平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

『LUPIN the Third』~峰不二子、俺の退屈を殺してくれるとびきりのいい女

2012年04月12日 | コミック・アニメ・特撮
 大人の『ルパン三世』である。
 惜しげもなく出て来る峰不二子のハダカ。
 不二子は妖艶に男たちを誘惑する。

 作画は原作のモンキー・パンチ先生の絵のまま。
 線が過剰にあって、アニメによくあるような線の省略はない。
 日本のアニメーションの技術もここまで進歩したか。

 設定は、ルパン、不二子、次元が知り合う前の物語。
 次元などはラスベガスで、カジノを経営するマフィアの用心棒をしている。
 だからルパンたちはお互いのことを<闇の世界>のウワサで知っているくらいで、会ったことがない。
 「あんたが峰不二子か。ウワサで聞いたことがあるぜ」みたいな会話が出て来る。

 さて、この作品『LUPIN the Third』の面白さは、ルパンたちの人物像を深く掘り下げていることである。

 たとえばルパンは<虚無>の人間。
 世の中のあらゆることに退屈しきっていて、心を躍らせる刺激を求めている。
 盗みの事前予告をするのも「ただの盗みなんか飽きちまった」から。
 そんなルパンが不二子に出会う。そして彼女のことをこう評する。
 「イカれた女だぜ。麻薬ごときでこんなヤバい場所に単身乗り込む。人を殺すことも辞さない無軌道さ。自らがどこまで落ちてもかまわない、その自虐。悪くないね。面白い女だね、想像以上だ」
 ルパンは不二子を退屈から抜け出させてくれる<とびきりのいい女>として認知する。
 だから、『峰不二子をいただきます ルパン』という予告上を不二子に出す。

 お茶の間用の『ルパン三世』でも不二子を追いかけていたルパンだが、この作品では「なぜルパンは不二子を追いかけるのか」という理由が上に書いたように示されている。
 ルパンは、絶対に意のままにならない<イカれた、とびきりいい女>峰不二子を追いかけることで、虚無の退屈から逃れることが出来るのだ。
 そして、おそらくそれは永遠にゴールにたどりつくことのないゲーム。
 不二子はルパンに体を許すことはあっても、決して心までは許さない。
 決して達成することのない盗みだから、ルパンは面白いと感じている。

 一方、不二子は盗みに<官能>を感じている。
 立ちはだかる困難を乗り越えて、目的のものを手にした時、不二子はエクスタシーを感じる。
 そのエクスタシーは、オープニングの言葉に拠れば、盗みをする時だけでなく、捕まって罰せられる時にも感じるらしい。
 何という頽廃だろう。
 不二子はエクスタシーを得るためだけに生きている。

 そして次元。
 彼は不二子とは対照的に<ストイック>だ。
 いくつもの死線を越えてきた次元。
 彼は生きていくために、殺されないために、誰にも心を許さない。
 感情や感傷を排除して、ただ冷酷・非情に生きる。
 ルパンとは別の形で、心が渇ききっている。

 昨日放送された第2話では、そんな次元が唯一愛した女性のエピソードが描かれた。
 マフィアのボスの妻を愛した次元。
 しかし、次元はその愛した女に裏切られ、利用されていたことを知る。
 証拠隠滅のため女は次元を殺そうとし、次元は反撃して女を撃つ。
 だが、その瞬間、ためらいの感情が起きる。
 「愛している女を撃てない……!」
 結局、次元は女の命を奪うが、その後、不二子にこんなことを語る。
 「殺し屋の仕事では一瞬の迷いが命とりになる。感情を抱いたらおしまいだ」
 感情を持ってしまった次元は、<殺し屋稼業>をやめて<泥棒稼業>に鞍替えする。ルパンとのコンビ結成だ。

 このように個々のキャラクターを深く掘り下げている『LUPIN the Third』。
 子供の時に『ルパン三世』を見ていた世代が、大人になってアダルトな『LUPIN the Third』を見る。
 実に面白い企画の切り口だ。
 『LUPIN the Third』は、水曜深夜(木曜AM1:54)、日本テレビ系にて放送中!


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