平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

平清盛 第15回「嵐の中の一門」~風雪を耐え忍んだ者だけが見られる美しきものがある。

2012年04月16日 | 大河ドラマ・時代劇
 凄まじい心のドラマである。
 清盛(松山ケンイチ)は、亡き弟・家盛(大東駿介)のために曼荼羅を作り続ける。
 その行為は、命じた鳥羽法皇(三上博史)のためではない、あくまで家盛のためだ。

 それは供養であると同時に、曼荼羅を通して家盛に向き合う作業でもある。
 絵師の描く曼荼羅を見つめながら、清盛は家盛に語りかける。
 「俺がやったさまざまなことがお前を苦しめた」「死に追いやった」「やはりお前は許してくれないのか」「昔のように笑いかけてほしい」「兄上と言ってほしい」
 それは現実と向き合うつらい作業だ。
 西行(藤木直人)は「嵐の中に身をおけば、美しきものが見えてくる」「風雪を耐え忍んだ者だけが見られる美しきものがある」と語ったが、清盛はまさに<嵐の中に身を置いている>。表面上は静かだが、心の中は嵐が吹きまくっている。
 しかし、いくら問いかけても家盛は応えてくれない。
 それでも清盛は見つめ続ける。
 家盛が「兄上」と微笑みかけてくれる<美しいもの>が見えるまで。

 そして、父・忠盛(中井貴一)。
 彼もまた左大臣・頼長(山本耕史)の話を聞いて、家盛を死に追いやったのは自分だと知る。
 武士である自分が貴族になって権力を握り、世の中を変えようとしたことが間違いであり、結果として家盛を殺したのだと理解する。
 自暴自棄になって曼荼羅製作をやめるように言う忠盛。
 しかし、清盛はやめようとしない。
 途中でやめたら、「兄上」と語りかけてくれる家盛に会えなくなるからだ。
 ここでやめたら、家盛を犠牲にしてまでやってきたことが無に帰してしまうからだ。
 無にしてはならないこととは、<武士の手によって今までの腐りきった世の中を変えよう>とする理想。

 家盛の死と向かい合って、あくまで<理想にこだわった清盛>と<棄てようとした忠盛>。
 この瞬間、ほんの一瞬だが、清盛は忠盛を越えた。
 忠盛は心の軸がブレたが、清盛はより一層強くした。
 まさに世代交代である。

 そして宗子(和久井映見)。
 曼荼羅を見て、愛しそうに笑みを浮かべて言う。
 「家盛が兄上によろしゅうと言っておる。たったひとりのかけがいのない兄上に」
 宗子には美しいものが見えたのだ。
 それは清盛も忠盛も同じであっただろう。
 家盛の死によって、再び<理想>と<心の軸>を取り戻し、強くする平家一門。

 「風雪を耐え忍んだ者だけが見られる美しきものがある」
 いい言葉ですね。
 つらい時には、この言葉を思い出したい。
 それとまっすぐに現実と向き合った清盛の姿も。
 そうすれば、きっと<美しいもの>が見えて来る。

 
コメント (16)
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