平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

「美味しんぼ」問題を<表現の自由>から考える~ダウンタウン松本人志さん、編集家・竹熊健太郎さん

2014年05月13日 | 原子力発電・反対
 原発の放射能問題を扱った『美味しんぼ』が、「風評被害を増長する」として批判されている。
 この問題について、今回は<表現の自由>という点から見てみたい。

 ダウンタウンの松本人志さんは、『美味しんぼ』バッシングについて、「最近、すぐみんな抗議する」と最近の風潮を語った後、次のようにコメントしている。(スポニチアネックス 5/11)
★「作品やから。みんなで作るもんじゃない。作者のものであって、周りが抗議したって…外部の人間がストーリーを変えろとかいうのは、ちゃんちゃらおかしい」
★「これに関しては漫画家さんが神、映画に関しては映画監督が神なんですよ。周りがごちょごちょ言って変えろとか言うのは神への冒とく」

 コミックサイト<電脳マヴォ>を主宰している編集家・漫画家の竹熊健太郎さんは自身のツイッターで、
★「今回の『美味しんぼ』にもし反論するなら、『美味しんぼ』より『思想的に正しく面白い漫画』を描いて発表すればいいではありませんか。プルトニウムふりかけご飯を扱った放射能安全漫画を描けばいいではないですか。なぜみな、やらないのでしょう」
★「要するにですな、ある言論が問題なら言論で対抗するしかないんですよ。それを一足飛びに『風評被害が拡大するからお巡りさん捕まえて!』と単に圧力をかけることは反論ではないわけです」
★「間違ってるなら、そう主張すればいいではないですか。そうではなく『風評被害を煽るからけしからん』という理屈がわからないのです。なら、あれはデマだから気をつけましょう。低量放射線は危険ではない、とそれこそ『風評宣伝』すればいいのでは」

 松本さんも竹熊さんも<表現者>の立場からの的確なコメントですね。
 まずは語っているのは<表現者の自由と絶対性>。
 それに加えて、彼らが危惧しているのは、<風評被害>の名のもとに自由な発言や創作が出来なくなること。
 いつの間にか、政府や一部の人間に都合のいい、大本営発表しか国民に伝わらなくなること。

 たとえば、言論プラットフォーム「アゴラ」などに寄稿しているジャーナリストの石井孝明氏はこんなことをツイッターで書いている。
★「美味しんぼの件は、見せしめにぴったり。(略)祭りは『血祭り』の方が興奮するし。嫌いな人民裁判に、私も乗ろう。風評被害撲滅の大義のため」
★「私は漫画という文化に敬意を持つが、社会に意味のない漫画なら見せしめのためにリンチをして、吊るし上げても、影響はないだろう。だから心置きなくリンチして木に貼付けにしてやりましょう」

 実におそろしい。
 仮にも石井氏がジャーナリストなら、竹熊氏が言うように『低量放射線は危険ではない』と、ご自身がしっかり調べて反論すればいいのです。
 国民はバカではないから、その上で両者の意見を見比べて判断しますよ。
 なのに<見せしめ><血祭り><リンチ><吊し上げ><木に貼り付け>とは!

 この石井孝明氏の<血祭り発言>について、『バクネヤング』の漫画家の松永豊和氏はツイッターでこう反論している。
★「なんというバカ。なんという無知。作家というものは放っておけばなんでも書くキチガイであり、そこにこそ作家の価値がある。その倫理を見極め、世に送り出す判断を担うのは編集者だ。全責任は小学館にある」

 <作家というものは放っておけばなんでも書くキチガイであり、そこにこそ作家の価値がある>というのは松本人志さんの<漫画家さんが神、映画に関しては映画監督が神>に通じるものがありますね。
 いずれも的確な芸術論・作家論です。
 世の中に物議をかもしだす作品こそすぐれた作品。
 批判を怖れず自分の思うことを書くのが真の作家。
 この点で、今回の『美味しんぼ』は読むに価する作品であり、原作者・雁屋哲さんは敬意を表されるべきだと思う。

 言論・表現の自由は守らなくてはならない。


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コメント (6)
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