平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

青天を衝け 第36回「栄一と千代」~生きて下さい、あなたの人生を……!

2021年11月22日 | 大河ドラマ・時代劇
「あなたのここは誰よりも純粋で美しい」
「生きて……生きて下さい、あなたの人生を……!」

 千代(橋本愛)の死である。
 千代はこうやって時に弱気になる栄一(吉沢亮)を支えて来たんですね。
 言わば、栄一の精神的支柱。
 言葉は少ないが、まわりの人間のことをしっかり見ていて、
 迷ったり、間違っていたりしたらズバリと意見を言う。

 この千代の死をさまざまな視点から描いたのが上手い。

 まずは、長女・うた(小野莉奈)。
 見合いの席で、母・千代のことをイキイキと話す、うたはお母さんっ子だ。
 母のことを心から信頼し、尊敬している。
 妹・こと(池田朱那)、弟・篤二(泉澤祐希)と違って、貧しい時代の苦労も共有している。
 そんなうたが穂積陳重(田村健太郎)と結婚して、未来に踏み出そうとしている中、母を喪った。
 流行病のコレラゆえ、死に目にも会えない。
 その悲しみ・痛みは相当なものだろう。

 一方、弟の篤二は母の死がピンと来ていない様子。
 こういう死の受け止め方もある。

 妾のくに(仁村紗和)は娘と共に千代の死を傷んだ。
 千代はくにを拒絶せずに受け入れてくれた人。
 強くて器量の大きな千代のことを思い出していたに違いない。
 
 喜作(高良健吾)も思いがいろいろありそう。
 何しろ昔、千代のことが好きだったから。
 今は事業をおこなって現実でたくましく生きているが、
 かつては箱館戦争で死のうとしていた人物だから。
 人の生と死についていろいろ考えたに違いない。

 通常、大河ドラマでは、妻の死は主人公との関係で描かれることが多い。
 こういう多視点はめずらしい。
 それぞれに心のドラマがある。
 脇の登場人物をしっかり描いて来たから出来ること。
 …………………………

 三菱との戦いは続く。

 合本の東京風帆船会社が潰され、
 明治十四年の政変で大隈重信(大倉孝二)が追放されると、
『共同運輸会社』を設立(設立資金400万・うち政府は240万を出資)。
 三菱に対抗する海運会社を作った。

 岩崎弥太郎(中村芝翫)や政府高官の考え方はこうだ。
「貧困はおのれの責任である」
「惰民は救済するな」
「今の日本には余裕がなく、すべての人間を助けるべきではない」

 毎回書くけど、これ「新自由主義」。
 2021年の日本もこれで動いている。
 首相の岸田文雄は「これではまずい」と考えているようだが、
 あっちへふらふら、こっちへふらふらで、結局今までと同じ路線。

 一方、栄一の考え方は
「皆が力を合わせて、すべての人間が豊かになる社会」

 これは、今回、栄一が悩んだように理想なのか?
 現実は「理想なんかで太刀打ちできず、切り捨てねばならぬこともある」のか?

 別件だが、伊藤博文(山崎育三郞)、井上馨(福士誠治)、大隈重信らがイキイキと描かれているのは楽しいな。
 見慣れて来たこととメイクのせいで、それぞれの役者さんが伊藤や井上や大隈に見えて来た!


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