平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

ゴルゴ13~福島原発事故を予見していたあるエピソード

2011年09月13日 | コミック・アニメ・特撮
 「ゴルゴ13」の「2万5千年の荒野」を読んだ。
 原子力発電所の事故を扱って、現在の東京電力福島原子力発電所の事故を予見している。

 舞台は、ロサンゼルスの北方80キロにあるヤーマス原子力発電所。
 ロサンゼルスオリンピックを前にして、検査を終え再稼働しなければならない。
 しかし点検箇所は山積み、しかもトラブルで万が一の時にベントするための安全弁を傷つけてしまう。
 現場課長は、再点検、再稼働の5日間の延期を主張するが、経営陣は
 「5日で1万ドルも費用がかかるんだぞ」
 「緊急冷却装置があるんだ、心配ない」
 「今後、原子力を推進するためにもオリンピックに間に合わせなければならない」
 と言って拒否する。

 そこへ停電。
 自家発電のディーゼル発電機で電気を起こそうとするが、オイルチェックミスで電気を起こすことが出来ず、緊急冷却装置が稼動しない。
 結果、原子炉内での圧力が上昇。「圧力184に上昇!! 温度396!!」
 このままでは炉心がむき出しになってメルトダウン! あるいは炉心爆発!
 現場課長はベントを指示するが、先日の安全弁の事故でベントが出来ない。
 おまけに放射能が漏れている。
 「圧力上昇中!! 188 190 194!!」
 「原子炉建屋内に放射能!!」
 「排気口から外部放射能漏れ!!」
 「これでヤーマスの町もおしまいだ」
 「風は毎秒5メートル! 炉が吹き飛んだら3時間でロスに放射能が!」
 「わずか3時間でロス600万市民をどうやって避難させるというのだ!?」

 何というリアルな描写だろう。
 原子炉建屋、緊急冷却装置、安全弁……。
 この作品が描かれたのは1884年、1984年だが、ここで描かれていることは2011年の現在でも通用する。
 おそらく福島原子力発電所の現場でもこれと同じような会話がなされたのではないか?

 結局、この事故はゴルゴ13が安全弁の一番弱い所を対戦車銃で撃ち抜いて、ベントすることで解決するのだが、その後のエピソードもリアル。
 電力会社は事故を原発に反対する過激派の拠るものとして、原発の安全をあくまで主張しようとするのだ。

 そして作品はマスコミと原子力規制委員会との間のこんな会話で締めくくられる。
 「いずれ石油や石炭は枯渇するのです。今更、木炭やローソクの生活に戻れますか? 原子力は絶対に必要なのです」
 「すぐにそれだ! 答えになっていない! 太陽熱や風力発電、波力発電もあるじゃないか!」
 「しかし、実用までまだ100年はかかります。(略)……問題は機械ではなく、人間なのです」
 「技術ではなく、それを扱う人間の問題だというんですね」
 「そうです」
 「しかし、人間のやることだ! 必ずまた事故は起こるだろう!」
 「……ないとは言えません」
 「じゃあ、いったいどうすればいいんだ」
 「そう……。我々はどうしたらいいんでしょう? どうしたらいいんでしょうか?」

 この作品で描かれたような人為ミス、今回の震災のような自然災害、これらによってどんな被害が起こるかわからない原子力。
 人間が制御できない力は持つべきではない。


コメント (2)
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