現在、インフルエンザが流行中です。
2024/25の年末年始よりは減りましたが、
2月に入り、また近隣の小中学校の学級閉鎖が散発しています。
インフルエンザとコロナが両方わかる検査キットを使うと、
時々コロナ陽性者に出会います。
しかし振り返ってみても、症状や診察所見に大きな差はなく、
検査無しではインフルエンザなのか、コロナなのか、他の風邪なのか、
残念ながら判断できないのが現実です。
実際に診療をしている小児科医として、
小児に関しては、どちらが重症化しやすいかという差は感じられません。
発症時の高熱のつらさはインフルエンザの方が強いかな、くらいです。
今まで何度も比較されてきたであろうコロナとインフルエンザ、
多くの文献をまとめて比較検討した論文記事が目に留まりましたので紹介します。
一読すると、明らかに「重症度はコロナ>インフルエンザ」であることがわかります。
「コロナはふつうの風邪」と軽く見るのはまだまだ早いようですね。
▢ コロナとインフル、臨床的特徴の違い~100論文のメタ解析
(2025/02/06:ケアネット)より一部抜粋(下線は私が引きました);
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)とインフルエンザの鑑別診断の指針とすべく、中国・China-Japan Union Hospital of Jilin UniversityのYingying Han氏らがそれぞれの臨床的特徴をメタ解析で検討した。その結果、患者背景、症状、検査所見、併存疾患にいくつかの相違がみられた。さらにCOVID-19患者ではより多くの医療資源を必要とし、臨床転帰も悪い患者が多いことが示された。NPJ Primary Care Respiratory Medicine誌2025年1月28日号に掲載。
著者らは、PubMed、Embase、Web of Scienceで論文検索し、Stata 14.0でランダム効果モデルを用いてメタ解析を行った。COVID-19患者22万6,913例とインフルエンザ患者20万1,617例を含む100の論文が対象となった。主な結果は以下のとおり。
・COVID-19はインフルエンザと比較して、
著者らは、PubMed、Embase、Web of Scienceで論文検索し、Stata 14.0でランダム効果モデルを用いてメタ解析を行った。COVID-19患者22万6,913例とインフルエンザ患者20万1,617例を含む100の論文が対象となった。主な結果は以下のとおり。
・COVID-19はインフルエンザと比較して、
男性に多い(オッズ比[OR]:1.46、95%信頼区間[CI]:1.23~1.74)
肥満度が高い人に多い(平均差[MD]:1.43、95%CI:1.09~1.77)
・COVID-19患者はインフルエンザ患者と比べて、
・COVID-19患者はインフルエンザ患者と比べて、
現在喫煙者の割合が低い(OR:0.25、95%CI:0.18~0.33)。
・COVID-19患者はインフルエンザ患者と比べて、
・COVID-19患者はインフルエンザ患者と比べて、
入院期間(MD:3.20、95%CI:2.58~3.82)が長い
ICU入院(MD:3.10、95%CI:1.44~4.76)が長い
人工呼吸を必要とする頻度が高い(OR:2.30、95%CI:1.77~3.00)
死亡率が高い(OR:2.22、95%CI:1.93~2.55)
・インフルエンザ患者はCOVID-19患者より、
・インフルエンザ患者はCOVID-19患者より、
上気道症状がより顕著
併存疾患の割合が高い
<原著論文>
もう一つ、同じような検討をした論文が4年前に発表されていました。
それを扱った記事も紹介します。
一読すると、やはり4年前でも「重症度はコロナ>インフルエンザ」でした。
▢ 新型コロナとインフル、死亡率・症状の違いは?/BMJ
(2020/12/28:ケアネット)より一部抜粋(下線は私が引きました);
季節性インフルエンザ入院患者と比較して、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者は、
・肺外臓器障害・死亡リスクの上昇(死亡リスクは約5倍)
・医療資源使用(人工呼吸器装着、ICU入室、入院期間など)の増加
ーと関連していることが、米国・VAセントルイス・ヘルスケアシステムのYan Xie氏らによるコホート研究で明らかとなった。研究グループは、先行研究での季節性インフルエンザとCOVID-19の臨床症状や死亡率の比較は、それぞれ異なるデータおよび統計的手法を用いて行われ、「リンゴとリンゴ」での比較ではなかったとして、米国退役軍人省の入院データを用いて評価を行ったという。
結果を踏まえて著者は、「本調査結果は、COVID-19と季節性インフルエンザの比較リスクに関する世界的な議論への情報提供になるとともに、COVID-19パンデミックへの継続的な対策に役立つ可能性があるだろう」と述べている。BMJ誌2020年12月15日号掲載の報告。
▶ 米国退役軍人の医療データを用いて違いを検証
▶ 米国退役軍人の医療データを用いて違いを検証
研究グループは、米国退役軍人省の電子医療データベース(1,255のヘルスケア組織[170の医療センター、1,074の外来クリニックなど]を含む)を用いて、コホート研究を行った。
2020年2月1日~6月17日にCOVID-19で入院した患者(3,641例)と、2017~19年に季節性インフルエンザで入院した患者(1万2,676例)に関するデータを用いて、両者の臨床症状と死亡のリスクの違いを比較した。
主要評価項目は、臨床症状、医療資源の使用(人工呼吸器装着、ICU入室、入院期間)、死亡のリスクで、doubly robust法を用いて傾向スコアを構築し、また、共変量を用いてアウトカムモデルを補正して評価を行った。
▶ 死亡率の違いは、CKDまたは認知症の75歳以上、黒人の肥満、糖尿病、CKDで顕著
季節性インフルエンザ入院患者と比較してCOVID-19入院患者は、
・急性腎障害(オッズ比[OR]:1.52、95%信頼区間[CI]:1.37~1.69)
・腎代替療法(4.11、3.13~5.40)
・インスリン使用(1.86、1.62~2.14)
・重度の敗血症性ショック(4.04、3.38~4.83)
・昇圧薬使用(3.95、3.46~4.51)
・肺塞栓症(1.50、1.18~1.90)
・深部静脈血栓症(1.50、1.20~1.88)
・脳卒中(1.62、1.17~2.24)
・急性心筋炎(7.82、3.53~17.36)
・不整脈および心突然死(1.76、1.40~2.20)
・トロポニン値上昇(1.75、1.50~2.05)
・アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)値上昇(3.16、2.91~3.43)
・アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)値上昇(2.65、2.43~2.88)
・横紋筋融解症(1.84、1.54~2.18)
ーのリスクが高かった。
季節性インフルエンザ入院患者と比較してCOVID-19入院患者は、
・死亡(ハザード比[HR]:4.97、95%CI:4.42~5.58)
・人工呼吸器の使用(4.01、3.53~4.54)
・ICU入室(2.41、2.25~2.59)
・入院日数の増加(3.00、2.20~3.80)
ーのリスクも高かった。
COVID-19入院患者と季節性インフルエンザ入院患者100人当たりの死亡率の違いは、慢性腎臓病または認知症の75歳以上の高齢者と、黒人種の肥満、糖尿病または慢性腎臓病で最も顕著だった。
<原著論文>