平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

青天を衝け 第17回「篤太夫、涙の帰郷」~尊皇攘夷か……まこと呪いの言葉になり果てた

2021年06月07日 | 大河ドラマ・時代劇
「この気持ち、平岡様にお伝えしたかった」

 一橋藩が引き渡しを拒んで、積年の恨みの岡部藩の代官に一矢を報いた篤太夫(吉沢亮)たち。
 篤太夫が泣くのはこの時なんですね。
 円四郎(堤真一)の死を知った時はショックで崩れるだけだった。
 死の悲しみとはこういうものなのかもしれない。
 悲しみは、生前にやってもらったさまざまなことが思い出されて、後からじわじわやって来る。
 まして篤太夫たちは円四郎の遺体を直接見ていないわけだし。
 ………………

 政局はガンガン動いている。

・禁門の変
 長州が帝奪還をはかって軍隊を京へ。
「命を下す。長州を討て」
「臣・慶喜、これより長州を征伐致します」
 迎え撃つのは一橋慶喜(草彅剛)。
 そして西郷吉之助(博多華丸)が率いる薩摩軍。
 敗走する長州軍。
 かくして長州は朝敵に。
 一方、下関では四カ国艦隊の砲撃を受けている。

 そして、これらの裏では、慶喜と薩摩の権力闘争。
 西郷は、慶喜の帝や朝廷における政治力を評価していて、しばし静観の様子。
 権力闘争は他にもあって、
 十四代将軍の家茂(磯村勇斗)はフランスとの接近を試みている。
 これが後の幕府・フランス VS 薩摩・長州・英国の戦いに発展する。

・天狗党の乱。
 60人で始まった攘夷運動が全国の志士を集めて1000人に。
 しかし執拗な幕府軍の攻撃で兵は削られていき、
 京にいる、水戸斉昭(竹中直人)の息子の慶喜を頼ることに。

 天狗党の指導者たちは慶喜を頼ったのか。
 円四郎がいなくなって、慶喜がふたたび攘夷に協力してくれると思ったのかな?

 一方、慶喜は──
「尊皇攘夷か……まこと呪いの言葉になり果てた」
 この台詞、ぞくぞくするなあ。
 結局、これが「内乱」や「外国艦隊の砲撃&賠償金」といった厄介なものをもたらしてしまった。
 これで円四郎も命を落とした。
 そして、このイデオロギーをつくったのが慶喜の実父……。
 慶喜の心中はかなり複雑であっただろう。

 複雑と言えば、篤太夫の状況も難しくなって来た。
 かつての仲間が参加している天狗党と戦わなければならないのだ。
 今までの篤太夫は結構、単純だったんですけど。

 戦国時代と比べて、幕末はこんなふうに複雑なのである。
 逆に言うと、この複雑さが幕末の面白さでもある。
 今作が慶喜視点を描いたことは、成功であっただろう。
 慶喜の苦悩はますます激しくなっていく。


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4 コメント

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今の所、慶喜が栄一より魅力的 (コウジ)
2021-06-12 08:52:55
2020-08-15 21:07:49さん

>なので、わたしはもう大河を見ないんです。
さすが筋金入り!笑

今作に限って言えば、今の所、
徳川cakeさんは主人公の栄一を食っています。
徳川cakeさんの方が栄一よりはるかに魅力的。
それは慶喜が深く悩んでいるからなんですよね。

栄一が慶喜を食えるようになった時、この作品は魅力的になると思いますが、果たして?
慶喜が後退しても、大久保利通とかが魅力的に描かれそうですし。
返信する
けど、やっぱり主人公視点です (2020-08-15 21:07:49)
2021-06-11 22:09:09
でも、やはり大河ドラマは単細胞です。
いくら徳川cakeさんが悩んでも、それは主人公である渋沢栄一を引き立てるための道具でしかない訳なので・・・

いやらしい見方かもしれませんが、その年の主人公を引き立てるだけの「主人公以外一億総脇役」が、大河だと思っています。

なので、わたしはもう大河を見ないんです。
返信する
慶喜視点の面白さ (コウジ)
2021-06-09 09:02:05
2020-08-15 21:07:49さん

いつもありがとうございます。

おっしゃるとおり、濃淡はありますが、その歴史観は単純明解なんですよね。
その方がドラマとしてはすっきりしますし、講談のような面白さがあります。

一方、この点、「青天を衝け」は複雑ですよね。
父の唱えた「尊皇攘夷」が円四郎を殺し、自分を苦しめていることに悩む慶喜。

「尊皇攘夷」を実行しようとするかつての仲間と戦わなくてはならない栄一。

本文にも書きましたが、慶喜視点を描いたことは今作の成功だったと思っています。
返信する
維新とか佐幕とか・・・ (2020-08-15 21:07:49)
2021-06-08 21:38:49
>戦国時代と比べて、幕末はこんなふうに複雑なのである。

おっしゃるとおりです。
なのに、大河ドラマの幕末史観はかなり単純です。

維新派が物語の主人公になった年には、
「今雄々しく立ち上がった清新の志士たちが、まさに維新の心がけを以て腐れ切った幕府を滅ぼすのだ!」
ですし、

幕府方が主人公になった年には、
「ああ、新撰組が、まさに薩長の暴虐の牙の前になすすべもなく、しかし、今滅びの美学を達成しようとしています。ああ、おかわいそうな美少年剣士沖田総司様が、今まさに果てようとしています」などとなるわけです。

んで、実際にはどっちもどっちです。
歴史を情緒で見るだけですから。
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