「龍」(村上もとか・著 小学館・ビックコミック刊)を読んでいる。
主人公の押小路龍は何とさわやかで気持ちのいい青年だろう。
コミックス6巻ではこんなふうに描かれる。
使用人・田鶴ていとの恋愛を貫くために押小路家を出て、自活していくことになる龍。
龍の押小路家は京都の大財閥で、実は龍はお坊ちゃま。
なかなか職が見つからず、詐欺師にダマされて有り金を全部持っていかれたりする。
だが、ここからがすごい。
詐欺師にダマされて龍はこう叫ぶ。
「やられたあ! あのおっちゃん、たいしたもんやでーー!」
苦労知らずのお坊ちゃんのリアクションとも言えるが、普通の人間なら落ち込んだり、怒ったりする所、龍は見事にダマした詐欺師を賞賛する。
そして、さらに次が龍のすごい所。
龍は、五条大橋で<乞食>になる。
だが、乞食になっても落ち込まない。
かつての恋人で幼なじみの小春に出会っても、何ら恥じることなく「おめぐみを!」「ありがとうござい!」と心から言える。
小春もなかなか粋で、そんな龍に財布をまるごと恵み、「面白いなぁ、龍はんは」とクスリと笑う。
龍はだんだん乞食が板についてくる。
乞食仲間の長老格の老人(かつては幕末の志士だったらしい)を「五条のおっちゃん」と言って慕い、橋の上で牛若丸の芸事をして金を稼ぐ。
そして、こんな心境になる。
「すべてを捨てて生きれば、何とかいけるもんや」
龍の叔父も橋の上で乞食をしている龍を見て、「乞食なんかやっていないで俺の仕事をやれ」と言って助け船を出す。
だが、龍は叔父の申し出を断る。
「オレ、今この仕事が楽しいんですわ。銭もぼちぼち貯まるし、相棒(五条のおっちゃん)はオレの人生の先生や」
龍は自分の置かれている現状を嘆いたり、恨んだりしない。
何も持っていないこと、持っていたものが失われることはつらいが、こだわらない。
こだわってウジウジするよりは現在を見る。
現在を積極的に楽しんで、何かを学んでいく。
人間が大きいと言えば大きいし、アホと言えばアホ。
こんな龍を叔父はこう評す。
「アホはアホなりに、少しは根性が座ってきたか」
先程の元カノ・小春のリアクションもそうだが、この叔父と言い、龍の脇役たちも実に魅力的だ。
さて、こんなさわやかな青年・龍。
彼はこれから昭和の怪物・北一輝に出会ったり、様々な形で、戦前の昭和という時代と関わっていく。
そして、激動・苦境に遭いながらも龍はそのさわやかさを失わない。
自分が苦境にある時に何度も読みたい作品だ。
「すべてを捨てて生きれば、何とかいけるもんや」と龍が語ったとおり、お金も地位も持っているものすべてを捨てた方が、実は自由に生きられるということを教えてくれる。
龍のようにさわやかになれれば、人生を力強く生きていくことが出来るだろう。
主人公の押小路龍は何とさわやかで気持ちのいい青年だろう。
コミックス6巻ではこんなふうに描かれる。
使用人・田鶴ていとの恋愛を貫くために押小路家を出て、自活していくことになる龍。
龍の押小路家は京都の大財閥で、実は龍はお坊ちゃま。
なかなか職が見つからず、詐欺師にダマされて有り金を全部持っていかれたりする。
だが、ここからがすごい。
詐欺師にダマされて龍はこう叫ぶ。
「やられたあ! あのおっちゃん、たいしたもんやでーー!」
苦労知らずのお坊ちゃんのリアクションとも言えるが、普通の人間なら落ち込んだり、怒ったりする所、龍は見事にダマした詐欺師を賞賛する。
そして、さらに次が龍のすごい所。
龍は、五条大橋で<乞食>になる。
だが、乞食になっても落ち込まない。
かつての恋人で幼なじみの小春に出会っても、何ら恥じることなく「おめぐみを!」「ありがとうござい!」と心から言える。
小春もなかなか粋で、そんな龍に財布をまるごと恵み、「面白いなぁ、龍はんは」とクスリと笑う。
龍はだんだん乞食が板についてくる。
乞食仲間の長老格の老人(かつては幕末の志士だったらしい)を「五条のおっちゃん」と言って慕い、橋の上で牛若丸の芸事をして金を稼ぐ。
そして、こんな心境になる。
「すべてを捨てて生きれば、何とかいけるもんや」
龍の叔父も橋の上で乞食をしている龍を見て、「乞食なんかやっていないで俺の仕事をやれ」と言って助け船を出す。
だが、龍は叔父の申し出を断る。
「オレ、今この仕事が楽しいんですわ。銭もぼちぼち貯まるし、相棒(五条のおっちゃん)はオレの人生の先生や」
龍は自分の置かれている現状を嘆いたり、恨んだりしない。
何も持っていないこと、持っていたものが失われることはつらいが、こだわらない。
こだわってウジウジするよりは現在を見る。
現在を積極的に楽しんで、何かを学んでいく。
人間が大きいと言えば大きいし、アホと言えばアホ。
こんな龍を叔父はこう評す。
「アホはアホなりに、少しは根性が座ってきたか」
先程の元カノ・小春のリアクションもそうだが、この叔父と言い、龍の脇役たちも実に魅力的だ。
さて、こんなさわやかな青年・龍。
彼はこれから昭和の怪物・北一輝に出会ったり、様々な形で、戦前の昭和という時代と関わっていく。
そして、激動・苦境に遭いながらも龍はそのさわやかさを失わない。
自分が苦境にある時に何度も読みたい作品だ。
「すべてを捨てて生きれば、何とかいけるもんや」と龍が語ったとおり、お金も地位も持っているものすべてを捨てた方が、実は自由に生きられるということを教えてくれる。
龍のようにさわやかになれれば、人生を力強く生きていくことが出来るだろう。