平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

ロング・グッドバイ~男の名前は増沢磐二。私立探偵である。

2014年05月20日 | 推理・サスペンスドラマ
 ラストで<2020東京五輪の都庁>の映像が挿入された。
 なるほど、主人公たちがいた世界は、2014年の現代の隠喩だったんですね。
 その他にも、これは主人公たちの時代のことですけど、<原子力の平和利用>という原田平蔵(柄本明)のポスターが貼られていた。
 これは原発を再稼働しようとしている現政権の暗示。
 劇中「まもなく高速道路が建設される」というせりふがあったが、これは現政権が進める国土強靱化の<大型公共工事>や、オリンピックのための<国立競技場建設>などの暗喩。

 私立探偵・増沢磐二(浅野忠信)は闘う。
 原田平蔵のような、他者を潰し、犠牲にして肥え太るやつらと。
 どんなに裏切られても、自分だけを信じて、孤独な闘いをする。

 しかし、この作品の作家さんたちは磐二の闘いに共感しつつも悲観的なようだ。
 保(綾野剛)は結局、原田平蔵に取り込まれていた。
 新聞記者・森田(滝藤賢一)は原田平蔵の不正を暴いたが、「明るい明日を見たい」大衆はそんなことをお構いなしに原田を支持している。
 そして、ラストのナレーション。

『時代の底ではいつも、いくつかが潰れている。
 増沢磐二もまた、やがて潰れるだろう。
 いや、つまり増沢磐二のような男、という意味だが。
 来る新たな時代に、こんな男はもういないのだろう。
 さらば増沢磐二。
 この国は行くよ。時代の底に幾千の悲しみを抱いて。輝く未来へ。
 男の名前は増沢磐二。私立探偵である』

 確かに、そのとおりですね。
 2014年の現代に増沢磐二のような人間はいない。
 国民負担ばかりを増やしている安倍内閣は高支持率。
 非正規雇用の安い賃金でこき使われ、一部の人間だけが肥え太っているのに怒らない大衆。
 電力会社と原子力村を守るための原発推進。
 権力にへつらい、取り込まれているマスコミ・知識人。

 巨大な力を持つ原田平蔵は決して倒れないし、倒れても別の原田平蔵が現れる。
 実に虚しい闘いだ。
 むしろ大きなものに取り込まれてしまった方がどんなに楽か。
 だが、増沢磐二はそれを潔しとしない。

 
 増沢磐二は愚かだが、格好いい。

コメント (2)
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