生まれた」
第3集 「ついに"知性"が生まれた」
3年前に録画してあった番組を見てみました。
第1集「そして“目”が生まれた」
地球上の生物の歴史は40億年と途方もない年月ですが、光を感じる“目”を持ったのは5億年前のことだそうです。
もともと光を感じる遺伝子(ロドプシン遺伝子)は、植物性プランクトンが有していました。
ロドプシン遺伝子をなぜ動物が持つようになったのか?
番組では、動物が食べた植物性プランクトンがたまたま生殖細胞に侵入し、遺伝子DNAの中に光を感じる遺伝子が組み込まれた、と説明していました。
昆虫(節足動物)の目は“複眼”で、輪郭がぼんやりとしか見えません。
一方、動物(脊椎動物)の目は“カメラ眼”と呼ばれ、くっきりハッキリ見えます。
カメラ眼はどうしてできたのか?
ここも、遺伝子の突然変異で説明されていました。
ふつう、生殖細胞の遺伝子数は、体細胞の半分で、精子と卵子が結合してもとの数に戻ります。
しかし、たまたま体細胞と同じ遺伝子数をもつ精子と卵子が発生し、それが結合して奇跡的に生を受け成長すると・・・ここまででもあり得ない確率ですが・・・細胞数が2倍のスーパー個体が発生します。さらに長い歴史の中で、同じ奇跡がもう一度起こり、4倍体の遺伝子数を持つウルトラスーパー個体が発生した。
4倍数の遺伝子をもつと、複雑に進化することが可能となり、その一つがカメラ眼であると説明されました。
奇跡に次ぐ奇跡、ホントかなあ?
ただ、環境に適応して変化すると長らく考えられてきた“進化”のとらえ方が変わっていることに気づきました。
遺伝子変異は常に発生しており、ほとんどが淘汰されてしまいますが、ごくまれに環境に有利かつ生体に有利なモノが発生するとそれが選択的に残される、というカラクリです。
これは、抗菌薬に対する耐性菌の発生と似ています。
抗菌薬の使いすぎで耐性菌が発生すると考えがちですが、そう単純ではありません。
細菌でも遺伝子変異は常に発生しており、その中のあるモノが抗菌薬投与中にたまたま生き残ると「耐性菌」と呼ばれるモノになるだけです(やはり単純か)。
第2集 こうして"母の愛"が生まれた
今から2億5000年前、初期の哺乳類は卵を産んでいたそうです。
卵を細菌感染から守るため、母親はリゾチームという殺菌物質を含む汗のような体液を皮膚から分泌してそれを卵に塗って保護していました。
あるとき、偶然の遺伝子変異で「αラクトアルブミン」というタンパク質が作れるようになりました。これは少し甘い栄養分。実はリゾチームと立体構造が酷似しています。
すると生まれた子ども達は、リゾチームとαラクトアルブミンを含んだ母の汗を舐めるようになりました。
これが母乳の始まりです。
私が驚いたのは、「リゾチーム」と「αラクトアルブミン」。
これは現在の人間の母乳にも含まれる物質であり、とくにアレルギーの原因になるコンポーネントとしても有名です。こんなに長い歴史があったとは・・・。
それから、卵として産み落としていたシステムを、体内に取り込み胎盤を介して育てるシステムへ変換しました。
これは、敵に襲われたときに一緒に逃げやすい利点があります。
どのようにしてほ乳類は胎盤を手に入れたのか?
意外なことに、これはウイルスから入手しました。
別の働きをするレトロウイルス由来の遺伝子が、哺乳類の祖先に感染した際、生殖細胞に進入して代々受け継がれ、それが発効したときに胎盤を造ることになった、という夢のような話。
ウイルス感染が遺伝子を修飾して人類を進化させてきたことは有名です。
ミトコンドリアもウイルス由来と言われているし、人間の遺伝子の9割はウイルス遺伝子の残骸と呼んだこともあります。
進化は奇跡の積み重ねから造られてきたのですね。
第3集 ついに"知性"が生まれた
ここでもやはり、遺伝子の突然変異やトラブルが偶然(というか奇跡的に)人類の進化に貢献したらしい、とのこと。
ネアンデルタール人は、人類の祖先(ホモ・サピエンス)ではなく、絶滅した特殊な霊長類と説明されていました。
彼らはホモ・サピエンスより脳の重量が1割多かったことが骨の分析から判明しています。
つまり、ホモ・サピエンスよりも知能が発達していた可能性があるということ。
それから、体格ががっしりしていて、腕力はホモ・サピエンスの2倍!
しかし彼らは進化の歴史から消え去りました。
なぜネアンデルタール人は絶滅したのか?
いろんな分析を統合すると、彼らは言語を持たなかった可能性が推測されています。
そのため、進化から取り残されてしまった。
ネアンデルタール人と人類の祖先であるホモサピエンスは、言語に関する40万の遺伝子情報のうち1つだけ異なるそうです。
それが言葉の発達に影響を与え、片や絶滅し、片や進化の頂点に君臨することになった、というファンタジー。
この分野ではまだまだ未解明の事がたくさんあり、研究は現在進行中。
<内容紹介>
第1集 そして"目"が生まれた
40億年前の地球最初の生命から私たち人間まで、一度も途切れることなく繋がっている命の記録、DNA。その中には私たちの祖先に当たる古代生物たちの“痕跡”が残されている。信じがたい幸運や、想像を絶する大絶滅といった波乱万丈のドラマの末、進化の大躍進を成し遂げてきた“私たちの物語”とは?「生命大躍進」では、遙かな時を超えた壮大な進化のドラマを3回シリーズで描く。
第1集は「目の誕生」の物語。今からおよそ5億年前、それまで目を持たなかった祖先が、突如として精巧な目を持つようになった。いったいなぜ、急に目を持つように進化できたのか?私たちの「目の誕生」に秘められた驚きのドラマに迫る。
(放送を終えて)
「遺伝子は時に、異なる種の間を移動し、それをもらった生き物は突然、“パワーアップ”できる。動物の目はそうして生まれた器官の一つ」3年前、国内のあるDNA研究者からこの話を伺い、ビックリ仰天したことこそ、「生命大躍進」シリーズの誕生の瞬間でした。なぜなら普通、「進化は親から子へ世代交代する過程で起こる」と考えられているからです。
DNA研究が示す「種を越えた遺伝子の移動」という進化メカニズムは、従来の進化論を根底から覆すような話でした。「ひょっとして自分もカニを食べたら、カニの遺伝子が移ってカラができるかも。葉っぱを食べたらその遺伝子で光合成ができるかも・・・(人ではさすがに起きません)」などと妄想しながら、その日、興奮して帰路についたことを鮮明に思い出します。
この取材のおかげで「DNA研究を取材すれば、過去の化石研究を軸とした生命シリーズと違う、全く新しい生命進化の番組ができる!」と確信することができました。
第1集では、その話をしてくれたDNA研究者を徹底的に取材し、研究者の脳内だけにあった「目誕生の物語」のビジュアル化に挑みました。実はDNA研究では肝心の「遺伝子をもらって大躍進をした祖先の姿形が分からない」という難題がありましたが、そこは化石研究者の助言を受け、当時の祖先の姿を科学的に推定することで乗り越えました。
こうして、DNA研究者が思い描く、眼誕生の瞬間を描きました。また、難解なDNAの話をどうかみ砕いて伝えるか、という点にも苦労しました。議論の末、新垣結衣さんに「進化に詳しい姉」と「あまり興味のない“ふつうの”妹」の二役に扮して頂き、二人の軽やかな会話の中でDNAの本質を伝えていく、という演出にたどり着きました。
この番組では、時にCGで再現した古代の生物たちが、新垣さんや研究者たちがいる現代の世界へと飛び出します。遊び心にあふれたこのシリーズを通じ、人がいまここにいるようになった理由である「太古からの命の物語」に、子供から大人まで、家族みんなで思いをはせて頂ければ、担当者として幸いです。
第2集 こうして"母の愛"が生まれた
第2集は、我が子を思う「母の愛」の誕生に迫る。今からおよそ2億年前、卵を産んだらそれで終わりだった祖先たちが、突如として献身的な子育てを始めた。それが、人間ならではの深い母子愛にまでつながった裏側には、祖先のDNAに起きた大異変があった!
俳優の新垣結衣さんが、一人二役で姉妹を演じ、番組をナビゲート。
(放送を終えて)
「ヒトのDNAの一部はウイルスに由来している」――そんな信じがたい話を研究者から聞かされたのが1年前のこと。しかも、そのウイルス由来のDNAが、ほ乳類の進化にも大いに関係しているというのだから、ますます信じられません。
しかし、取材を進めていくと、過去のウイルス感染によって生物が進化していった証拠が、次々と見つかっていることがわかり、生物の教科書で学んだ進化論とは全く違う、SFのような新たな進化のイメージにとてもワクワクしたことを思い出します。
番組では、こうした新しい進化論の中から、お腹で赤ちゃんを育てるための臓器「胎盤」の誕生にウイルスが関わっているという最新トピックと、それが人間ならではの「愛情あふれる子育て」へと繋がった物語をご紹介しました。
想像に難くないことですが、ウイルス遺伝子が動物のDNAに入り込む時には、深刻な病気を引き起こすことがわかっています。多くの研究者に協力していただき、胎盤誕生の際に起きたであろう、ウイルス大流行の様子をリアルなCGで再現することに挑戦しました。私たちの祖先が絶滅寸前の危機を乗り越え、さらには侵入したウイルスの能力まで取り込んで進化してきた、その「たくましさ」を表現できるように、なんどもCGを練り直しています。
私自身は、そうした祖先たちの苦闘の積み重ねの上に、自分の命があると想像すると、なんだか前向きに生きる力が湧いてきます。
この3回のシリーズで紹介する、いくつもの奇跡的な進化の物語から、何かポジティブなメッセージを受け取っていただければと願っています。
第3集 ついに"知性"が生まれた
最終回の第3回は、私たちの“知性”の誕生の謎に迫る。悠久の生命史の中にあって、文明を持ちうるほど高い“知性”を持った生き物は、私たち人間・ホモサピエンスだけだ。
どのような進化の物語の末に、私たちはこの“知性”を獲得できたのだろうか?
最新のDNA研究は、その謎をとく『鍵』ともいえる太古の事件を見いだした。実は、祖先達はおもいもよらぬことで脳を巨大化し、知性を高度化させたのだった・・・その驚きのドラマとは。
最新研究成果に基づく超リアルCGで、その太古の事件の現場にタイムトラベル!ナビゲーターの新垣結衣さんと一緒に、私たち人間に至る最後の、そして最大の大躍進を目撃する。