小児アレルギー科医の視線

医療・医学関連本の感想やネット情報を書き留めました(本棚2)。

インフルエンザワクチンが乳幼児に効かない理由がわかりました。

2017年03月10日 07時11分40秒 | 予防接種
 予防接種のことを調べていたら、テーマのことを発見!
 もっと早く教えてよう、と云いたい。

 キーワードは「アジュバント」。
 この有無で、ワクチンの効果が左右されるというのです。
 そして現行のインフルエンザワクチン(HAワクチン、スプリットワクチン)はアジュバントがないので、初期免疫が得られず、つまりまだインフルエンザに罹ったことのない乳幼児には理論的に無効ということ(T_T)。
 すでに何回かインフルエンザに罹った年長児以降では、追加免疫効果(ブースター効果)を期待できますので、毎年接種してください。


(「次世代ワクチンの方向性」青枝 大貴,石井 健)


 上図は自然感染とワクチン接種により発生する獲得免疫の違いを示したものです。
 図中の「PAMPs, DAMPs」って何?




 う〜ん、わかったようなわからないような・・・。

 さて、下図は“インフルエンザワクチンが効かない理由”を解説したシェーマです。いろんな細胞や物質名がちりばめられていますね(T_T)。
 「インフルエンザ自然感染」「不活化全粒子ワクチン」「スプリットHAワクチン」が引き起こす免疫反応の流れを示し、現在日本で使用中のスプリットHAワクチンは初期免疫を誘導できないことを説明しています。
 「ワクチンで局所が腫れたり、熱が出たりするのは自然免疫にスイッチが入った証拠である」という文章を目にしたことがあります。
 インフルエンザワクチンはその昔全粒子ワクチンであった時代は、現在より局所の腫れや発熱が多かったと聞いています。それを少なくかつ軽くするために開発されたのがスプリットHAワクチンなのでした。
 結果的に、副反応の少なさを求める余り、効果が犠牲になってしまったのですね。
 
 でも、2009年の新型インフルエンザ(H1N1pdm2009)流行時には外国からアジュバント入りのインフルエンザワクチンが輸入された経緯があります。
 当然、副反応は日本で使用されているスプリットHAワクチンより強い(効果も強いのですが)。
 新型インフルエンザが予想より重症化しないことが判明したので、日本人は輸入ワクチンを使用せずに破棄しました。
 つまり、日本人は効かないワクチンを選んだのです。


(「インフルエンザワクチンの作用メカニズムを解明」大阪大学免疫学フロンティア研究センターより)


 ちなみに、ワクチンの種類と免疫持続期間をまとめた表を見つけましたので引用;



 これを理解するには免疫学の知識が必要です。
 というわけで、前項の免疫学入門書を読む羽目になったのでした。
 ほかにもわかりやすかった免疫学の基礎(NHK高校講座:生物基礎);
自然免疫」「適応免疫-1」「適応免疫-2

・・・高校生でもこれだけ知っているんだ、と焦ってしまう内容でした(^^;)。
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