平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

「光る君へ」 第20回「望みの先に」~詮子、倫子、まひろ──男たちを出世させる女たち

2024年05月20日 | 大河ドラマ・時代劇
 長徳の変。
 伊周(三浦翔平)と隆家(竜星涼)の失脚。
 失脚までに至った原因は「詮子への呪詛」だが、これは誰がおこなったのだろう?
 推理すると──

・詮子(吉田羊)の自作自演
 自ら呪詛の札を置き、病を装った。
・倫子(黒木華)の情報リーク。
 倫子は詮子の意図を察して、内密にするのではなく情報としてリークした。

 こんな流れでしょうか?
 詮子は倫子を評して、こんなことを言っていた。
「倫子はよくできた妻だが、いささか口が軽いの」
 詮子は、倫子なら自分の意図を理解し、しゃべるだろうと考えていた。

 詮子と倫子が共謀したとも考えられるが、だとすると、
『倫子が呪詛の札を見せ、詮子が恐れおののく』というシーンを描いてはいけない。
 倫子が「では手筈どおりに」と言い、詮子がうなずくシーンでなければならない。
 倫子はどこかのタイミングで詮子の意図を読み取ったのだ。

 では道長(柄本佑)は詮子の意図を知っていたのか?
 倫子との会話で、「あ、そうか……」と言った時点で詮子の意図に気づいたのだろう。
 だが、まさか倫子がリークするとは思っていなかった。
「わたしにお任せ下さい」と倫子が言ったことで、内々のこととして処理するだろうと
 考えていた。

 だが、倫子はリークした。
 理由は、人のいい夫の権力基盤を絶対的なものにするためだ。
 道長は、伊周、隆家を邪魔だと思っていたが、力で排除しようとは思っていなかった。
 だから倫子が動いた。
 それは道長が手紙を隠して密かに思いを寄せる女性への対抗意識でもあっただろう。

 今回は『女性が男たちを出世させた』エピソードだった。

 出世させた女性は他にも。
 まひろ(吉高由里子)だ。
 まひろは為時の名で申文を書き、淡路守から越前守へ大出世させてしまった。

 詮子、倫子、まひろ──男たちを背後で動かす女性たち。
 大石静脚本の真骨頂だろう。
 ………………………………………………………………………………………

 一方、光ある所には陰がある。
 陰で悲嘆して苦しむ存在も。

 定子(高畑瑞希)だ。
 内裏から追われる定子。
「お上が恋しくて来てしまいました」
 髪を切る定子。

 つらい描写の中、唯一の救いがこれ。

 

 大石静さん、こういう味付けが上手いですね。
 つらいシーンをつらいだけで描かない。

 いずれにしても、
 権力を持つことは陰の部分を持つということ。
 時には政敵を排除しなければならないし、欲に囚われたり、強権をふるうこともある。
 権力を持った者が正気を保つのは大変なのだ。

 今後、道長はどうなっていくのか?
 これまでは詮子や倫子が動いたり、政敵の自滅で免れてきたが、
 いずれ自ら手を染めなくてはならない時が来る?

 どなたかが、道長が正気を失いそうになる時、正気に戻すのがまひろだ、と書いていたが、
 なるほど!
 道長は「闇落ち」せず、ずっと「光る君」であってほしい。


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5 コメント

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なるほど! (TEPO)
2024-05-20 13:15:17
>「詮子への呪詛」だが、これは誰がおこなったのだろう?

私も伊周・隆家兄弟の反応から見て、「呪詛」については冤罪だとは感じていました。
仕掛けたのは「人のいい」道長の「権力基盤を絶対的なものにする」ことを目論む人物だろうとも思っていました。
そして、何となく安倍清明あたりなのかな、などとぼんやり考えていました。

しかしながら、コウジさんの推理を拝見して「なるほど!」です。
>・詮子の自作自演・倫子の情報リーク。
たしかに詮子・倫子についての描写が細かく展開していましたが、例によって私は「道長が手紙を隠して密かに思いを寄せる女性」=まひろの「倫子様バレ」―今回も手紙を隠していた―ばかりに気を取られていました。

父を越前守に押し上げたまひろの運動、ぎりぎり「品の良い」範囲に収まっていてほっとしました。
まひろはあくまでも父為時の名でその漢学の素養を示す申文を書き、道長は「為」の字の筆跡でこれを書いたのはまひろであることを知る、との展開。
為時の抜擢は、当然それまで越前守候補だった源国盛を押しのける形となることはWiki的にも知られています。
本作では、「源国盛を越前守に」という人事は先週から暗示されていた詮子による情実人事であり、実はその国盛の漢学の素養は偽物で宋との外交関係が課題となる越前守としては不適格だったことが描かれていました。
為時が越前守となることは情実人事ではなく、適材適所の人事だったというわけです。

これから始まる越前編では、まひろサイドでは宋人たちとの関係がメインとなってゆくことでしょう。

おっしゃる通り道長はどうなってゆくのでしょうか。
>「闇落ち」せず、ずっと「光る君」であってほしい。

>つらい描写の中、唯一の救いがこれ。
それにしても清少納言とまひろ(=紫式部)とは仲が良いですね。
こんな行動まで一緒に付き合うとは。
しかし、この二人の関係もまひろが彰子に仕えるようになってからはどうなることでしょうね。
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禹歩(うほ) (2020-08-15 21:07:49)
2024-05-20 23:27:00
呪詛の騒動が落ち着いて、晴明と道長が会っていました。
晴明が青竹の囲い(結界?)の中でノッシノッシと変な歩きをしていましたが、道教や陰陽道などで使われる「禹歩」に見えます。まじないの一種で、あの歩きをすると魔物も妖怪も逃げるそうです。
たぶん秘術でしょうから、道長の前でわざわざやってみせるのは意味あってのことでしょう。
包み隠さず術を見せるのは、道長に味方するという意思表示かもしれません。
そう考えると「あなた様次第」というセリフも、一種の励ましのようにも思えますし、そこでつながりそうな気がします。

まつりごとをよくしたいと思う割には、あまり権力志向でなく、そのあたりの性質がゆくゆく迷いにつながるかもしれないことを予想した晴明が、「あなた様次第」と言って、禹歩をしてみせたのか、といったことも考えました。
返信する
ロバート秋山のクリエイターズファイル (2020-08-15 21:07:49)
2024-05-21 05:40:28
書き忘れました。

あとは、ロバート秋山の実資ですが、最後で検非遺使別当として乗りこんだときに、ちょっと笑ってしまいました。変な想像をしてしまったので。

ロバート秋山のクリエイターズファイル 第15489回
カリスマ検非遺使別当 藤原ヨネスケ
おしゃもじを持って犯罪捜査の陣頭指揮を執るカリスマ検非遺使。デップリとした見た目によらず俊敏なフットワーク。ヘイアンのみやびな都で黒々としたビッグフェイスの異様な偉容を誇り、彼の顔を見て震え上がる犯罪者多数。

といった文章が頭に浮かんでしまいました。
演技も中村吉右衛門の鬼平あたりを意識している感じでした。
火付盗賊改も、北町南町奉行のほかに設けられた臨時の機動捜査隊扱いでしたし、検非遺使も令外官でしたし、自然と似通った感じになるんでしょうか。
返信する
斉信の可能性も!? (コウジ)
2024-05-21 08:35:26
TEPOさん

いつもありがとうございます。

誰が呪詛をおこなったのか?
真相はまだ闇の中ですよね。
その後の安倍晴明との会話では、道長は「本当に伊周たちが呪詛をおこなったのだろうか?」みたいなことを言っていましたし、今回のことで一番得をした人=参議に出世した斉信の可能性もあります。
今後あきらかにされるのでしょうか。

まひろの行動は確かに「品が良い」ですよね。
大鏡?などに拠ると、あの漢詩を書いたのは為時なのですが、うまくアレンジしています。
漢詩を介して訴えるというのは、平安らしいというか、品がありますよね。

まひろと清少納言の関係。
次回の予告で清少納言が『枕草子』を書くシーンがあるようですが、記すことで、定子との日々は美しい思い出として刻まれ、恨みや理不尽は浄化されるのでしょう。
なので彰子が入内して、まひろが家庭教師になっても、ひとつの政治的な出来事として受け入れる気がします。

ただ唯一、亀裂が走る可能性があるとすれば、道長とまひろの関係を清少納言が知ってしまった時でしょうね。
このあたりは実に繊細で、描写を一歩間違うと、人間関係は違った方向に流れていくんですよね。
現状、今作はすべてが上手く紡がれいて、見事な織物になっているように思います。
返信する
反閇 (コウジ)
2024-05-21 08:56:32
2020-08-15 21:07:49さん

いつもありがとうございます。

安倍晴明のことはXでも同じことを指摘されている方がいて、地の邪気を祓う歩行法『禹歩』による『反閇(へんばい)』だそうですね。
北斗七星の形に七回地面を踏みしめる行為で、今作でも晴明は七回踏んでいたようです。

「あなた様次第」に関しては、僕は別の意味で解釈しました。
つまり道長が「闇落ち」すれば伊周は悲惨な目に遭い、今のまま、やさしい公明正大な政治をおこなえば伊周は救われる。

隆家に関する予言は『刀伊の入寇』で実現されるようですね。
『刀伊の入寇』で大活躍する隆家をぜひ見てみたいです。

藤原ヨネスケ。
『隣の晩ご飯』の米助師匠のことなんですね。
理解するのに10秒くらいかかりました。笑
クリエイターズファイルで、ぜひやってほしいですよね。
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