平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

ミス・ポター

2009年05月27日 | 洋画
 ピーター・ラビットの作者ビアトリクス・ポターの物語。

★ビアトリクスはこんな女性。
 動物が好きで描くのが大好き。(風景画は苦手らしい)
 子供の頃は人形遊びや自分で物語を作るのが好きだった。
 絵が動き出したり、馬車がウサギの馬車に見えたりもした。
 そして現在の友達は自分の描くピーター・ラビット。
 完全な空想少女だ。
 彼女は英国の上流階級のひとり娘で結婚を両親から求められているが、そんな両親にこう答える。
 「誰にも愛されなくてもいいの。絵と動物が愛してくれるから」
 空想少女ビアトリクスは現実より自分の創り出した空想の世界に生きる。

 僕はわりとこういう人、好きだ。
 繊細で永遠の子供で。
 現実っていうのは味気ないですからね。空想の世界の方がずっと豊か。

★そんなビアトリクスが現実に触れる。
 出版社に持ち込んだピーター・ラビットの原稿が本になる。
 出版社はほとんど期待していなかったが、ベストセラーに。
 そしてベアトリクスと同じ情熱で本を作った編集者ノーマンと恋に落ち婚約。
 しかしノーマンは病気で死んでしまって……。

 最後の最後で現実がベアトリクスを裏切ったのだ。
 だとしたらベアトリクスは現実に生きない方がよかったのか?
 本を出さず恋に落ちなければよかったのか?
 しかし彼女にはノーマンと出したピーター・ラビットの本がある。
 ノーマンとの思い出がある。
 そして自分だけの友達だったピーター・ラビットが全世界の子供たちの友達になった。
 幸せな結婚生活は得られなかったが、それだけで意味のあること。

 ノーマンの死を乗り越えたベアトリクスはその後の人生をたくましく生きる。
 開発で失われていく自分の愛した風景、湖水地方の保護活動に携わるのだ。
 本の印税で得たお金でそこの土地を買う。
 オークションで引き揚げられる土地の値段。
 現実との闘いだ。

★空想と現実 
 この彼女の行為を少し俯瞰で考えてみると、これは経済行為ではないんですね。
 彼女が土地を買う目的は投機とかではなく、自分の愛している風景を守るため。
 あたかも自分の世界を現実世界で創造しているかの様。
 経済の立場で考えてみれば、土地を開発せずそのままにしておくなんてもったいないという発想になる。
 しかし現実的でないのがベアトリクス。
 空想世界の論理や価値観は現実世界のそれとは違うものなのです。
 現実世界に生きていてもベアトリクスは空想世界の人なんですね。

※追記
 物語のオープニングの舞台は1902年の英国。
 恋人のノーマンが自分の部屋に入ってきてふたりきりになって作家ベアトリクスはこう言う。
 「作家には多少のスキャンダルが必要なのよ」
 部屋で男女がふたりきりになることがスキャンダルなんて!
 そういう時代だったんですね。


コメント
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