一般市民にとって風疹とは、発疹の出る一過性の感染症ですが、
小児科医にとっては「先天性風疹症候群」を引き起こす恐い感染症です。
妊婦さんが風疹に罹ると、お腹の赤ちゃんに影響が出て病気を持って生まれてくるのです。
歴史上、それが繰り返されてきました。
風疹が流行した翌年、先天性風疹症候群の発生がニュースになり、
その度にガッカリします。
風疹はワクチンで予防できる感染症で、
その効果は90%以上!
…それなら簡単、と思いきや、そのワクチンを接種していない世代があります。
日本の予防接種行政の穴が原因です。
現在の中年男性の多くが、風疹ワクチンを受けていません。
そして中年男性が風疹に罹ると、
その奥さんが風疹をもらってしまい、
その奥さんが妊娠中であればお腹の赤ちゃんに病気が発生…
この悪循環を断ち切るために政府は、
「風疹キャッチアップ接種」
というシステムを設けました。
風疹ワクチンを接種する機会がなかった成人男性に、
ワクチンを打ちましょう、と呼びかけるキャンペーンです。
しかし成人男性は生産世代で社会活動の中心を担い、
平日病院へ行ってワクチン接種、という構図はハードルが高く、
やはり実績が出せていないのが現状です。
このキャッチアップ接種、正式には「風疹第5期」と設定されています。
昭和37年4月2日〜昭和54年4月1日生まれの男性が対象(現在、45歳〜62歳)
2024年度末までに大正世代の男性の抗体保有率を90%に引き上げる
ことを目標にしています。
対象者の男性で、まだ抗体検査・ワクチン接種が住んでいない方は、
こちらからお住まいの自治体の問い合わせ先を確認し、
未来の子どもたちのために行動を起こしましょう。
実は私自身、接種対象者世代の男性です。
30数年前、小児科医は医師として働く際に、
各ウイルス感染症の抗体価を測定し、
すると全部抗体価の上昇が確認できました。
つまり、風疹も感染既往があったということ。
はて、いつ罹ったんだろう…親に聞いても「?」でした。