白夜のアラスカでの殺人事件。
刑事ウィル(アル・パチーノ)と犯人フィンチ(ロビン・ウィリアムス)の葛藤が素晴らしい。
事件の概要はこうだ。
ケイという17歳の少女が撲殺される。
犯人は冷静で、ケイの身体をきれいに洗い自分の痕跡をすべて消していた。
ロスからやって来たウィルと相棒のハックは事件の捜査に乗り出し、破られた写真などから被害者ケイの交友関係、事件当夜の動きが明らかになる。
ケイは恋人のランディを親友のタニアに寝取られた。
それを責めてランディに殴られた。
容疑者としてランディが挙げられる。
だが、事件はここで複雑になって来る。
犯人を捕まえるおとり調査の最中に誤って、相棒のハックを銃で殺してしまうのだ。
濃霧の中の出来事だった。
ウィルはちょうど警察内の内務調査で過去の捜査が適切であったかどうかが問われている時期であった。ハックへの発砲が犯人追跡中のミスだったとしても、ウィルにはマイナス材料だ。
ウィルは偽装をする。
その偽装は、落ちていた犯人ものと思われる銃をウィルが偶然拾い上げたことで可能になった。
ウィルの行った偽装はこうだ。
・犯人の残した銃(38口径)を肉に発射して、弾丸を回収する。
・検死官からハックの身体に入った弾丸を受け取ると、肉から回収した38口径の弾丸とすり替える。
これでハックは犯人の銃で撃たれて殺されたことになる。
・ウィルは被害者のバッグの中に入っていた推理小説から犯人が推理作家のフィンチであることに気づく。
・フィンチの家に忍び込み、38口径の銃を暖房の通気口の中に隠す。
これで銃が発見されれば、ハックを殺したのはフィンチになる。
少女ケイを殺したのはフィンチなのだから、ハックを殺しも被ってもらおうというわけだ。
しかし、犯人のフィンチもしたたかだった。
フィンチは霧の中でハックを殺したウィルの姿を見ていたのだ。
ウィルを呼び出し、取り引きを持ちかける。
「ケイ殺しの犯人を恋人のランディに仕立て上げよう。そうしてくれれば、おまえがハックを撃ったことを言わないでおいてやる」
既に偽装を完了していたウィルは断る。
この先、このことでフィンチに強請られるかもしれないからだ。フィンチに犯人になってもらった方がいい。
しかし、フィンチもワイルドカードを用意していた。
このふたりの会話を録画していたのだ。
おまけにフィンチは38口径の銃を通気口に隠したことにも気づいていて、既にランディの部屋に隠していた。
警察はランディの家の家宅捜索をし、30口径の銃を発見する。
これでウィルにもフィンチにも疑惑は及ばない。
しかし、ウィルは苦悩する。
実は彼は過去にも同じ様な偽装を行っていたのだ。
ある犯人を挙げるため、ウィルは証拠をでっち上げた。
被害者の血を抜き、犯人の家に忍び込むと、衣服に血を付けたのだ。
本当の犯人でないランディを自分の保身のために陥れていいのかとも思う。
真実を苦悩するウィルにフィンチは言う。
「目的は手段を正当化する。おまえの偽装がばれたら、過去の事件捜査のことも内務調査で調べられる。それで刑務所から釈放される悪党が出て来るじゃないのか?」
「このままもとの生活に戻って、クズ共を豚箱に入れろ」
「ハックを殺したのは故意じゃない。事故だ。俺もケイを殺したのは事故だった。あいつは俺を笑って、俺はケイを殴った。殴ったらあいつが倒れて死んだんだ」
ウィルは苦悩する。
そして、フィンチが偶然ケイを殺したのではなく、快楽を求める殺人鬼であることに気づいた時、フィンチ逮捕に向かって戦い始める。
状況が二転三転する見事なシナリオだ。
★研究ポイント
頭の切れる刑事と犯人の息詰まる駆け引きが面白い。
彼らが考えて行ったことにより状況がくるくる変わる。
ある時はウィルが有利になり、ある時はフィンチが有利になるのだ。
白夜と不眠症に陥った刑事ウィルの描写も見事だ。
彼は心の葛藤があるが故に眠ることが出来ない。
葛藤の第一は、ミスであれハックを殺してしまったことで、内務調査が自分に振りになってしまうこと。
ウィルは警察官僚を憎んでいる。
彼は言う
「(官僚は)安全な机の上で報告書を読んでいるだけ。現場の本物の警官を酷使してその恩恵にあずかっているだけ」
そんな警察官僚に悪を憎み戦ってきた自分が糾弾されるのが嫌なのだ。
葛藤の第2は、無実のランディをそのままにしていいのかという葛藤。
葛藤が発展して二段階になっているのも面白い。
実によく出来たシナリオだ。
★追記
地元の女刑事はハックに発射された弾丸の方向が違うことに気がついてウィルを疑う。そしてラスト、推理作家のフィンチが銃撃で殺された後にウィルに言う。
「フィンチが死んであなたがハックを殺したことを知っている人間は誰もいない。このことは黙っていましょう」
しかし、ウィルは言う。
「道を誤るな」
自分の罪を受け入れて、不眠症のウィルは穏やかに眠ることが出来た。
刑事ウィル(アル・パチーノ)と犯人フィンチ(ロビン・ウィリアムス)の葛藤が素晴らしい。
事件の概要はこうだ。
ケイという17歳の少女が撲殺される。
犯人は冷静で、ケイの身体をきれいに洗い自分の痕跡をすべて消していた。
ロスからやって来たウィルと相棒のハックは事件の捜査に乗り出し、破られた写真などから被害者ケイの交友関係、事件当夜の動きが明らかになる。
ケイは恋人のランディを親友のタニアに寝取られた。
それを責めてランディに殴られた。
容疑者としてランディが挙げられる。
だが、事件はここで複雑になって来る。
犯人を捕まえるおとり調査の最中に誤って、相棒のハックを銃で殺してしまうのだ。
濃霧の中の出来事だった。
ウィルはちょうど警察内の内務調査で過去の捜査が適切であったかどうかが問われている時期であった。ハックへの発砲が犯人追跡中のミスだったとしても、ウィルにはマイナス材料だ。
ウィルは偽装をする。
その偽装は、落ちていた犯人ものと思われる銃をウィルが偶然拾い上げたことで可能になった。
ウィルの行った偽装はこうだ。
・犯人の残した銃(38口径)を肉に発射して、弾丸を回収する。
・検死官からハックの身体に入った弾丸を受け取ると、肉から回収した38口径の弾丸とすり替える。
これでハックは犯人の銃で撃たれて殺されたことになる。
・ウィルは被害者のバッグの中に入っていた推理小説から犯人が推理作家のフィンチであることに気づく。
・フィンチの家に忍び込み、38口径の銃を暖房の通気口の中に隠す。
これで銃が発見されれば、ハックを殺したのはフィンチになる。
少女ケイを殺したのはフィンチなのだから、ハックを殺しも被ってもらおうというわけだ。
しかし、犯人のフィンチもしたたかだった。
フィンチは霧の中でハックを殺したウィルの姿を見ていたのだ。
ウィルを呼び出し、取り引きを持ちかける。
「ケイ殺しの犯人を恋人のランディに仕立て上げよう。そうしてくれれば、おまえがハックを撃ったことを言わないでおいてやる」
既に偽装を完了していたウィルは断る。
この先、このことでフィンチに強請られるかもしれないからだ。フィンチに犯人になってもらった方がいい。
しかし、フィンチもワイルドカードを用意していた。
このふたりの会話を録画していたのだ。
おまけにフィンチは38口径の銃を通気口に隠したことにも気づいていて、既にランディの部屋に隠していた。
警察はランディの家の家宅捜索をし、30口径の銃を発見する。
これでウィルにもフィンチにも疑惑は及ばない。
しかし、ウィルは苦悩する。
実は彼は過去にも同じ様な偽装を行っていたのだ。
ある犯人を挙げるため、ウィルは証拠をでっち上げた。
被害者の血を抜き、犯人の家に忍び込むと、衣服に血を付けたのだ。
本当の犯人でないランディを自分の保身のために陥れていいのかとも思う。
真実を苦悩するウィルにフィンチは言う。
「目的は手段を正当化する。おまえの偽装がばれたら、過去の事件捜査のことも内務調査で調べられる。それで刑務所から釈放される悪党が出て来るじゃないのか?」
「このままもとの生活に戻って、クズ共を豚箱に入れろ」
「ハックを殺したのは故意じゃない。事故だ。俺もケイを殺したのは事故だった。あいつは俺を笑って、俺はケイを殴った。殴ったらあいつが倒れて死んだんだ」
ウィルは苦悩する。
そして、フィンチが偶然ケイを殺したのではなく、快楽を求める殺人鬼であることに気づいた時、フィンチ逮捕に向かって戦い始める。
状況が二転三転する見事なシナリオだ。
★研究ポイント
頭の切れる刑事と犯人の息詰まる駆け引きが面白い。
彼らが考えて行ったことにより状況がくるくる変わる。
ある時はウィルが有利になり、ある時はフィンチが有利になるのだ。
白夜と不眠症に陥った刑事ウィルの描写も見事だ。
彼は心の葛藤があるが故に眠ることが出来ない。
葛藤の第一は、ミスであれハックを殺してしまったことで、内務調査が自分に振りになってしまうこと。
ウィルは警察官僚を憎んでいる。
彼は言う
「(官僚は)安全な机の上で報告書を読んでいるだけ。現場の本物の警官を酷使してその恩恵にあずかっているだけ」
そんな警察官僚に悪を憎み戦ってきた自分が糾弾されるのが嫌なのだ。
葛藤の第2は、無実のランディをそのままにしていいのかという葛藤。
葛藤が発展して二段階になっているのも面白い。
実によく出来たシナリオだ。
★追記
地元の女刑事はハックに発射された弾丸の方向が違うことに気がついてウィルを疑う。そしてラスト、推理作家のフィンチが銃撃で殺された後にウィルに言う。
「フィンチが死んであなたがハックを殺したことを知っている人間は誰もいない。このことは黙っていましょう」
しかし、ウィルは言う。
「道を誤るな」
自分の罪を受け入れて、不眠症のウィルは穏やかに眠ることが出来た。