日々の恐怖 3月23日 物置部屋
中学時代に体験したことを話します
私の家は都市から少し離れた町にあり、日本家屋が立ち並ぶ場所にありました。
両親は否定しましたが、近所の噂では元女郎宿を改築した家らしいです。
その家は丁度カタカナのコの字をしていて2階建てでした。
コの字の空白の部分は中庭になっていて、1階の中庭に沿っている廊下から庭に降りれました。
2階も中庭を見渡せるように窓付きの廊下が沿っていました。
さて、私は夏休みコの字でいう、縦棒の2階にある暗い広い和室で宿題をしていました。
ここは涼しくて勉強がはかどるのです。
両親は買い物に行き私は留守番も兼ねてました。
朝の九時から一時間くらいしたところでしょうか、私はトイレにいきたくなりました。
トイレは一階と二階にあり、どちらもコの字の下の横線の端っこにありました。
私は中庭を見渡せる廊下を通って二階のトイレで用を足し、トイレから出ました。
その時私は何気なく窓を見ました。
そこからは中庭をはさみコの字の上の横線の端っこにある物置部屋が見えるのです。
それも、なんと物置部屋の襖がガタガタ揺れているのです。
私は泥棒だと思いました。
朝から大胆だ、と思いながらも、実際はとて怖くて足がすくんで動けませんでした。
私はどうするべきが迷いながも泥棒が出くるところを見て、顔を見てやろうと思い、もう一度トイレに入ってドアを少し閉めて隙間から正面の物置部屋を覗いていました。
その時です、私は一生忘れられない光景を見ました。
ガタガタ揺れていた襖がピタリと止まったかと思うと、突然スーと開いて中から女性が出てきたのです。
女性は上半身は裸で真っ白い肌が印象的でした。
下半身は着物みたいなのを巻いていました。
髪はボサボサで全体的に気だるそうでしたが、目だけは血走っていた様に思います。
私はほんとうに腰を抜かしてしまいました。
どう見てもこの世の者とは思えなかったからです。
それに近所の噂になってる“この家は元女郎宿”という事も思い出しました。
その女は宙を睨んでいたかと思うと急に歩き出しました。
速度はゆっくりでしたが、じっと見ていると、なんとコの字の廊下を沿って歩いてくるのです。
このままでは、こちらがわのトイレに来てしまいます。
しかし、私は腰を抜かして動けません。
その女、コの字の縦線の宿題をしていた和室まできた時に突然スーと和室に入りました。
私はチャンスだと思い、自分に気合を入れトイレを出て中庭に飛び降りようと決心しました。
そして、ドアをソローと開けた瞬間でした。
その女が和室から凄い勢いで飛び出てきました。
そして窓越しに私の姿を見たとたん、凄い形相でこちらに走ってきました。
私は殺されると思い、窓を開けて大ジャンプをして飛び降りました。
着地に失敗しましたが、かまわず玄関に向かいました。
女が2階から降りてくると思ったのです。
私は外に飛び出すと、向かいの祖母の家に転がり込みながら、
「 おばあちゃん、おばあちゃん、幽霊がくるー!」
と叫びました。
祖母は凄い勢いできてくれました。
私の異常な状態にすぐに気づいてくれたのか、玄関を閉めて私を引きずるように家の中に入れてくれました。
私は今みた事を震えながら話すと、やさしい祖母の顔が段々と険しくなっていきました。
そして、台所に行き塩の壷を持ってくると、私を連れてコの字の家にいきました。
祖母はダダッと二階に駆け上がり、物置部屋まで行くと中に向かって、
「 なにしよるんや!
この子に手だそうとしたんか!
この子に手だしてみぃ、私が承知せえへんで!
わたしの前に出てきてみんかい!
塩まいたるわ!」
と叫びました。
その時、部屋の中でガタガタと音がしてすぐにやみました。
祖母は、
「 もう大丈夫よ、怖かったやろ~。」
と言って両親が帰って来るまで一緒に家にいてくれました。
その時に私は色々聞いたんですが、祖母はニコニコしながら、
「 わたしも、ようわからんけど、この家はアレやったからな~。」
と言いました。
私は“やっぱりこの家は女郎宿だったのか”と思い、それ以上は聞くのをやめて二人でテレビの高校野球を見てました。
それから、その家では何も起こりませんでしたが、私は高校に入ると同時に引越しをしました。
祖母は車いす生活になりましたが、今でも元気です。
怒った顔はアレ以来見ていません。
その後、コの家は取り壊されたました。
取り壊すとき解体業者の人が何人かケガしたみたいです。
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