平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

どうする家康 第41回「逆襲の三成」~家康、三成、茶々、元忠、吉継……さまざまな思いがぶつかり合って関ヶ原が始まる

2023年10月30日 | 大河ドラマ・時代劇
「狸はつらいのう……」
 天下を鎮めるため表に出て権勢をふるうようになった家康(松本潤)。
 それは「天下簒奪の悪人」「逆賊」のそしりを受ける修羅の道である。
 しかし、それを引き受けるのは「力を持つ者」の務め。
 家康はそれを引き受けた。
 ここで引けば、中小の力を持つ者が互いに争い、ふたたび戦国の世に戻ってしまう。

 こんな家康の動きにもちろん反動が起きた。
「上杉景勝(津田寬治)に不穏な動きあり!」
 景勝は家康を認めなかった。
 上杉を屈服させることは、秀吉が北条を屈服させた時のように、天下統一を意味する。
「殿、宿願を果たす時が来ましたぞ。いくさなき世を成し遂げて下さいませ」
 最後の戦いに臨む徳川の諸将たち。

 一方、家康は上杉討伐に向かえば、自分に不満を持つ大名たちが立ち上がることを認識している。
 本多正信(松山ケンイチ)は不満分子をあぶり出す良い機会だと考えている。
 こんな状況下で家康は忠臣・鳥居元忠(音尾琢真)を伏見城に残す。
 それは有事の際に激戦が予想される、死を意味する場所だ。

 さて、家康が東国に下った時、誰が出て来るか?
「逆賊・徳川家康を成敗いたす!」
 石田三成(中村七之助)が立った。
 毛利輝元(吹越満)が立った。
 これらに応じて他の大名たちも。

 天下分け目の関ヶ原の合戦は近い。
 ……………………………………………………

 実に盛り上がる展開だ。
 やはり関ヶ原とそこに至る過程は日本史における最高のドラマである。

 さて、ここからがディティル。

 伏見を守り死を覚悟する鳥居元忠。
「どうする家康」は家康と家臣たちの物語でもあるが、今回も見事な別れの物語が描かれた。
 三成の挙兵がわかると、千代(古川琴音)が登場。
 いくさの準備を仕切り始めた。
 千代は今作の創作の人物だと思うが、やはりここで登場したか。

 佐和山の三成は大谷吉継(忍成修吾)にこう語った。
「今の暮らしが性に合っておる」
「内府殿が天下の静謐を取り戻すのは結構なことだ」
 三成の本心は如何に?
 自分が天下を動かす器でない事を知って穏やかに暮らす道を選んだのか?
 それとも野心は燃え尽きていなかったのか?
 こんな三成に火をつけたのが茶々(北川景子)だった。
 茶々は三成に黄金の軍資金を渡した。
 秀吉の遺志を守れと、損得ではなく信念で動く三成を焚きつけた。
 
 大谷吉継(忍成修吾)を家康に近い中立の立場として描かれた。
 吉継は「このいくさが終われば三成を政務に復帰させる」という家康のメッセージを三成に伝える。
 しかし、三成は信じない。
 自分に挙兵させないための嘘だと考えている。
 挙兵を止めるように説得するが、これも聞き入れない。
 結局、吉継は友の思いに殉じることに。

 そして茶々。
 三成を焚きつけると同時に家康にこんな手紙を送っていた。
「治部が勝手なことをして怖くてたまらないから何とかしてほしい」
 茶々は、家康と三成どちらが勝ってもいいように、予防線を張っている。
 なかなかしたたかだが、家康には見破られている様子。

 こうしたさまざまな思いがぶつかり合う関ヶ原は、最高のドラマになりそうだ。


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2 コメント

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ラスボス・茶々 (TEPO)
2023-10-30 18:01:58
>千代は今作の創作の人物だと思うが、やはりここで登場したか。

鳥居元忠の最期は余りにも有名なので、第36話で元忠の妻とされたのを見て「千代の始末をこうつけてきたか」と思っていました。
Wikiによれば、川中島で戦死した武田信玄の甥・望月盛時の妻・千代という女性は実在したようで、彼女を「くノ一」とする俗説が流布していたものの、その俗説は専門家によって批判されているとのことです。
完全なオリキャラではないものの、史実と伝説との間に置かれた人物のようです。
他方、鳥居元忠については武田家家臣であった馬場信春の娘を側室にしていたとの記述があるので、同じ「武田家中出身の女性」ということで押し込んだのでしょう。

ただし、本作は「関ヶ原」を扱った大抵の物語の展開(学問的な「定説的理解」と言えるかどうか自信が無いので「多数派的理解」と呼んでおきましょう)とは若干異なっています。
「多数派的理解」によれば、上杉景勝と三成ら「西軍」勢力とは連携しており、家康もそのことを承知していて、三成らに挙兵させるための「誘いの隙」として上杉討伐に向かい、わざとゆっくり進軍して三成らの挙兵を待っていた、とされます。
その場合、伏見城の元忠は完全に「捨て駒」ということになります。
従って、家康が元忠に伏見城を委ねる場面は、本作のように「死ぬかもしれない」などというようなものではなく、元忠を確実な死地に置くことを意味しており、それだけに切なくドラマチックな「泣かせるシーン」になる筈のものでした。

本作が「多数派的理解」とは異なることは、三成・毛利輝元挙兵の報が入った際の直政の台詞「ついこの間まではこのような(=三成や「西軍」勢力の挙兵の兆候となる)動きは認められなかった。わずか一月足らずのうちに何かが起きた」が明示しています。
つまり家康陣営では、三成はじめ「西軍」勢力の挙兵は「想定外」の事態であり、これをもたらした「わずか一月足らずのうちに起きた何か」とは茶々の暗躍ということになります。
大谷吉継とのやり取りを通して描かれていた三成の気持ち、蟄居の運命を大人しく受容していた前半と、挙兵を決意してからとの変化は唐突に見えましたが、「床下の軍資金」だけで全てを語らせていました。

さらに振り返れば、上杉景勝討伐を家康に勧めていたのも茶々でした。
要するに、「多数派的理解」を離れる―その結果、鳥居元忠との別れの劇的な味わいを少し犠牲にすることになる―ことによって、本作では「関ヶ原」を仕組んだ黒幕は茶々だった、と主張していることになります。
まさに「ラスボス・茶々」。
三成も茶々の手のひらで踊らされていた駒に過ぎなかった、というわけですね。
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床下の軍資金 (コウジ)
2023-10-31 08:15:56
TEPOさん

いつもありがとうございます。
千代にはベースになる人物がいたんですね。
毎回書きますが、この作品、史実にはなかなか現われない女性を登場させ、活躍させているんですよね。

上杉と三成の連携は『天地人』で描かれていましたよね。
主人公・直江兼続は『直江状』を書いて家康を糾弾していました。

「わずか一月足らずのうちに起きた何か」からの『床下の軍資金』の流れは見事でしたね。
おっしゃるとおりバックに茶々がいることがはっきりわかります。
>まさに「ラスボス・茶々」
>茶々の手のひらで踊らされていた三成
面白い物語の組み立て方です。
史実とは違うのでしょうが、これがフィクションの愉しさですよね。
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