平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

三毛猫ホームズの推理

2007年12月05日 | 小説
 「三毛猫ホームズの推理」(赤川次郎・著)

 赤川次郎さんの小説って表現がシンプルだから気軽に読めてしまうが、分析して読んでみると内容は盛りだくさん。

 例えばこの作品で起こる事件。
 羽衣女子大学の文学部長が殺害された事件と売春に絡む連続殺人鬼のふたつある。
 ここでは明かさないがトリックもふたつ。
 動機も盛りだくさんだ。
 新校舎建設をめぐる汚職、財産、売春組織の隠蔽、出世、愛のもつれ、バカにされた。
 それに伴って登場人物も多い。
 女子大生の雪子、文学部長の森崎、英文学の大中、体育の富田、寮の管理人の小峰、工事主任の今井、化学の秋吉……。
 主人公の片山の側にも、先輩刑事の林、上司の三田村、妹の晴海、見合いを勧める叔母……。

 これら盛りだくさんの内容が盛り込まれていても、ストレスなく読ませてしまうのはキャラクターと構成がしっかりしているためだ。
 赤川作品には気軽に読ませてしまう技がある。

 また、この作品は伏線の張り方が素晴らしい。
 羽衣女子大にやってきた片山刑事。
 登場人物紹介がひととおり終わった後に後半意味を持ってくる伏線のオンパレード。
★森崎学長とベッドインしている雪子。
 「どうしてわざわざ刑事なんか呼んだの?」
★タワークレーンのことが大好きな寮管理人の小峰老人。
★雪子のことが好きな大中教授。
 高所恐怖症なのに夜中に雪子の部屋に忍び込む。
★プレハブの食堂の椅子と机が盗まれた。
★夜間勤務で疲労している同僚の林刑事。
★偏頭痛を訴えている三田村警視。
★森崎学長とは兄弟で似ている大学の体育教師・富田。
★林刑事の「犯人……見た…」というダイイングメッセージ。

 これらの伏線が散りばめられていて事件に大きく関わってくる。

 赤川次郎は抜群のストーリーテラーだ。
 少しエッチでロマンスな場面もあるし……。
 そして深く読んでみると、読ませるためのプロの技を諸処に垣間見ることが出来る。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする