Q,清瀧権現とはどういう仏様ですか?
A、清瀧権現は大師の御遺告によると、善女(善如)龍王のことで、密教守護のため出現した8寸(2.5cm)の金色蛇で9尺(3m弱)の蛇の頂上に位置するといいます。「弘法大師行状集記」には「天長元年仲春の比、天下大いに日照りす。公家、勅を下され、大師をして雨をいならしめんとす。・・大師神泉苑にして『請雨経』の法を修せられしに・・善女竜王、真言の奥旨を尊び、・・神泉苑の中よりその形を顕せり。金色八寸の蛇、長さ九尺ばかりなる蛇の頭に乗れり。・・三日の間洪雨、屡降りて普天の下、炎旱永く休みぬ。・・」とあります。「御遺告」には「亦神泉薗池邊御願修法祈雨靈驗其明。上從殿上下至四元。此池有龍王名善如。元是無熱達池龍王類。有慈爲人不至害心。以何知之。御修法之此吒人示之。即敬眞言奧旨從池中現形之時悉地成就。彼現形業宛如金色長八寸許蛇。此金色蛇居
在長九尺許蛇之頂也。見此現形弟子等實惠大徳并眞濟眞雅眞照堅慧眞曉眞然等
也。諸弟子等敢難覽著。具注言心奏聞内裏。少時之間勅使和氣眞繩御弊種種色物
供奉龍王。眞言道崇從爾彌起也。若此池龍王移他界淺池減水薄世乏人。」とあります。
善女龍王はインドより中国・青龍寺に飛来して同寺の鎮守(守護神)「清龍」となり、大師が帰国時に密教を守護することを誓って船中に影現され、海を渡ったので龍の字に「さんずい」を加えて日本では「清瀧権現」と敬称され、神護寺に勧請されのち聖宝により醍醐寺山頂に安置され真言密教を守護する女神となり、川崎大師 、成田山新勝寺 、高尾山薬王院にも勧請されています。
なお真言神道集に「清滝権現の御事 増道」という古文書がありました。そのまま記録しておきます。
「清滝権現御事
およそこの神は三国において密教を守護する霊神なり。しかれば則、天竺において龍猛の密教を護り、辰旦においては恵果の法流を守り玉へり。清滝の名字、青竜寺号深くこれを思うべし。ここに我が大師、大唐に渡って青竜の瓶水写したまへり。我が朝にこの法流を守る為に大師帰朝の時、同船したまへり。日域大同元年なり。しかれば桓武天皇崩御の故に且鎮西御逗留あり。御逗留の間は雨師大明神と号す。この神、天神の四所のうち之にいます。大同二年に大師入洛の後は室生山に影向あり、このこと由緒あり。善女竜王と号し奉る。そのご尊師、醍醐山建立の時、上醍醐本宮へ移したまへり。その後堀河天皇の御宇寛治四年四月四日、勝覚権僧正上の醍醐西谷准胝堂の傍らへ勧請奉る。その後同僧正の時、下醍醐へ移し奉る。ときに帝王正一位をくださる。そのときの官符いま御宝殿にあり。しかれば青竜わたらせ給いて清滝と申すことは、龍は水の精なり、水を精清とは申すなり、三水(さんずい)これを表わす。青とは東なり。東域にとどまって密教を守るべしとの表示なり。御本地をたずぬれば准胝・如意輪の二尊、両部理智の表示なり。しかれば如意輪の大事は金・蓮・寶の三なり。金・蓮二を以て寶の一をなす。二は両部爾二、一は両部二なり。そもそも垂迹を伺うに、一は別紙のごとし。また出家形と俗形と二これあり。出家形とはその形地蔵薩埵のごとく、衲袈裟を着し、両手に五輪を立て、左右の乳房程に捧げ、外に向かって各々以て大捻す。火甲の磐石の上に結跏趺坐、是は暫時化現の例、八幡は出家形なれども俗形は大師御筆を現わしたまふが如く以て正となすべし。高野御影堂に在り、左掌に金鉢を捧げて、金鉢に中に六裸の宝珠を入れたまへり。赤白青珠各二こなり。右手の地水二指を張り立てて大指の腸をもって火風を捻じたまへり。ここに地水二指は両部の大日、即ち佛菩薩内証甚深境界として一分も他に趣かず、両部本有の位を表して直く立てたまへり。火風の二指屈すは是れ両部大日本有無作の位より神変加持応用化他利生慈悲に趣きたまふ行相なり。これすなわち二明王なり。謂く、火はラン、即ち愛染明王、風はカン即ち不動明王、慈悲無所不至の故に空を以て二指を捻ず。空無辺際の義表なり。また空はこれ金剛薩埵、一切衆生の本有菩提心、一切諸仏能成の体性なり。二明王の慈悲によって薩埵法性の加持に会はしめ、一切衆生能生の本性を成の相なり、この一佛二明王を合して如意輪の体となる一義なり。金剛寶蓮之を思うべし。金蓮能く寶を成ず、成ずるところをこれ知るべし。次に左の余、如意珠は即ち御本地如意輪なり。いわく鉢は輪、珠は如意なり。六裸は六臂即ち六道利生の表示なり。いわく左の三手は迷うが故の三悪道なり。輪の手は地獄、蓮花は餓鬼、山は畜趣、右の三手は悟界がゆえに三善道なり。念珠は修羅、寶は人、思惟は天なり。また宝珠の色は、赤白はすなわち両部理智の二水、二明王の法水なり。青色白色所は兼色、不二なり。白色諸色のもとなれども至極の白は青のごとし、白の本色の所兼の青は不二を顕すなり。また赤の至極は黒なり、黒の浅は青なり、これ又赤の所兼至極、赤の至極は青、青色故青は不二と心得るなり。如意輪金色は赤白不二の形なり。本地の故に本色の不二を顕す、清滝は青竜なり、赤白兼色青色の不二を表わし、垂迹ゆえに所兼の用色を以て不二を顕わしたまふ。各二りは互いに理智の二法を具し、本迹不二加持無二の深意をあらわしたまふ也。又僧形は仏法守護の表示、両部の印明は説法智吉祥の印、表像密教流布の相なり、又御神体に付、至極甚深の習い、清滝擁護の印明これにあり、乞う明師について之をつたうべし云々、(終わり)
A、清瀧権現は大師の御遺告によると、善女(善如)龍王のことで、密教守護のため出現した8寸(2.5cm)の金色蛇で9尺(3m弱)の蛇の頂上に位置するといいます。「弘法大師行状集記」には「天長元年仲春の比、天下大いに日照りす。公家、勅を下され、大師をして雨をいならしめんとす。・・大師神泉苑にして『請雨経』の法を修せられしに・・善女竜王、真言の奥旨を尊び、・・神泉苑の中よりその形を顕せり。金色八寸の蛇、長さ九尺ばかりなる蛇の頭に乗れり。・・三日の間洪雨、屡降りて普天の下、炎旱永く休みぬ。・・」とあります。「御遺告」には「亦神泉薗池邊御願修法祈雨靈驗其明。上從殿上下至四元。此池有龍王名善如。元是無熱達池龍王類。有慈爲人不至害心。以何知之。御修法之此吒人示之。即敬眞言奧旨從池中現形之時悉地成就。彼現形業宛如金色長八寸許蛇。此金色蛇居
在長九尺許蛇之頂也。見此現形弟子等實惠大徳并眞濟眞雅眞照堅慧眞曉眞然等
也。諸弟子等敢難覽著。具注言心奏聞内裏。少時之間勅使和氣眞繩御弊種種色物
供奉龍王。眞言道崇從爾彌起也。若此池龍王移他界淺池減水薄世乏人。」とあります。
善女龍王はインドより中国・青龍寺に飛来して同寺の鎮守(守護神)「清龍」となり、大師が帰国時に密教を守護することを誓って船中に影現され、海を渡ったので龍の字に「さんずい」を加えて日本では「清瀧権現」と敬称され、神護寺に勧請されのち聖宝により醍醐寺山頂に安置され真言密教を守護する女神となり、川崎大師 、成田山新勝寺 、高尾山薬王院にも勧請されています。
なお真言神道集に「清滝権現の御事 増道」という古文書がありました。そのまま記録しておきます。
「清滝権現御事
およそこの神は三国において密教を守護する霊神なり。しかれば則、天竺において龍猛の密教を護り、辰旦においては恵果の法流を守り玉へり。清滝の名字、青竜寺号深くこれを思うべし。ここに我が大師、大唐に渡って青竜の瓶水写したまへり。我が朝にこの法流を守る為に大師帰朝の時、同船したまへり。日域大同元年なり。しかれば桓武天皇崩御の故に且鎮西御逗留あり。御逗留の間は雨師大明神と号す。この神、天神の四所のうち之にいます。大同二年に大師入洛の後は室生山に影向あり、このこと由緒あり。善女竜王と号し奉る。そのご尊師、醍醐山建立の時、上醍醐本宮へ移したまへり。その後堀河天皇の御宇寛治四年四月四日、勝覚権僧正上の醍醐西谷准胝堂の傍らへ勧請奉る。その後同僧正の時、下醍醐へ移し奉る。ときに帝王正一位をくださる。そのときの官符いま御宝殿にあり。しかれば青竜わたらせ給いて清滝と申すことは、龍は水の精なり、水を精清とは申すなり、三水(さんずい)これを表わす。青とは東なり。東域にとどまって密教を守るべしとの表示なり。御本地をたずぬれば准胝・如意輪の二尊、両部理智の表示なり。しかれば如意輪の大事は金・蓮・寶の三なり。金・蓮二を以て寶の一をなす。二は両部爾二、一は両部二なり。そもそも垂迹を伺うに、一は別紙のごとし。また出家形と俗形と二これあり。出家形とはその形地蔵薩埵のごとく、衲袈裟を着し、両手に五輪を立て、左右の乳房程に捧げ、外に向かって各々以て大捻す。火甲の磐石の上に結跏趺坐、是は暫時化現の例、八幡は出家形なれども俗形は大師御筆を現わしたまふが如く以て正となすべし。高野御影堂に在り、左掌に金鉢を捧げて、金鉢に中に六裸の宝珠を入れたまへり。赤白青珠各二こなり。右手の地水二指を張り立てて大指の腸をもって火風を捻じたまへり。ここに地水二指は両部の大日、即ち佛菩薩内証甚深境界として一分も他に趣かず、両部本有の位を表して直く立てたまへり。火風の二指屈すは是れ両部大日本有無作の位より神変加持応用化他利生慈悲に趣きたまふ行相なり。これすなわち二明王なり。謂く、火はラン、即ち愛染明王、風はカン即ち不動明王、慈悲無所不至の故に空を以て二指を捻ず。空無辺際の義表なり。また空はこれ金剛薩埵、一切衆生の本有菩提心、一切諸仏能成の体性なり。二明王の慈悲によって薩埵法性の加持に会はしめ、一切衆生能生の本性を成の相なり、この一佛二明王を合して如意輪の体となる一義なり。金剛寶蓮之を思うべし。金蓮能く寶を成ず、成ずるところをこれ知るべし。次に左の余、如意珠は即ち御本地如意輪なり。いわく鉢は輪、珠は如意なり。六裸は六臂即ち六道利生の表示なり。いわく左の三手は迷うが故の三悪道なり。輪の手は地獄、蓮花は餓鬼、山は畜趣、右の三手は悟界がゆえに三善道なり。念珠は修羅、寶は人、思惟は天なり。また宝珠の色は、赤白はすなわち両部理智の二水、二明王の法水なり。青色白色所は兼色、不二なり。白色諸色のもとなれども至極の白は青のごとし、白の本色の所兼の青は不二を顕すなり。また赤の至極は黒なり、黒の浅は青なり、これ又赤の所兼至極、赤の至極は青、青色故青は不二と心得るなり。如意輪金色は赤白不二の形なり。本地の故に本色の不二を顕す、清滝は青竜なり、赤白兼色青色の不二を表わし、垂迹ゆえに所兼の用色を以て不二を顕わしたまふ。各二りは互いに理智の二法を具し、本迹不二加持無二の深意をあらわしたまふ也。又僧形は仏法守護の表示、両部の印明は説法智吉祥の印、表像密教流布の相なり、又御神体に付、至極甚深の習い、清滝擁護の印明これにあり、乞う明師について之をつたうべし云々、(終わり)