大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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霧の狐道43

2008-04-20 18:42:21 | E,霧の狐道
 校長は、湯飲みを掴んで、お茶を一口飲んだ。

“ グビッ!”

そして、再び、自分の話に酔い始めた。

「 それで、ワシはおまえと違って正直に言って謝ったから・・・・。」

俺は、頷きながら湯飲みを見ていた。

“ なんか、この湯飲み、動いたぞ・・・。”

 俺は、ジッと湯飲みを見続けた。
少し俯き加減だから、反省しているように見えるだろう。

“ 動かないな・・・・。”

 俺は、湯飲みを見るのに、くたびれ始めた。
校長は、俺を見ながらパクパク口を動かしている。
そして、校長は再び湯飲みに手を伸ばした。

“ ス~ッ!”

湯飲みは、大きく右に動いた。

“ あっ、動いた!”

 俺は、思わず湯飲みに手を伸ばした。
校長の手は空を掴み、校長は湯飲みに眼を落とした。

「 あらっ?」

俺は湯飲みを掴んでいた。
校長はそれを見て、険しい顔で俺に言った。

「 どうして、ワシの湯飲みを移動させるのだ!」
「 いや、勝手に動いて・・・・。」
「 湯飲みは勝手に動かない!
 そうか、さっき湯飲みを掴めなかったのも、おまえの仕業だな。」
「 違いますよ!」
「 ワシはおまえのためを思って話しているんだぞ。
 ちゃんと、ワシの顔を見て、話を聞きなさい。」
「 ハ~イ。」

 俺は、一応、元気よく答えた。
でも、“おまえのためを思って・・・”と言うフレーズは、いつも何か胡散臭さを感じる。



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