小児アレルギー科医の視線

医療・医学関連本の感想やネット情報を書き留めました(本棚2)。

「小児アレルギー診療ブラッシュアップ」by 末廣豊

2010年12月23日 11時59分51秒 | 気管支喘息
診断と治療社、2010年発行
編集:末廣豊
分担執筆:亀崎佐織、住本真一、南部光彦

 これは医師向けの副読本です。学会会場の書籍販売コーナーで購入しました。
 編集者・著者ともにアレルギー学会では名の知れた御意見番。
 教科書には載っていない診療のコツ(漢方で云えば「口訣」)を若手医師に伝授する設定ですが、中堅の私にも手軽な知識のアップデートとして大変参考になりました。
 ただ、末廣先生のヘンに文学的な表現にはちょっと引きました(苦笑)。

「ほほう」と感心したところをメモ書きしておきます;

■ ステロイドを嫌がる患者さんは、医師の説明不足から不信感を抱いていることが多い。

・・・肝に銘じておきます。

■ 子どもの偉大なところは学んで変われる存在であると云うことを、大人は忘れてはならない。

・・・これは私も日々感じていることです。あんなにワガママだった子がお兄ちゃん・お姉ちゃん然として驚かされたり・・・「この子はこんな子」と決めつけるのはやめましょう。

■ 小児喘息の70%くらいは一旦喘息症状が出現しなくなるが、成人になって再発するものが小児喘息全体の20~30%前後は存在する。

■ 長引く咳の患者さんを診療する場合、喘息他様々な疾患の可能性があるが、「後鼻漏による咳」も忘れてはならない。このタイプは、長期化したり痰をしばしば吐くわりには元気で生活が障害されていない場合が多い。

■ アトピー性皮膚炎の原因として、以前はアレルギー性炎症、特に食物アレルギーによるものが注目されていたが、最近はむしろバリア機能の破綻がアトピー性皮膚炎の原因として注目を浴びている。
 きっかけは尋常性魚鱗癬という皮膚病の原因がフィラグリンという皮膚バリア機能を担う蛋白質の遺伝子異常であることの発見であった。アトピー性皮膚炎の患者の一部(20~30%)にも同様に遺伝子が見つかり、このことによりアトピー性皮膚炎の原因としてフィラグリン遺伝子異常に起因する皮膚バリア機構の破綻の関与が注目されるようになった。

■ 皮膚を洗うという作業には、清潔にすると云うよい面と、ドライスキンを助長するという負の面があることを意識することが大切である。

■ アトピー性皮膚炎は長期間、慢性的に経過する病気であり、「短期間に治す」より「上手につき合う」という感覚が大切である。

■ アレルギー・マーチは皮膚から始まることを裏付けるデータが集積しつつある。
 最初は皮膚でも消化管でも鼻粘膜でもいいのだが、未分化なCD4リンパ球が抗原特異的なTh2リンパ球に分化してリンパ節で待機していると、次は別の臓器でCD4が抗原特異的なリンパ球に分化してアレルギー症状を発現してくる、これらの現象をアレルギーマーチと呼んできたのではないかと考えられる。

・・・従来、アトピー性皮膚炎→喘息→アレルギー性鼻炎・花粉症と年齢が進むにつれて発症するアレルギーの病気に一定の順序がある現象を「アレルギー・マーチ」と呼んできました(命名は同愛記念病院の馬場実先生)。しかし、なぜこのような経過を辿るの誰も説明できませんでした。近年、アトピー性皮膚炎の皮膚バリア機構の破綻がそこからアレルゲンの侵入を許し、多彩なアレルゲンに反応するようになり(感作と云います)、吸入アレルゲンにも反応する喘息・アレルギー性鼻炎などの病気を誘導することがわかってきたのでした。

■ 食物アレルゲン感作は皮膚から起こる!
 ピーナッツアレルギーは、妊娠中や授乳中に母親が摂取したピーナッツ量よりも、他の家族の摂取量と有意に関係があるとFoxらが報告した(2009年)。母親がいくらピーナッツを摂取しても、他の家族が摂取しなければピーナッツアレルギーは起こりにくいのである。


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