小児アレルギー科医の視線

医療・医学関連本の感想やネット情報を書き留めました(本棚2)。

片頭痛の治療 by 勝木Dr.

2023年05月23日 22時03分04秒 | 予防接種
私は小児科医ですが、
時々頭痛の相談で受診する患者さんがいます。

基本はアセトアミノフェン(カロナール®、コカール®)頓服、
効きが悪いときはイブプロフェン(ブルフェン®)頓服、
それでも効きが悪いときは漢方薬(五苓散、呉茱萸湯)を併用しています。

また、このブログ内でもたびたび取り上げてきました;

①(2014.03.14)「子どもの頭痛~頭が痛いって本当だよ~」(藤田光江著)
②(2014.03.23)「小児の頭痛ー診かた・考え方の実践ー」(小児科診療 Vol.76 No.8, 2013)
③(2017.09.18)「片頭痛のポイント2017」
④(2018.05.03)「子どもの片頭痛にトリプタン製剤は使えるのか?」
⑤(2021.08.01)「子どもの片頭痛 アップデート2021」
⑥(2022.09.04)「子どもの頭痛

今回、WEBセミナーで偏頭痛に関する勝木将人Dr.のレクチャーを聴講したので、メモを残しておきます。

頭痛の社会的損失
・健康な生活に支障が出る疾病の順位(WHO)
 ①脳卒中
 ②頭痛
 ③認知症
・片頭痛の年間有病率は8.4%
・欠席/休息による損失(アブセンティーズム)よりも、
仕事や学業のパフォーマンス低下(プレゼンティーズム)の方が、
経済損失は重大

HIT-6(Headache impact test)
①頭が痛いとき、痛みがひどいことがどれくらいありますか?
②頭痛のせいで日常生活に支障が出ることがありますか?
③頭が痛いとき、横になりたくなることがありますか?
④この4週間に、頭痛のせいで疲れてしまって仕事やいつもの活動ができないことがありましたか?
⑤ごの4週間に、頭痛のせいでうんざりしたりイライラしたりしたことがありましたか?
⑥この4週間に、頭痛のせいで仕事や日常生活の場で集中できないことがありましたか?
 ⇩
  • HIT6スコア36~49点:ほとんどまたは、 全く日常生活に影響なし
  • HIT6スコア50~55点:中程度の影響
  • HIT6スコア56~59点:かなりの影響
  • HIT6スコア60~78点:重大な影響
ふつうの偏頭痛と慢性片頭痛
(ふつうの片頭痛)
・嘔気、光過敏、音過敏などの特徴あり
・痛み止めでコントロールできる
・予防治療が効く
 ⇩ 年間3%が移行
 ⇩ 7割は治療で元に戻る
(慢性片頭痛)
・嘔気、光過敏、音過敏などの特徴がなくなる
・痛み止めでコントロールができない(薬が効かない)
・診断:月に15日以上痛い、そのうち8日以上が片頭痛

頭痛治療の3本柱

1.急性期治療
(弱)
 ⇩ ①漢方薬(五苓散、呉茱萸湯、葛根湯など)
 ⇩ ②鎮痛薬(アセトアミノフェン、ロキソプロフェンなど)
 ⇩ ③トリプタン製剤 
(強)④Lasmiditan(レイボー®)

・効果不十分な場合はNSAIDsとトリプタンの併用を考慮。
・ERで重症者が来たら、
 嘔吐→ 補液+制吐剤
 アセリオ点滴
 スマトリプタン皮下注や点鼻(血管収縮に注意)
 レイボー内服
・急性期治療の効果は、服用2時間後の頭痛の消失または明らかな軽減で判断される。

2.予防治療
(弱)
 ⇩ 漢方薬(五苓散、呉茱萸湯、葛根湯など)
 ⇩ 降圧薬(ロメリジン、プロプラノロール)
 ⇩ 抗てんかん薬(バルプロ酸など)
 ⇩ 抗うつ薬(アミトリプチリンなど)
 ⇩ CGRP(※)関連製剤(注射薬。ガルカネズマブ、フレマネズマブ、エレヌマブ)
(強)
※ CGRP:カルシトニン遺伝子関連ペプチド

・予防治療を行うことで、
 ✓ 痛みの回数が減る
 ✓ 痛みの強さが減る
 ✓ 痛みの持続時間が減る

3.頭痛ダイアリー
・自分の頭痛の特性を知ることができる

頭痛ダイアリーの3ステップ

(ステップ1)頻度を知る
頭痛のあった日、ない日を記録して、
月に何回頭痛があるか、
月に何回痛み止めを使ったのかを把握しましょう

(ステップ2)症状を知る
頭痛の性状や頭痛に伴う症状を把握しましょう
強さ10段階の〇、嘔気、まぶしい、うるさい、動くとつらい、
ガンガンする、左側が痛い、持続時間は〇時間・・・など

(ステップ3)誘因を知る
頭痛を起こすきっかけを理解しましょう
ストレス、月経、食べ過ぎ/空腹、寝過ぎ/寝不足、天気、
疲れ・・・など

急性期治療薬の使い分けとタイミング

(誘因) 漢方薬
(予兆期)漢方薬
(前兆期)カロナール、痛み止め
(頭痛期)カロナール、痛み止め、しぶとい場合はレイボー
(寛解期)しぶとい場合はレイボー
(回復期)しぶとい場合はレイボー

★ 最適なトリプタンのタイミングは・・・
・痛くなり始め!(頭痛期初期)
・じっとしていても痛みがわかる
・体を動かしたり前屈みになると痛い

(誘因)月経、ストレス、睡眠、人混み、運動、食べ物、飲酒、ニオイ
(予兆期)過食、あくび、疲労感、集中困難、抑うつ、肩こり、感覚過敏
(前兆期)キラキラ、ピリピリ、耳鳴り
(頭痛期)吐き気、嘔吐、光音過敏、嗅覚過敏、体動困難
(寛解期)眠気
(回復期)食欲低下、疲労感、躁鬱

NSAIDsの使い方
・軽症-中等症片頭痛発作の第一選択薬
・妊婦にはアセトアミノフェン一択
・市販薬のような合剤はSG顆粒
・効果がなければトリプタンを追加(併用)

トリプタンの使い方
・中等症以上の片頭痛発作に用いる
・1/3が Non responder
・日本で使えるのは5種類
イミグラン®(スマトリプタン)のみ皮下注と点鼻薬がある
・禁忌:虚血性心疾患、脳血管障害の既往、片麻痺性・脳幹性片頭痛

各トリプタン製剤の特徴
 ・・・2時間空けて追加内服可能

イミグラン®(スマトリプタン)
・注射や点鼻が可能
・妊婦でも有用性投与可(最も無難)

ゾーミッグRM®(ゾルミトリプタン)
・口腔内速溶錠(水なしで飲める)

レルパックス®(エレトリプタン)
・効き目が長い

マクサルト®(リザトリプタン)
・口腔内速溶錠(水なしで飲める)
・立ち上がりが早く切れも良い

アマージ®(ナラトリプタン)
・効き目が長い

レイボー®(Lamiditan)
・セロトニン1F 受容体作動薬
・発作消失率が高い(頭痛がスパッとなくなる)
・めまい、脱力感が起きやすい
・めまいなどは2-4時間くらいで消える(らしい)
・100mgではなく50mgから処方(勝木Dr.私見)
・薬物乱用頭痛の離脱に用いる(断薬中の反跳痛を早めに抑えたい)
・寝るときになっても痛いとき(めまいが出ても睡眠中・・・)
・土日や欠勤時など仕事を休んでも良いとき(めまいが出ても問題ないとき)

漢方薬の選択方法と使い方
・片頭痛+冷え→ 呉茱萸湯
・片頭痛+天気やむくみ→ 五苓散
・緊張性頭痛、運動不足による頭痛→ 葛根湯
・高齢者の頭痛、高血圧の頭痛→ 釣藤散
・頭痛全般→ 川芎茶調散

<漢方薬の投与方法>
・急性期薬としても予防治療としても使える
・1日3回まで自己調節可
・1週間毎3回→ 2回→ 1回→ 頓服と減量を指示

予防治療はいつまで続ける必要があるか?
・効果判定には少なくとも2ヶ月を要する。
・予防治療の効果は、発作頻度または日数の50%以上の減少で判断する。
・有効性を確認した上で、有害事象がなければ少なくとも3ヶ月、妊よう性が良好であれば6〜12ヶ月は継続する。
・片頭痛のコントロールが良好になれば予防薬を緩徐に減量し、可能であれば中止する。

予防治療薬
・副作用が一石二鳥となるように選択したい。
 ✓ 高血圧→ ARB、降圧薬
 ✓ 振戦、緊張→ プロプラノロール
 ✓ 不眠、不安→ アミトリプチリン、バルプロ酸

プロプラノロール
・妊婦でもOK。
・立ちくらみ
・低血圧に注意
・リザトリプタン併用禁忌
・喘息など禁忌
・効き目も副作用もマイルド

ロメリジン
・立ちくらみ・低血圧に注意
・妊娠禁
・効き目も副作用もマイルド

バルプロ酸
・眠気に注意
・妊娠禁
・効き目は強いが副作用も強い

アミトリプチリン
・眠気と吐き気に注意
・慣れるまで制吐剤を併用
・効き目は強いが副作用も強い

CGRP関連製剤(予防治療薬)

エムガルティ
・最初2本ローディングドーズ
・即効性
・自己注射デバイスが使いやすい
・値段がネック

アジョビ
・1本/月でも3本/3ヶ月でもどちらもOK。
・通院負担の軽減
・副作用が比較的少ない印象
・注射は痛め

アイモビーグ
・受容体抗体
・完全ヒト型mAB
・便秘の副作用

妊娠希望や妊婦の治療
・基本はカロナールと五苓散、さらに塩酸プロプラノロールとイミグラン
△ 呉茱萸湯
△ レクサプロ
△ CGRP関連製剤

授乳中の治療
・基本はカロナールと五苓散、予防薬は使用不可能

いろいろな頭痛

緊張性頭痛
 → 鎮痛薬、筋弛緩薬、葛根湯、運動療法など

群発頭痛
・酸素投与+イミグラン皮下注射
・発作期のワソランやステロイド
・エムガルティ300mgが海外では使える
・脳神経内科など専門家へ

同じ人が複数の頭痛を持つこともある
・ある日は片頭痛、ある日は緊張性頭痛・・・
運動・入浴・飲酒で、
 悪化し嘔気あり→ 片頭痛
 改善し嘔気なし→ 緊張性頭痛


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