平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

西郷どん 第43回 「さらば、東京」~西郷と大久保の別れ。「憎め、すべては覚悟の上じゃ」 「おはんを嫌いになれるはずなどなか」

2018年11月19日 | 大河ドラマ・時代劇
 朝鮮国への使節派遣。
 西郷(鈴木亮平)は自ら乗り込み、直談判をして国交を回復し、居留民の安全を確保しようとしている。
 一方、大久保(瑛太)は使節の派遣は戦争の火種になるから放っておき、富国強兵に努めるべきだと主張する。

 どちらもドラマ上は正論ですね。
〝話し合い〟の西郷と〝内政重視〟の大久保。
 でも、ドラマから離れた現実はどうだったんだろう?
 明治政府の主流は『征韓論』で戦争する気満々だったのではないか?

「李朝滅亡」(片野次雄・著 新潮文庫)では、このあたりを次のように表現している。

「いつまでも日本の要求を拒み、鎖国政策をとり続ける朝鮮に、武力をもって攻め入り、無理矢理開国させようという強硬意見がそれ(=征韓論)である。
 西郷隆盛、副島種臣、後藤象二郎、板垣退助、江藤新平らが主唱した。
 このとき西郷隆盛は、陸軍大将近衛都督という要職にいる。副島種臣は外務卿の職にあった。
 もっとも、いきなり朝鮮へ兵を攻め込ませるつもりではない。
 最初は、西郷隆盛が使者となって朝鮮に渡り、日本側の要求を訴える手筈になっていた。
 朝鮮側から拒否されたならば、時を移さず兵を送り込むという段取りなのである」

 西郷の主張は、ドラマでも描かれたとおり〝腹を割って話せばわかる〟の『遣韓論』だとされているが、政府内では『征韓論』が主流だったようだ。
 だとすると、戦争になる可能性を回避し、内政を重視しようとした大久保の方に理がある。
 そもそも西郷が守りたいと言った「居留民」とは何なのか?
 国交を樹立していないから在留邦人はいないはず。
 ということは、明治政府が派遣した外務省の役人のことなのか? 
 江戸時代には使節のやりとりなどの国交があったようなので、商人などの日本人が少なからず居留していたのか?
 今回の描写は現在の韓国との関係もあるから気を遣って、いろいろ曖昧にしている感じがする。
『遣韓論』の西郷と『征韓論』の江藤、後藤らが対立している描写を入れればスッキリするんだろうけど、それだと西郷が下野する理由が弱くなってしまうし。

 まあ、現実はもっと複雑で、ドラマのように単純ではないのだろう。
 ドラマだと、
 誠実な西郷 VS ずるがしこい大久保。
「腹を割ってはなせばわかる」VS「おはんの人を信じるという政は好かん」
 といった単純な図式になってしまう。

 とは言え、これはドラマなので一番見せたかったのは次のやりとりだろう。
「憎め、すべては覚悟の上じゃ」
「おはんを嫌いになれるはずなどなか」

 近代史をドラマで描くことは難しい。
 人間には良い面も悪い面もあるから、良い面や悪い面を強調しすぎるとドラマに無理が出て来る。

コメント (2)
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