大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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霧の狐道45

2008-04-24 20:05:13 | E,霧の狐道
 校長は垂れ下がった髪を右手でサッと直し、俺を睨んだ。
俺は、校長の迫力に押されて、ゆらゆらしたヤツの方に眼を逸らした。

“ ピョン!”

ゆらゆらしたヤツは、ソファの背あてを飛び越して、ソファの後ろに入って見えなくなった。

“ あれは、何だ・・・・?”

俺が不思議に思って首を傾げたとき、校長の灰色の声が聞こえた。

「 見たな・・・・。」

俺は、ハッとして答えた。

「 いや、見てません!」
「 何、見てない・・・・。
 そ、そうか、見てないのか・・・。
 うん、見てなかったのか・・・・。」

俺は思った。

“ 何が、‘見たな’だ。
 誰が見ても、校長の頭の状態は分かるだろォ~。”

校長は続けた。

「 うん、そうだな・・・・。
 人、それぞれ、人に知られたくないことはあるもんだ。
 神谷君が掃除をサボったことは、家に知らせないでおいてやろう。
 ワシは寛大な心を持っているからな。」
「 それって、スゴク、ラッキーです。」
「 そうじゃろ、そうじゃろ。
 校長室であったことはすべて忘れて、真面目に生きるのだ。」
「 ハイ、そうしますです、ハイ。」
「 うん、うん。
 そして、ワシのように立派な人間になるんだ。
 分かったな!」
「 ハイ、分かりました。」
「 じゃ、山下先生には、ワシが指導したと言っておくから、この件は
 もうお仕舞いだ。」
「 ハイ、また、明日から、勉強します。」
「 よし、帰ってよろしい!」

 俺は、ゆらゆらしたヤツは何処に行ったのか気になって、校長室をキョロキョロ見回した。

“ おかしいな、何処に行ったのか・・・。
 見失ってしまったな・・・。”

校長は湯飲み茶碗を見て言った。

「 あれっ、お茶が無くなっているぞ。
 全部、飲んだのかな?
 あ、窓を閉めなきゃ、隙間風が入って頭がす~す~する。」

校長は、窓に歩いて行った。

「 あれっ、窓は閉まってる。
 風が入って来たと思ったが・・・・?」

校長は、窓の鍵を閉め直した。



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