校長は、湯飲みを掴んで、お茶を一口飲んだ。
“ グビッ!”
そして、再び、自分の話に酔い始めた。
「 それで、ワシはおまえと違って正直に言って謝ったから・・・・。」
俺は、頷きながら湯飲みを見ていた。
“ なんか、この湯飲み、動いたぞ・・・。”
俺は、ジッと湯飲みを見続けた。
少し俯き加減だから、反省しているように見えるだろう。
“ 動かないな・・・・。”
俺は、湯飲みを見るのに、くたびれ始めた。
校長は、俺を見ながらパクパク口を動かしている。
そして、校長は再び湯飲みに手を伸ばした。
“ ス~ッ!”
湯飲みは、大きく右に動いた。
“ あっ、動いた!”
俺は、思わず湯飲みに手を伸ばした。
校長の手は空を掴み、校長は湯飲みに眼を落とした。
「 あらっ?」
俺は湯飲みを掴んでいた。
校長はそれを見て、険しい顔で俺に言った。
「 どうして、ワシの湯飲みを移動させるのだ!」
「 いや、勝手に動いて・・・・。」
「 湯飲みは勝手に動かない!
そうか、さっき湯飲みを掴めなかったのも、おまえの仕業だな。」
「 違いますよ!」
「 ワシはおまえのためを思って話しているんだぞ。
ちゃんと、ワシの顔を見て、話を聞きなさい。」
「 ハ~イ。」
俺は、一応、元気よく答えた。
でも、“おまえのためを思って・・・”と言うフレーズは、いつも何か胡散臭さを感じる。
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