寿桂尼(浅丘ルリ子)は言う。
「太守様につらい思いをさせてしまいました。
母婆を許して下さい。
母婆はただ取り戻したいだけなのです、光に満ちた今川を、そなたと共に」
直虎(柴咲コウ)にもこう語った。
「そなたが、わが娘であればと思うておりました。
井伊殿、わが亡き後も今川を見捨てないでおくれ。
そなたの才覚で太守様を支えてほしいのじゃ」
そして病に倒れ、うつつの中で見た光景は、かつての今川の栄華。
歌舞音曲の中で華やかに舞い踊る今川家の人たち。
ここまでの描写だと、もののあはれを感じますね。
過去の栄華にすがり、失われようとしているものを何とか維持しようとする人間の哀しい業。
しかし……
物語はここで終わらなかった。
「われに似たおなごは主家に義理立てなど決してせぬ」
と語り、
帳面の井伊直虎の所に×印。
直虎は粛正のリストに入れられていたのだ。
人間というのは怖ろしい。
心を許しているふりをしながら裏では冷酷なことを考えている。
まあ、これくらいの業を持っていないと、武田信玄(松平健)や北条玄庵(品川徹)と対等に渡り合えないよな~。
何度も病に倒れても生還してくるし、まるで妖怪のよう。
夢の中で、かつての栄華を見ながら、死んでいくという感傷もなかった。
……………
一方、直虎も負けてはいない。
成長し、現実の政治というものを理解し始めたようだ。
寿桂尼に対して、こう持論を語った。
「家を守ることはきれいごとでは達せられませぬ。
狂うてでもおらねば、おのれの手を汚すことが愉快な者などおりますまい。
汚さざるを得なかった者の心の闇はどれほどかと……」
直虎は、現実の政治がきれいごとでは済まされないことを理解している。
いざとなれば、自分もその道に進まなくてはならないという覚悟もしている。
直虎と寿桂尼は本質的に似ているのだ。
寿桂尼は、わたしも直虎の年齢の頃、同じことを考えていた、と思ったのかもしれない。
だから、「そなたが、わが娘であればと思うておりました」という言葉は決してウソではないのだろう。
直虎が自分の娘であったらこんなに頼もしい存在はない。
第二の寿桂尼として、きっと氏真(尾上松也)を支えてくれる。
しかし、直虎は他家の人間だ。
将来の禍根は摘んでおかねばならない。
直虎と寿桂尼。
面白い関係ですね。
敵と味方、ダマし合う関係を越えて、根底で理解し合っているものがあるような気がする。
直虎は寿桂尼の遺伝子も受け継いで、戦国の世をたくましく、したたかに生きていくのかもしれない。
「太守様につらい思いをさせてしまいました。
直虎(柴咲コウ)にもこう語った。
「そなたが、わが娘であればと思うておりました。
井伊殿、わが亡き後も今川を見捨てないでおくれ。
そなたの才覚で太守様を支えてほしいのじゃ」
そして病に倒れ、うつつの中で見た光景は、かつての今川の栄華。
歌舞音曲の中で華やかに舞い踊る今川家の人たち。
ここまでの描写だと、もののあはれを感じますね。
過去の栄華にすがり、失われようとしているものを何とか維持しようとする人間の哀しい業。
しかし……
物語はここで終わらなかった。
「われに似たおなごは主家に義理立てなど決してせぬ」
と語り、
帳面の井伊直虎の所に×印。
直虎は粛正のリストに入れられていたのだ。
人間というのは怖ろしい。
心を許しているふりをしながら裏では冷酷なことを考えている。
まあ、これくらいの業を持っていないと、武田信玄(松平健)や北条玄庵(品川徹)と対等に渡り合えないよな~。
何度も病に倒れても生還してくるし、まるで妖怪のよう。
夢の中で、かつての栄華を見ながら、死んでいくという感傷もなかった。
……………
一方、直虎も負けてはいない。
成長し、現実の政治というものを理解し始めたようだ。
寿桂尼に対して、こう持論を語った。
「家を守ることはきれいごとでは達せられませぬ。
狂うてでもおらねば、おのれの手を汚すことが愉快な者などおりますまい。
汚さざるを得なかった者の心の闇はどれほどかと……」
直虎は、現実の政治がきれいごとでは済まされないことを理解している。
いざとなれば、自分もその道に進まなくてはならないという覚悟もしている。
直虎と寿桂尼は本質的に似ているのだ。
寿桂尼は、わたしも直虎の年齢の頃、同じことを考えていた、と思ったのかもしれない。
だから、「そなたが、わが娘であればと思うておりました」という言葉は決してウソではないのだろう。
直虎が自分の娘であったらこんなに頼もしい存在はない。
第二の寿桂尼として、きっと氏真(尾上松也)を支えてくれる。
しかし、直虎は他家の人間だ。
将来の禍根は摘んでおかねばならない。
直虎と寿桂尼。
面白い関係ですね。
敵と味方、ダマし合う関係を越えて、根底で理解し合っているものがあるような気がする。
直虎は寿桂尼の遺伝子も受け継いで、戦国の世をたくましく、したたかに生きていくのかもしれない。