大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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日々の恐怖 3月6日 初めまして

2014-03-06 19:26:58 | B,日々の恐怖




   日々の恐怖 3月6日 初めまして

 

 うちの母方のバアちゃんの話です。
母方のジイちゃん、バアちゃんはアメリカ人で、うちの父は日本人で母はアメリカ人です。
出張でアメリカにきていた父、交際は当時むちゃくちゃ反対された。
 特にバアちゃんが、日本人だけはダメ と猛反対。
しかし、母も、そこはアメリカの女の性格、持ち前の気の強さと揺るぎない意志で、絶対一緒になる!と突っ走った。
 バアちゃんが母を往復ビンタ、絶交する!と怒鳴りちらしても母は効かなかった。母は車ぶっ飛ばして家出して一事音信不通になったりしていた。

 とうとうお金を貯めた母は父の住む日本東京へ行く日になった。
バアちゃんは、空港に見送りに一緒にいきたいと告げた。
穏やかなバアちゃんに“あれっ?”と感じつつ、空港でバアちゃんに会った。

 バアちゃんが何かを差し出した。
古くて小さい日本のお守りと、古びた写真。
母は初めてみる物だった。
 そのときは、お守りというものすら知らなかった。
無造作に中を開けた。
そこには、古くてシワシワの小さな白い紙。
米粒ひとつが入っていた。
古くてシワシワ紙を読んでみた。
日本語で『ローザ、君を愛している』と書いてあり、英語の綺麗な字でアイラブユーとあった。
 パッとバアちゃんを見ると泣いていた。
わけをきくと、バアちゃんは結婚するまえ、大昔、日本人と恋に落ちた。
写真に移っている、背の低く丸い典型的昔の眼鏡をした優しそうな日本人。
それがバアちゃんが恋に落ちた彼だった。
 しかし、戦後すぐのアメリカと日本。
戦争の傷跡からか周囲は二人の結婚に大反対。
 日本にいる彼の親も大反対。
連れ戻すため、彼の親がアメリカにきて、彼を強制的に連れ帰ってしまった。
バアちゃんは、何ヶ月か泣いて泣いて毎日を過ごした。
自殺未遂まではかった。
 そして、日本から一通の手紙が届く。
中には、そのお守りがあった。

『 ローザ、君を愛している。』

読めない日本語だったが住所も書いてあり、バアちゃんは彼への愛を確信し、彼に会いに日本へ。
 どうにかして、彼の住む家付近についた。
近くを通った人に、住所をみせ、家をきくと顔色が変わった。
つたない英語で『dead』と言われた。
 半信半疑で家についた。
生気のない母が迎えた。
彼は自殺していた。
あのお守りは、彼が厳しい両親の目をかい潜り送った彼からのメッセージだった。
あれを書いた数日後自殺した。

 彼は死んだ。
アメリカにもどり、その後の狂乱ぶりは街でも有名になるくらいバアちゃんは病んだ。
セラピーも何年も受けた。
 どうにかして彼を忘れ日本を忘れ、(暗示療法か?)ジイちゃんと結婚。

『 まさかオマエ(母)が日本人と恋に落ちるとはね。
私は○○を忘れようと、何年も必死だった。
本心は○○がいない世界なら、死にたかった。
あれから日本人とは関わらないように関わらないないようにしてた。
日本がトラウマになってたから猛反対した。
怖かったから。
悪かったね。
だけど日本人を好きになったと聞いたとき、ほんとうは嬉しかった。』

とバアちゃんが号泣しながら語ったという。
写真には幸せそうに寄り添う○○と若いバアちゃん。
不思議なのは、バアちゃんも母さんも何も知らない日本人に一瞬で恋に落ちた。
家系なのか、単なる偶然なのか。

 あと、ひとつ。
○○が日本に連れ戻される前、泣き出したバアちゃんに言った。

『 もし二人が引き裂かれて、離ればなれになっても、僕は絶対生まれ変わってでも君に会いにくる。
君がおばあちゃんになってても、僕は絶対に君に会いにくるよ。
その時は、僕はすました顔で日本語で“初めまして”って笑って、桜を見せてあげよう。
僕を忘れてもかまわない、だけど、そのときは思い出してほしい。』

 それで、母ちゃんが初めて父ちゃんをバアちゃんちに連れてきたとき、緊張しまくった父ちゃんは、散々練習した英語虚しく咄嗟に、

「 初めまして。」

って言って、桜が舞い散るスノードームのようなものをバアちゃんにプレゼントした。
誰にも話してない内容だったから、バアはむちゃくちゃビックリしたそうだ。
バアちゃん嬉しかったってさ、○○、ありがとう。













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