2、キツネ
職員トイレ逆噴射事件の後、ようやく俺は教室に戻った。
由紀ちゃんは俺を見て言った。
「 もう、遅い、遅い!
何、やってたのよ・・・。」
「 いや、いろいろ事件が起こって・・・・。」
俺は、由紀ちゃんに今までのトイレの経緯を話した。
でも、ゆらゆらしたヤツの話はしなかった。
由紀ちゃんは、俺の話を聞きながらゲラゲラ笑った後、一言言った。
「 ホント、バカねぇ~、フフ・・・。」
俺は由紀ちゃんが笑ってくれて満足した。
机の上を見るともう原稿は半分出来ている。
明日までに、コメントが欲しいと新聞係りに言われて仕方なく学校に残って作文をする破目になってしまった原稿だ。
「 じゃ、俺、ウサギ小屋のカットを描くよ。」
「 ええ、お願いね。」
由紀ちゃんは、原稿の残りを書き始めた。
初めの頃こそ、カットを描いていたのだが、俺はだんだん飽きてきた。
時間が経つに従って、俺は気乗りのしない仕事を放り出して、原稿用紙に向かって奮闘している由紀ちゃんの周りをうろうろしながら、どちらかと言うと作業の邪魔をしていた。
俺のしょうも無い歌声が教室に響いた。
「 フン、フン、フン、フン、鹿の糞♪
フン、フン、フン、フン、ウサギの糞♪」
由紀ちゃんが口を尖らせて言った。
「 あのね、何、訳の分からない歌を歌ってんの!
カットの絵をほったらかして・・・。
気が散って仕方ないじゃないの。
もう、私一人でやった方が早いわ。
日が暮れてしまう。
玄関で待っててよ、ホント、もう・・・・・。」
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