平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

「冬が来た」 高村光太郎~冬よ、僕に来い。僕は冬の力、冬は僕の餌食だ

2022年01月20日 | 
 冬が来た
              高村光太郎

 きっぱりと冬が来た
 八つ手の白い花も消え
 公孫樹(いちょう)の木も箒(ほうき)になった

 きりきりともみ込むような冬が来た
 人にいやがられる冬
 草木に背かれ、虫類(むしるい)に逃げられる冬が来た

 冬よ
 僕に来い、僕に来い
 僕は冬の力、冬は僕の餌食だ

 しみ透れ、つきぬけ
 火事を出せ、雪で埋めろ
 刃物のような冬が来た

 ……………………………………………

 大寒ですね。まさに冬真っ盛り。
 寒さで家を出るのも億劫になる季節。
 こんな時はこの詩を読みたくなります。

 特に後半の叩き込むような言葉のラッシュが見事!
「冬よ 僕に来い」
「冬は僕の餌食だ」
 何と「餌食」という言葉をチョイスして来た。
「火事を出せ」という言葉もすごい。
「雪で埋めろ」は少し考えれば思いつきそうだが、何と「火事を出せ」!
 ここで思考が一気に飛躍する。
 読者は一瞬戸惑う。
 でも、よく考えてみたら、火事は冬の風物詩。
 ストーブなどを使うから火事になりやすい。
「火の用心」の夜まわりも冬におこなわれている。

 高村光太郎は彫刻家でもあるが、この詩はまさに言葉の彫刻。
 冬という対象に向かい、鑿(のみ)でひとつひとつの言葉を彫っている感じがする。


コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「新聞記者」(netflix版)が... | トップ | 真犯人フラグ~われわれ、お... »

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (象が転んだ)
2022-01-21 16:45:06
冬は僕の餌食だ、火事を打せ
何だかジーンときます。
言葉は彫る事により深みと凄みを増す。
昔の人は言葉のその重みをちゃんと理解して使い分けてたんですかね。
返信する
見事な世界の切り取り方 (コウジ)
2022-01-22 09:06:09
象が転んださん

いつもありがとうございます。
僕も心にグッと迫ってきました。
あっと驚く世界の切り取り方。
これで読む者の感性も鍛え上げられていく。

詩や小説を読んで、一文でも引っ掛かる言葉があれば、うれしいですよね。
返信する

コメントを投稿

」カテゴリの最新記事