平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

12人の優しい日本人

2009年05月02日 | 邦画
 大きな場面展開のない一場もの。
 登場人物の会話の中で解き明かされていく事件の真相。
 同じドラマ形式の作品として最近では「キサラギ」がありましたね。

★まずこういう物語は言うまでもなくせりふが重要。
 脱線あり、ツッコミあり、ダジャレあり。

 脱線ではこんな感じ。
 「貴花田と若花田は横綱になるか?」(この作品の製作は91年。時代を感じますね)
 お茶の出前の話。「フルーツパフェ頼んだのは誰だ?」
 「無罪の無は竹脇無我の無か」(これも時代。竹脇無我さんって今の若い人は知らない?)
 「顔を見ればどんな人かわかる」という男に「じゃあ、俺の顔を見て俺がどんな職業か当ててみろ」
 ツッコミはすべてがそうだと言ってもいいが、例えばこんな感じ。
 「酔ってメロメロ」と言った男に対し若い女性はこう主張。
 「酔ってメロメロはおかしい。酔ってフラフラが正しい」。
 ダジャレでは
 「死んじゃえ」と「ジンジャエール」。
 「証人前へ」と「使用人前へ」。
 「あくまで」と「悪魔」。
 
★そして次に重要なのはキャラクター。
 何となく無罪に手をあげる人。フィーリングであげる人。
 他人の意見に同調して手をあげる人。
 妙に論理的なやつ。うまく意見の言えない人。他人の意見をくっつけただけの発言をする人。
 クールで無関心な人。すねる人。
 やたら仕切りたがる人。自分の意見を言いたがる人。

 これらの人々がドラマが進むに連れて別の顔を見せ出すのも特徴。
 ある男は殺された男がモテていたことに怒っていた。「大して格好良くないくせに、年収が低いくせに、自分より背が低いくせになんでモテるんだ?」と愚痴を言う。
 ある男は過去に陪審員をやって被告を死刑にしていた。その死刑にした男の顔がチラついて無罪を主張していた。
 ある男は弁護士で実は●●だった。などなど。

★そして局面を変える陪審と事件の様相。
 裁判の争点は「道路で夫を突き飛ばした被告の妻に殺意はあったか?」
 最初は「なかなかの美人だし苦労してるみたいだから無罪にしてやろう」「悪人には見えなかったから無罪」というノリ。
 次に加害者の妻が言った「死んじゃえ」というせりふについての分析。
 「死んじゃえ」には殺意があるが、「殺すぞ」には脅迫だけで殺意はない。
 そして先程のダジャレ。
 「死んじゃえ」は「ジンジャエール」と言ったのではないか?

 こうして加害者に殺意があったかなかったかが論ぜられるのだ。
 そして事件解明の決定打になるのが宅配ピザ。

 実に見事ですね。
 ギャグあり、ミステリーあり、伏線あり、登場人物の様々な感情あり。
 こういう様々な要素が詰め込まれているのがエンタテインメントなんですね。
 一場で構成されているのもおしゃれ。
 さすが三谷幸喜さんです。


コメント
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