繰り返し取り上げてきた風疹対策。
しかし、厚労省が切り札として出した「中年男性への風しんワクチン無料接種」も現在のところ空振りに終わっているようです。
■ 風疹ワクチン接種1割、中高年男 無料でも利用低迷
(2019/10/2:共同通信)
風疹の拡大防止策として本年度から中高年の男性に配られている、無料で抗体検査やワクチン接種を受けられる受診券の利用が1割程度と低迷していることが2日、厚生労働省の調査で分かった。厚労省は積極的な活用を呼びかけている。
風疹は昨年2917人、今年2195人の患者が報告された。
40~57歳の男性に免疫を持っていない人が多いことが流行の原因と考えられるため、厚労省はこの年代の男性を対象に抗体検査とワクチン接種を3年間原則無料にすると決定。
しかし厚労省が調べた結果、今年7月までの4カ月間で抗体検査を受けたのは約16%、ワクチン接種を受けたのは約14%だった。
いろいろな要因が指摘されてきました。
まず、風疹に感染しても、本人は軽い症状で済んでしまい、麻疹のように患者本人の命を脅かす感染症ではありません。
しかし妊婦さんが感染すると、お腹にいる赤ちゃんに問題が発生する可能性があります。
つまり、自分のためではなく胎児のためという間接的なメリットなのです。
まあ、この点に関しては、繰り返し報道されてきましたから認識は広まっていると思います。
では、無料なのに検査・接種がなぜ進まないのでしょう?
■ 風疹接種、まず男性39~46歳 今春から無料に、厚労省
(2019/1/24:共同通信社)
厚生労働省は24日、風疹の新たな対策として始まる成人男性への定期接種について、まずは39~46歳を対象にすると明らかにした。今春以降、対象者には市町村から風疹の免疫の有無を調べる「抗体検査」の受診券が送付される。
風疹は昨年、2917人の患者が報告され、問題となっている。子供のころに定期接種の機会のなかった成人男性が患者の多くを占め、厚労省は昨年12月、39~56歳の男性を対象に3年間、抗体検査とワクチン接種を原則無料にすると決めた。
2019年度は、特に患者が多い1972年4月2日~79年4月1日生まれの人に絞って検査を促すことにした。
上記対象年齢の男性でも、以下の条件を満たす人は、風疹に罹るリスクが低いので対象になりません。
1.風疹ワクチン(あるいは風疹ワクチン含有ワクチン)を2回接種済み
2.風疹罹患の既往
ただし、記憶ではなく記録が必要です。
上記が定かでない人は、風疹ワクチン接種検討対象となります。
ここで、風疹ワクチン接種対象ではなく、風疹ワクチン接種検討対象となることがポイントです。
血液検査で風疹抗体価が十分に上がっていれば、免疫が十分あるとしてワクチン接種が免除されます。
なので、厚労省の施策は二段構えになっています。
それは、
① 抗体検査
② ワクチン接種
の二つ。
つまり、サラリーマンが昼間、仕事の時間を削って2回医療機関に足を運ぶ必要があります。
“無料検査&接種”としても、実施者が増えない原因がココにあると思います。
負担ばかりでメリットを感じられないから。
まあ、妻からは感謝されると思われますが、会社からはどうでしょう。
働くことが大好きな日本人とその社会は、“病気でもないのに仕事中に時間を割いて病院へ行く”ことに価値が見いだせるかどうか。
会社経営者に義務づけて未施行の場合は罰則を与えるくらいやらないと、現状は動かないのかもしれません。
対策としては、医療者が会社に出張して検査とワクチン接種を行うことが考えられますが、実施しているという情報は聞こえてきません。
■ “風疹”の警戒忘れないで 県内で相次ぐ感染者、県が対策強化
(2019/9/7:山形新聞)
県内で風疹の感染が8月下旬と9月上旬に相次いで確認され、感染経路が県内である可能性もあることから、今後の流行が懸念される事態となっている。妊娠中に感染すると、赤ちゃんに障害が出る恐れがあり警戒が必要だ。県は防衛策として、県内の全68病院や医師会などからの迅速な報告に加え、抗体検査やワクチン接種を促すなど、対策強化に乗り出している。
県は4日付で各病院や医師会などへ文書で通知し、風疹が疑われる患者を診察した場合は感染拡大を防ぐため、速やかに最寄りの保健所に連絡するよう求めた。感染が疑われる場合について、同室は「必ず事前に医療機関に連絡した上で、迅速に受診してほしい」と訴える。
風疹は十分な免疫を持たない妊娠初期の女性が感染すると、赤ちゃんに難聴や白内障、心疾患などの先天性風疹症候群を発症する恐れがある。妊娠初期の女性は予防接種が受けられず、感染予防としてなるべく人混みを避けることや、家族や職場など周囲の人が予防に努めるなどの気遣いも必要だ。
◇ 抗体検査して確認
風疹はワクチン接種で予防できる。母子手帳などの記録から接種の有無を確認できるが、接種歴がなかったり、接種したかどうか分からなかったりする場合は、抗体検査をして免疫が十分でなければワクチン接種が望ましい。
国は2019年度から3年計画で、予防ワクチンを受ける機会がなかった世代(1962年4月2日~79年4月1日生まれ)を対象に、無料の抗体検査とワクチン接種が受けられるクーポンを居住市町村を通じて送付している。県内では男性約11万5000人が対象で、初年度は4万9000人分に対応する。
自身の健康管理に加え、妊婦をサポートするためにも、県は「抗体検査や予防接種を確実に受けてほしい」と呼び掛けている。
小児科医としては、抗体検査などまどろっこしいことをしないで、いきなりワクチン接種でもよいのではないか?
と考えてしまいがちです。
しかしこの方法にも問題があります。
まず、それを実行すると確実にワクチンが足りなくなること。
現在でさえ、MRワクチン(麻疹・風疹わくちん)は数が足らず「出荷制限」中なのに・・・従来定期接種している乳幼児達の分がなくなることは明らかです。
それから、日本の法律では、ワクチンは定期接種という設定でもあくまでも推奨で、強制はできないこと。
というわけで、やはりサラリーマンがストレスなく検査・予防接種できる体制を整えるしかないと思います。
しかし、厚労省が切り札として出した「中年男性への風しんワクチン無料接種」も現在のところ空振りに終わっているようです。
■ 風疹ワクチン接種1割、中高年男 無料でも利用低迷
(2019/10/2:共同通信)
風疹の拡大防止策として本年度から中高年の男性に配られている、無料で抗体検査やワクチン接種を受けられる受診券の利用が1割程度と低迷していることが2日、厚生労働省の調査で分かった。厚労省は積極的な活用を呼びかけている。
風疹は昨年2917人、今年2195人の患者が報告された。
40~57歳の男性に免疫を持っていない人が多いことが流行の原因と考えられるため、厚労省はこの年代の男性を対象に抗体検査とワクチン接種を3年間原則無料にすると決定。
しかし厚労省が調べた結果、今年7月までの4カ月間で抗体検査を受けたのは約16%、ワクチン接種を受けたのは約14%だった。
いろいろな要因が指摘されてきました。
まず、風疹に感染しても、本人は軽い症状で済んでしまい、麻疹のように患者本人の命を脅かす感染症ではありません。
しかし妊婦さんが感染すると、お腹にいる赤ちゃんに問題が発生する可能性があります。
つまり、自分のためではなく胎児のためという間接的なメリットなのです。
まあ、この点に関しては、繰り返し報道されてきましたから認識は広まっていると思います。
では、無料なのに検査・接種がなぜ進まないのでしょう?
■ 風疹接種、まず男性39~46歳 今春から無料に、厚労省
(2019/1/24:共同通信社)
厚生労働省は24日、風疹の新たな対策として始まる成人男性への定期接種について、まずは39~46歳を対象にすると明らかにした。今春以降、対象者には市町村から風疹の免疫の有無を調べる「抗体検査」の受診券が送付される。
風疹は昨年、2917人の患者が報告され、問題となっている。子供のころに定期接種の機会のなかった成人男性が患者の多くを占め、厚労省は昨年12月、39~56歳の男性を対象に3年間、抗体検査とワクチン接種を原則無料にすると決めた。
2019年度は、特に患者が多い1972年4月2日~79年4月1日生まれの人に絞って検査を促すことにした。
上記対象年齢の男性でも、以下の条件を満たす人は、風疹に罹るリスクが低いので対象になりません。
1.風疹ワクチン(あるいは風疹ワクチン含有ワクチン)を2回接種済み
2.風疹罹患の既往
ただし、記憶ではなく記録が必要です。
上記が定かでない人は、風疹ワクチン接種検討対象となります。
ここで、風疹ワクチン接種対象ではなく、風疹ワクチン接種検討対象となることがポイントです。
血液検査で風疹抗体価が十分に上がっていれば、免疫が十分あるとしてワクチン接種が免除されます。
なので、厚労省の施策は二段構えになっています。
それは、
① 抗体検査
② ワクチン接種
の二つ。
つまり、サラリーマンが昼間、仕事の時間を削って2回医療機関に足を運ぶ必要があります。
“無料検査&接種”としても、実施者が増えない原因がココにあると思います。
負担ばかりでメリットを感じられないから。
まあ、妻からは感謝されると思われますが、会社からはどうでしょう。
働くことが大好きな日本人とその社会は、“病気でもないのに仕事中に時間を割いて病院へ行く”ことに価値が見いだせるかどうか。
会社経営者に義務づけて未施行の場合は罰則を与えるくらいやらないと、現状は動かないのかもしれません。
対策としては、医療者が会社に出張して検査とワクチン接種を行うことが考えられますが、実施しているという情報は聞こえてきません。
■ “風疹”の警戒忘れないで 県内で相次ぐ感染者、県が対策強化
(2019/9/7:山形新聞)
県内で風疹の感染が8月下旬と9月上旬に相次いで確認され、感染経路が県内である可能性もあることから、今後の流行が懸念される事態となっている。妊娠中に感染すると、赤ちゃんに障害が出る恐れがあり警戒が必要だ。県は防衛策として、県内の全68病院や医師会などからの迅速な報告に加え、抗体検査やワクチン接種を促すなど、対策強化に乗り出している。
県は4日付で各病院や医師会などへ文書で通知し、風疹が疑われる患者を診察した場合は感染拡大を防ぐため、速やかに最寄りの保健所に連絡するよう求めた。感染が疑われる場合について、同室は「必ず事前に医療機関に連絡した上で、迅速に受診してほしい」と訴える。
風疹は十分な免疫を持たない妊娠初期の女性が感染すると、赤ちゃんに難聴や白内障、心疾患などの先天性風疹症候群を発症する恐れがある。妊娠初期の女性は予防接種が受けられず、感染予防としてなるべく人混みを避けることや、家族や職場など周囲の人が予防に努めるなどの気遣いも必要だ。
◇ 抗体検査して確認
風疹はワクチン接種で予防できる。母子手帳などの記録から接種の有無を確認できるが、接種歴がなかったり、接種したかどうか分からなかったりする場合は、抗体検査をして免疫が十分でなければワクチン接種が望ましい。
国は2019年度から3年計画で、予防ワクチンを受ける機会がなかった世代(1962年4月2日~79年4月1日生まれ)を対象に、無料の抗体検査とワクチン接種が受けられるクーポンを居住市町村を通じて送付している。県内では男性約11万5000人が対象で、初年度は4万9000人分に対応する。
自身の健康管理に加え、妊婦をサポートするためにも、県は「抗体検査や予防接種を確実に受けてほしい」と呼び掛けている。
小児科医としては、抗体検査などまどろっこしいことをしないで、いきなりワクチン接種でもよいのではないか?
と考えてしまいがちです。
しかしこの方法にも問題があります。
まず、それを実行すると確実にワクチンが足りなくなること。
現在でさえ、MRワクチン(麻疹・風疹わくちん)は数が足らず「出荷制限」中なのに・・・従来定期接種している乳幼児達の分がなくなることは明らかです。
それから、日本の法律では、ワクチンは定期接種という設定でもあくまでも推奨で、強制はできないこと。
というわけで、やはりサラリーマンがストレスなく検査・予防接種できる体制を整えるしかないと思います。