平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

鎌倉殿の13人 第35回「苦い盃」~本当に鎌倉のことを思うのであれば、あなたが戦うべきは……

2022年09月12日 | 大河ドラマ・時代劇
 北条政範(中川翼)の毒殺で、畠山に濡れ衣が……。
 毒を盛ったのは平賀朝雅(山中崇)。
「畠山の策略にはまってはいけません」
 保身のために朝雅は罪を畠山になすりつける。
 りく(宮沢りえ)は息子・政範を失ったことで心乱れ、親戚・朝雅の言葉を信じる。
 同時に畠山の領地・武蔵を手に入れれば北条の基盤は盤石になると考えている。
 時政(坂東彌十郎)は畠山毒殺説には懐疑的だが、武蔵は欲しいし、何よりりくを失うことを怖れている。

 朝雅、りく、時政──こうした三者の個人的な思いが交錯して歴史は進んで行くんですね。
 それもこれも頼朝(大泉洋)という重しがなくなったから。
 重しがなくなり、配下は自由に動き始める。
 そして重しとして実朝(柿澤勇人)は力不足。

 義時も重しになれない。
 義時は鎌倉での序列もそうだが、参謀役・補佐役の器。
 頼朝というカリスマがいたから義時の能力は活きた。
 現在の鎌倉の実質的なトップは時政だが、時政は私的なことに走りすぎる。
 そんな時政を義時は、実の父であることもあり、コントロールできない。

 だから畠山重忠(中川大志)は義時に言う。
「北条の邪魔になる者は退けられる。
 鎌倉殿のためというのは便利な言葉だ。
 本当に鎌倉のことを思うのであれば、あなたが戦うべきは……。
 あなたはわかっているはずだ」

 義時は物事を大局的に見られる聡明な人物でもある。
 だから現在の鎌倉の混乱を招いているのが、父・時政とりくであることがわかっている。
 決して北条の権勢のために、時政とりくと与することはない。
 聡明であるがゆえの悲劇であるとも言える。
「時政についていくのは当然なこと」「北条の権勢のために畠山を討とう」と素直に考えることが出来たらどんなに楽なことか。

 そんな義時が実朝亡き後、『鎌倉の重し』として担ぐのは政子(小池栄子)になるのだろう。
 組織には重しが必要だ。
 それがなくなると、たちまちバラバラになる。
 ……………………………………………

 今回の見せ場は何と言っても「歩き巫女」の大竹しのぶさんだろう。
 何という怪演!
 歩き巫女は占う。
「この中にひと月体を洗っていないものがいる」
 和田義盛(横田栄司)のことだが、これは臭いがするので普通の人でもわかりそう。笑
「この中にすごろくが苦手なものがいる」
 北条時房(瀬戸康史)のことだが、時房はすごろくをやると気分が悪くなるらしい。笑
 これは簡単にはわからない。
 だとすると歩き巫女は本当にすぐれた能力を持っているのか?
 そして実朝(柿澤勇人)に対して
「雪の日に出歩くな。災いが待っている」
 実朝暗殺を予告しているんですね。
 これで歩き巫女がすごい人であることがわかった。
 三谷幸喜さんはこういう人物描写が得意だ。

 のえ(菊地凛子)の描写も面白い。
 裏で義時のことを「辛気くさい男」と言っている。笑
 だが、三浦義村(山本耕史)には見破られた。
 裁縫をしていたのに米粒がついている。
 にぎりめしを食いながら裁縫をしていたに違いない。
 義村、シャーロック・ホームズのような名探偵か!

 見せ場と言えば、畠山重忠。
「一度いくさになれば一切容赦しない」
「本当に鎌倉のことを思うのであれば、あなたが戦うべきは……」
 カッケー!
 おまけに美形ー!
 最後に畠山重忠が全部持っていきましたね。

 すべての登場人物に見せ場をつくる。
 これが三谷幸喜作品なんですね。
 善児役の梶原善さんも「善児は自分の代表作になった」と言っていたそうだ。
 確かに他のドラマで梶原さんを見たら「善児」を思い出すだろう。
 

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6 コメント

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豊かな鎌倉・室町時代 (コウジ)
2022-09-14 08:40:49
megumiさん

いろいろ見ていらっしゃいますね。
そして鎌倉・室町時代は豊かで、まだまだたくさんの魅力的な素材が眠っていそう。
大河制作陣も「なんだ、この時代もいけるじゃないか」と認識を新たにし、今作を機に鎌倉・室町時代が増えていくかもしれません。
「太平記」は日本史に興味がある者としては、抑えておく必要はありますよね。
僕はまずコミックから読んでみようと思います。

「どうする、家康」に関しては、脚本が古沢良太さんなので、僕は期待しています。
タイトルからしてポップな作品になりそうですね。
返信する
時宗って・・・ (megumi)
2022-09-13 13:27:32
コウジさん こんにちは。

「北条時宗」は、リアルタイムで完走しました。
北条時宗は2度の蒙古襲来の対策に明け暮れた生涯で、早死にして気の毒でした。

時宗の父親が渡辺謙氏で、存在感が凄くて
彼が没した後は、締まりが悪くなった感じがしたものです。
(渡辺謙氏を好きではありませんが・・・)

鎌倉・室町も大河向きの良い題材があると思いますよ。
今、朝日新聞の連載小説が楠正成の息子・政行の話
なのですが
「太平記」を思い出しました。
(私、「太平記」は2周も見てます)

TEPOさんが仰るように
占いを生業とする人はカウンセリングの勉強もするそうです。
とにかく、相手の話をしっかり聞く傾聴の姿勢が大切ですからね。

大竹しのぶさんの演技に感心したのは
「元禄太平記」での大石内蔵之助の妻・りくを見たときです。
こちらのりくは良妻でした。

来年の「どうする、家康」はハズレの予感がします。
脇役陣しだいでしょうか?
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愚直な義時 (コウジ)
2022-09-13 08:07:10
TEPOさん

いつもありがとうございます。

戦争を仕掛けるには大義名分が必要なんですよね。
りくの場合は私怨と思い込みの要素が強いですが、こうして戦争は起こされる。
畠山にしてみれば、とんでもない理不尽だったことでしょう。
あとは戦争を止める歯止め。
この時代は、兵を動かすには『鎌倉殿の花押』が必要だったようですが、現代は法律と国会の承認。
それがなくなると『人治主義』になってしまうんですよね。
りくと時政の場合は、完全に人治主義です。

おっしゃるとおり、義時は「策士」ではないんですよね。
ともかく愚直。
そして調整と話し合いがうまくいかなければ暗殺やいくさ。
義時が策士であれば、後鳥羽上皇ともうまく渡りあえて、今回のようなことはなかったかもしれません。

そして歩き巫女。
話を聞いてもらえること。
これで人は救われるんですよね。
孤独で弱みを見せられない実朝なら尚更。
実朝が悩みを打ち明けたのが歩き巫女で、義時や実衣でなかったというのも哀しいですよね。
まあ、距離が遠いから離せるということもあるでしょうけど。
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中川大志さん (コウジ)
2022-09-13 07:50:53
megumiさん

いつもありがとうございます。

次回は畠山重忠の見せ場になりそうですね。
判官びいきで、重忠への同情があつまることでしょう。
調べると、中川大志さん、『平清盛』では少年時代の頼朝をやっているんですね。
僕が中川さんに注目したのは、朝ドラ『なつぞら』と『賭ケグルイ』。
順調にキャリアを重ねていらっしゃいますね。

『北条時宗』を御覧になっているのですね。
僕は今作『鎌倉殿』で鎌倉時代を知ったのですが、鎌倉時代って面白いですね。
幕末・維新が描き尽くされた感じなので、もっとこの時代を描いてほしいです。
返信する
Unknown (TEPO)
2022-09-12 22:11:58
りくの娘婿がりくの実子を殺害した
……真相は「りく組」内部での事件で、畠山は「巻き添え」だった、という次第。
仮にりくが真実を知ったとしても朝雅の肩を持ったでしょうか。
まあ、「目障りな」畠山よりは「身内の」朝雅の言葉を信じるのは彼女としては自然。
そして情けないのは、りくの言いなりの時政の愚かさ。
つくづく「悪女の恐ろしさ」を感じます。

のえも義時にとって本当に悪女だったとしたら、義時の最後は悲惨すぎますね。

>聡明であるがゆえの悲劇であるとも言える。

義時は聡明であるとともに、けっして「策士」ではなかったし、またこれからも策士とはならないでしょう。
策士というならば、のえの「裏」をすぐに見抜いた「名探偵」三浦義村の方がはるかに資質があります。
だからこそ、義時は「悪い顔だが、いい顔」であり、「主人公」なのだと思います。

>これで歩き巫女がすごい人であることがわかった。

彼女の「超能力」はたしかに本物なのでしょうが、実朝にとっては「心理カウンセラー」としての意味の方が大きかったように思います。
実朝暗殺はかなり先になると思いますので、今後どこまで実朝が成長し、味のあるキャラクターとなるのかが楽しみです。
返信する
畠山重忠が勿体無い! (megumi)
2022-09-12 21:48:30
コウジさん こんばんは。

「畠山重忠の乱」は、かなり尺を割いて描かれますね。
今回で、お別れかと思っていたら来週に持ち越しで
ちょっと嬉しいです。

中川大志くんの演じる畠山重忠が素敵過ぎて、他に目が向かなくなりました。
彼も大河は3回目なので、時代劇の演技や所作も上手くなっていますよね。

とは言え、再来週以降もきっちり見届けますよ。
三谷さんは群像劇が得意だと聞いていましたが、本当に、それぞれの人物描写に手抜きが無いですね。

「北条時宗」は、放送時に人気が無かったそうですが全話、見ました。
のえの息子(政村=7代執権)を伊東四朗さんが演じて出ていたそうです。
のえの願望は長い時を経て、ちょっとだけ叶うのです。
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