平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

「野原に寝る」 萩原朔太郎~5月の新緑の季節、詩人は野原に寝転がって自然の生命力を感じている

2023年05月10日 | 
 野原に寝る
                萩原朔太郎
               
 この感情の伸びてゆくありさま
 まっすぐにのびてゆく喬木(きょうぼく)のように
 いのちの芽生(めばえ)のぐんぐんと伸びる

 そこの青空へもせいのびをすればとどくように
 せいも高くなり胸はばも広くなった
 たいそううららかな春の空気をすいこんで

 小鳥たちが食べものをたべるように
 愉快で口をひらいてかはゆらしく
 どんなにいのちの芽生たちが伸びてゆくことか

 草木は草木でいっさいに
 ああ どんなにぐんぐん伸びてゆくことか
 ひろびろとした野原にねころんで
 まことに愉快な夢をみつづけた
 ………………………………………………

 5月──新緑の季節、世界が生命力であふれる時だ。
 朔太郎は野原に寝転がり、光輝く生命力を感じている。
 自然と調和して、自然の一部になった朔太郎。
 ここには「個」の苦悩や孤独はない。

 萩原朔太郎の旅の詩と言えば、
「ふらんすへ行きたしと思へども
 ふらんすはあまりに遠し」
 で始まる「旅上」が有名だが、こんな詩もある。
 ………………………………………………

 閑雅(かんが)な食慾
                萩原朔太郎

 松林の中を歩いて
 あかるい気分の珈琲店(カフェ)をみた。
 遠く市街を離れたところで
 だれも訪づれてくるひとさへなく
 林間の かくされた 追憶の夢の中の珈琲店である
 をとめは恋恋の羞(はじらい)をふくんで
 あけぼののように爽快な別製(べっせい)の皿を運んでくる仕組
 私はゆったりとふおうくを取って
 おむれつ ふらいの類(たぐい)を喰べた。
 空には白い雲が浮んで
 たいそう閑雅な食慾である。
 ………………………………………………

 ファンタジックですね。
・林の中のあかるい気分の珈琲店
・恥じらいを含んだ乙女のウエトレス
・ゆったりとフォークで食べるオムレツ
・空には白い雲
 情景が浮かんで来る。
 ゆったりとして、穏やかで、光輝いて、清らかで──
 朔太郎はここでも世界との調和を感じている。


 野原をさまよい歩いたら、こんな珈琲店に出会うかもしれません。
 野原に寝転がったら、あふれ出る世界の生命力を感じるかもしれません。
 せっかくのいい季節ですから、山野を歩いてみましょう!


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