大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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日々の恐怖 3月4日 内線

2014-03-04 18:23:40 | B,日々の恐怖



    日々の恐怖 3月4日 内線



 ある夏の日の病院夜勤。
うちは看護師2名で2交代。約15~16時間病棟で拘束されます。
この日も二人で夜勤しておりました。
 22時。
消灯時間も過ぎ、病室の電気も消え、真っ暗な病棟。
非常灯の明かりだけがぼんやりと光っていました。
業務もひと段落ついたころ。

プルルルルルゥゥ・・・

内線の電話が突然なった。
不意をつかれ、あわてて受話器を取ろうとするが、すぐ切れてしまう。

「 間違い電話か・・。」

そう思って、気にもしなかった。
 23時。
巡回の時間だ。
真っ暗な病棟を懐中電灯をもって、一つ一つの病室をまわる。
みんな、よく寝ている。
とくにかわった様子はない。
 最後の部屋を回ったところで、また内線が鳴る音が聞こえてきた。
ここはナースステーションから一番遠いところ。
足早にナースステーションへ向かおうとすると、またすぐ切れてしまう。

「 またか、事務のおっさん間違えすぎだろっ!」

と苛立ちを隠せず、ナースステーションに戻ってみると、他の部署の看護婦さんがいた。
 普段から気さくで他部署の私にもよく声をかけてくれるヒトだ。
しかし、夜勤の時間帯は、他部署の看護婦が来ることはあまりない。
なにやら真剣な顔。

「 あんた、さっきうちの病棟に電話かけた?」

は?
なんですと?
いやいや、かけてないし、さっきこっちも鳴ったところッス。

「 おかしいねぇ、うちの病棟でもさっき鳴ってね。
すぐ切れるし、間違いと思ってたけどもう4回目で。
気持ち悪くて全部の部署に聞いてみたのよ・・・。」

やっぱ間違いですかね?
 普段はへらへらしている看護婦さんの顔はすこし青白くなっており、つぶやくように小声で言った。

「 どこもかけてないみたい・・・・。」

・・・・・・
・・・・
・・・

一同絶句。

どういうことだ?頭の中でいろいろ考えがめぐる。

「 えーと、それはどういうこ・・・。」

プルルルウッルルルウルゥゥゥ

言い終わるかどうかのタイミングでそれは鳴って、すぐ切れた。
 その場の空気が凍るのが肌でわかった。
そのあとは、内線が鳴ることはなかったが、病棟全体がなんともいえない雰囲気だった。

 暗闇がいつも以上に深く、そこになにかがうごめいているようにも見えた。
最後の内線は、取ろうと思えば取れたかもしれない。
けれど、取らなくてよかったのだろう。
取ってしまうと、聞かなくてはならなくなる。
誰かの声を・・・。


と、まあ、お決まりのフレーズで締めたところで、はじめはただのワン切りかよ!って思ったんですがね。
病院はいろんなことが起こる場所です。













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