平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

西郷どん 第17回 「西郷入水」~心は死のうと思うても、体は生きよう生きようとして震えます

2018年05月07日 | 大河ドラマ・時代劇
 歴史は運動会の綱引きに似ている。
 右へ行ったり左へ行ったり。
 押し戻したり、押し返されたり。
 井伊直弼(佐野史郎)が力を持てば、徳川斉昭(伊武雅刀)らが力を失い、斉彬(渡辺謙)がいなくなれば斉興(鹿賀丈史)が力を盛り返す。

 だから、ひとつの党派に与することは、すごく厄介。
 勢いのある時はいいが、劣勢に追い込まれると悲惨を味わう。
 橋本左内(風間俊介)しかり。
 篤姫(北川景子)しかり。
 月照(尾上菊之助)しかり。
 吉之助(鈴木亮平)しかり。

 賢明に生きるとは、綱引きに参加しないことなのかもしれません。
 ………………

 斉興の主張もわかる。

「鎌倉以来の名門・島津を守り抜いてみせる」
「皆を路頭に迷わせぬ」

 家と家臣に責任をもつ者として当然の判断。
 幕府相手にわざわざ波風をたてる必要はない。
 斉興と斉彬は、異国に対する認識など、見ている現実が全然違うのだが、普通の人間なら斉興と同じ判断をするだろう。
 家臣たちも自分が可愛いので保守的にならざるを得ない。
 家臣たちの目には、吉之助は穏やかな生活と秩序を壊す過激派に見えただろう。

 久光(青木崇高)もつらい。
 兄・斉彬の考えに共鳴しているようだが、父・斉興に逆らえないし、物事を強引に動かす政治力もない。
「おいは兄上ではなか!」
 と叫んで、おのれの無力を嘆くのみ。
 斉興からも、
「お前に斉彬の代わりが務まるか!」
 と全否定される。
 凡庸さの悲劇だ。
 斉彬の考えに対しても共鳴レベルで、血肉となった思想にはなっていないのだろう。
 でも、僕はこういう人、好きだな。
 島津の家に生まれなければ普通に暮らしていたに違いない。
 ………………

 吉之助は絶望していたのだろう。

・大老 井伊直弼の誕生
・一橋派の粛正
・起死回生を狙うが、斉彬の死
・薩摩に帰ると、斉興が実権を握り、日向国送りの沙汰
・これが薩摩が出した答えか?

 現実の壁はともかく厚く、光明は少しもない。
 唯一の救いは、大久保正助(瑛太)の友情。

 入水のシーンで良かったのは、月照のこのせりふ。
「心は死のうと思うても、体は生きよう生きようとして震えます」

 立派な堂々とした死よりずっといい。

 今回は、久光の嘆きと月照のこのせりふがあったことで作品に深みが増した。

 次回からは奄美編。
 歴史の綱引きから離れた吉之助は島で何を学ぶのだろう。
 新しい風景が見られそうな気がする。


コメント (6)
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