「はああああああぁあっ!」
全身を雷電が駆けめぐり、一瞬後、部屋全体を真っ白に漂白する燭光が麗夢の身体から放たれた。同時にトレードマークのピンクの上着と赤のミニスカートが内側から弾け飛ぶ。際どいカットのビキニスタイルに肩と膝を覆う赤いプロテクターが硬質な光を反射し、突き上げた掌からまっすぐ伸びた剣が、あらゆる夢魔を浄化する聖なる光を力強く宿して輝いた。遂に夢の戦士へと変化した麗夢は、眦決して死夢羅を睨み付けた。
「絶対に死神の思い通りになんかさせないわ! いくわよ、みんな!」
「はいっ!」
「了解!」
「オゥ!」
麗夢は駆け出しながら、喜色満面な円光と鬼童に叫んだ。
「お願い! 二人は警部と協力して、鳩を何とかして!」
「心得た!」
「わ、判りました!」
円光と鬼童が死夢羅を避けて上階へのルートを探しに駆けだした。アルファ、ベータがその援護に走る中、麗夢達四人のドリームガーディアンは、勢い込んで夢魔の大群目がけ突進した。
美奈が、往年の名人も及ばぬ程の早技で次々と矢を放った。矢は光芒を引きながら誤ることなくまっすぐ夢魔の肉体へと吸い込まれ、風船を割るように次々と奇怪な肉体を破裂させる。一瞬遅れて、上段に槍を構えた蘭が一群の夢魔に突っ込んだ。たちまち数体の夢魔が槍先に上げられ、更に石突を突き落とされて床に砕ける。隣ではハンスのレイピアが一匹の夢魔も逃すまいと縦横に振るわれ、挑みかかってくる異形の化け物が、次々と切り裂かれては消えていった。円光と鬼童を無事送り届けたアルファ、ベータも、一段と勢いづいて夢魔の大群にかぶりついた。麗夢は三人の思いもよらぬ奮戦振りに舌を巻きながら、自ら剣を振るって夢魔達に飛びかかる。こうして一方的な戦闘は、開始からものの数分の内に夢魔の大軍を押し返し、残った夢魔達は、雪崩を打って死夢羅の周囲に寄り固まった。
「ええい! 不甲斐ない奴らめ!」
死夢羅は鎌を一振りして縋りつく夢魔達を蹴散らし、一番手近にいた蘭目がけて襲いかかった。はっと固まった蘭の頭上に、巨大な闇が打ち広がる。マントを翻した死神の鎌が、その闇に一瞬の光をはじいて、命を刈るべく振り落とされた。
「蘭さん(サン)危ない(ナイ)!」
異方向から同時に飛んだ悲鳴に載って、一本の矢と数匹のコウモリが、宙を舞う死夢羅を襲った。死夢羅は危うく身をひねって美奈の矢を避けると、小うるさいコウモリを払いのけ、蘭への攻撃を中止して一旦引き退いた。
「ありがとう! 美奈ちゃん! ハンス!」
美奈がうれしそうに笑顔を見せ、ハンスがウインクしながら親指を立てる。
「今よ! そっちから突っ込んで!」
「OK! 麗夢ちゃん!」
「おのれ! 小賢しい真似を!」
死夢羅は左右から同時に槍と剣を打ち込まれて、防戦一方で後じさった。そこへまたハンスの操るコウモリが突っかかり、隙を突いて美奈の矢が唸りを上げて飛んでくる。頼みの夢魔達もハンスと美奈に討ち減らされ、アルファ、ベータに平らげられつつあった。死夢羅は突然の形勢逆転に耐えかね、遂に怒りを爆発させた。
「いい加減にせんか!」
死夢羅から倍する瘴気が噴出し、力を得た鎌が、麗夢と蘭を薙ぎ払った。短い悲鳴を上げて二人が尻餅をつき、コウモリと矢が時ならぬ突風に煽られて吹き飛ばされる。
死夢羅は肩で息をしながら、麗夢達に吠えた。
「高原の研究で力を得たのはうぬらだけではないわ! 見るがいい、我が闇の力を!」
死夢羅から吹き出した瘴気がその頭上で渦を成し、その中心がぽっかりと暗黒の穴となって開いた。途端に凄まじい吸引力が穴に生じ、瓦礫も夢魔達の残党も一緒くたにして巻き上げ、吸い込み始めた。死夢羅の頭上に出現した超小型のブラックホールが、フロアの全てを無に返すべく、闇の力を開放したのである。
「この!」
美奈がありったけの念を込めて矢を放った。が、光を放ちつつ一直線に飛んだ矢も、途中で強引に軌道を曲げられ、暗黒の闇に消化されていった。光すら呑み込んで消滅させてしまう強烈な闇の重力の嵐は、死夢羅の思いのままにその指し示す先々を吸い上げ、粉砕し、完全なる無へとそのエネルギー全てを呑み込んで消滅させてしまうのだ。
「ふはははは! 思い知ったか! 所詮光の力などそんなものだ。この偉大なる闇の前に、ひれ伏し、泣きわめき、許しを請いながら消えていくがいい!」
アルファ、ベータが頭を低くし、必死に四つ足を踏ん張りながら、麗夢と蘭が飛ばされないようにおさえ付ける。床に食い込む足の爪が、不気味に唸りながらじりじりと数本の筋を刻み、死夢羅の方へと引かれていく。一瞬でも気を抜けば、たちまち麗夢や蘭ごと、あのブラックホールへと吸い込まれてしまうに違いない。美奈も今はただ床にはいつくばり、少しでも暴風を避けるだけで必死だった。ハンスも辛うじて残る柱にしがみつき、黒マントをはためかせながら、必死に抵抗している
死夢羅は辺りをねめ回し、自分と同じ姿をした金髪の美青年に目を付けた。吸引力のベクトルをその青年に収束し、強引にその手を引き剥がした。
全身を雷電が駆けめぐり、一瞬後、部屋全体を真っ白に漂白する燭光が麗夢の身体から放たれた。同時にトレードマークのピンクの上着と赤のミニスカートが内側から弾け飛ぶ。際どいカットのビキニスタイルに肩と膝を覆う赤いプロテクターが硬質な光を反射し、突き上げた掌からまっすぐ伸びた剣が、あらゆる夢魔を浄化する聖なる光を力強く宿して輝いた。遂に夢の戦士へと変化した麗夢は、眦決して死夢羅を睨み付けた。
「絶対に死神の思い通りになんかさせないわ! いくわよ、みんな!」
「はいっ!」
「了解!」
「オゥ!」
麗夢は駆け出しながら、喜色満面な円光と鬼童に叫んだ。
「お願い! 二人は警部と協力して、鳩を何とかして!」
「心得た!」
「わ、判りました!」
円光と鬼童が死夢羅を避けて上階へのルートを探しに駆けだした。アルファ、ベータがその援護に走る中、麗夢達四人のドリームガーディアンは、勢い込んで夢魔の大群目がけ突進した。
美奈が、往年の名人も及ばぬ程の早技で次々と矢を放った。矢は光芒を引きながら誤ることなくまっすぐ夢魔の肉体へと吸い込まれ、風船を割るように次々と奇怪な肉体を破裂させる。一瞬遅れて、上段に槍を構えた蘭が一群の夢魔に突っ込んだ。たちまち数体の夢魔が槍先に上げられ、更に石突を突き落とされて床に砕ける。隣ではハンスのレイピアが一匹の夢魔も逃すまいと縦横に振るわれ、挑みかかってくる異形の化け物が、次々と切り裂かれては消えていった。円光と鬼童を無事送り届けたアルファ、ベータも、一段と勢いづいて夢魔の大群にかぶりついた。麗夢は三人の思いもよらぬ奮戦振りに舌を巻きながら、自ら剣を振るって夢魔達に飛びかかる。こうして一方的な戦闘は、開始からものの数分の内に夢魔の大軍を押し返し、残った夢魔達は、雪崩を打って死夢羅の周囲に寄り固まった。
「ええい! 不甲斐ない奴らめ!」
死夢羅は鎌を一振りして縋りつく夢魔達を蹴散らし、一番手近にいた蘭目がけて襲いかかった。はっと固まった蘭の頭上に、巨大な闇が打ち広がる。マントを翻した死神の鎌が、その闇に一瞬の光をはじいて、命を刈るべく振り落とされた。
「蘭さん(サン)危ない(ナイ)!」
異方向から同時に飛んだ悲鳴に載って、一本の矢と数匹のコウモリが、宙を舞う死夢羅を襲った。死夢羅は危うく身をひねって美奈の矢を避けると、小うるさいコウモリを払いのけ、蘭への攻撃を中止して一旦引き退いた。
「ありがとう! 美奈ちゃん! ハンス!」
美奈がうれしそうに笑顔を見せ、ハンスがウインクしながら親指を立てる。
「今よ! そっちから突っ込んで!」
「OK! 麗夢ちゃん!」
「おのれ! 小賢しい真似を!」
死夢羅は左右から同時に槍と剣を打ち込まれて、防戦一方で後じさった。そこへまたハンスの操るコウモリが突っかかり、隙を突いて美奈の矢が唸りを上げて飛んでくる。頼みの夢魔達もハンスと美奈に討ち減らされ、アルファ、ベータに平らげられつつあった。死夢羅は突然の形勢逆転に耐えかね、遂に怒りを爆発させた。
「いい加減にせんか!」
死夢羅から倍する瘴気が噴出し、力を得た鎌が、麗夢と蘭を薙ぎ払った。短い悲鳴を上げて二人が尻餅をつき、コウモリと矢が時ならぬ突風に煽られて吹き飛ばされる。
死夢羅は肩で息をしながら、麗夢達に吠えた。
「高原の研究で力を得たのはうぬらだけではないわ! 見るがいい、我が闇の力を!」
死夢羅から吹き出した瘴気がその頭上で渦を成し、その中心がぽっかりと暗黒の穴となって開いた。途端に凄まじい吸引力が穴に生じ、瓦礫も夢魔達の残党も一緒くたにして巻き上げ、吸い込み始めた。死夢羅の頭上に出現した超小型のブラックホールが、フロアの全てを無に返すべく、闇の力を開放したのである。
「この!」
美奈がありったけの念を込めて矢を放った。が、光を放ちつつ一直線に飛んだ矢も、途中で強引に軌道を曲げられ、暗黒の闇に消化されていった。光すら呑み込んで消滅させてしまう強烈な闇の重力の嵐は、死夢羅の思いのままにその指し示す先々を吸い上げ、粉砕し、完全なる無へとそのエネルギー全てを呑み込んで消滅させてしまうのだ。
「ふはははは! 思い知ったか! 所詮光の力などそんなものだ。この偉大なる闇の前に、ひれ伏し、泣きわめき、許しを請いながら消えていくがいい!」
アルファ、ベータが頭を低くし、必死に四つ足を踏ん張りながら、麗夢と蘭が飛ばされないようにおさえ付ける。床に食い込む足の爪が、不気味に唸りながらじりじりと数本の筋を刻み、死夢羅の方へと引かれていく。一瞬でも気を抜けば、たちまち麗夢や蘭ごと、あのブラックホールへと吸い込まれてしまうに違いない。美奈も今はただ床にはいつくばり、少しでも暴風を避けるだけで必死だった。ハンスも辛うじて残る柱にしがみつき、黒マントをはためかせながら、必死に抵抗している
死夢羅は辺りをねめ回し、自分と同じ姿をした金髪の美青年に目を付けた。吸引力のベクトルをその青年に収束し、強引にその手を引き剥がした。