大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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日々の恐怖 3月27日 祭り

2014-03-27 19:04:44 | B,日々の恐怖



   日々の恐怖 3月27日 祭り



 俺の田舎の関する話です。
俺は神戸に住んでいるんだけど、子供の頃、オヤジの実家である島根の漁師町へ良く遊び に行っていた。
 9歳の時の夏休みも、親父の実家で過ごした。
そこで友達になったAと毎日遊びまくってて、毎日が凄く楽しかった。
 ある日、Aが神社に行こうって言いだした。
しかも、神社の社殿の中に入ってみようぜって。
 この神社についてまず説明します。
神社は山の上に立ってて、境内にまず鳥居がある。
山から麓までは階段が続いていて、麓にも鳥居。
それから、鳥居からまっすぐ海に向かうとすぐに浜に出るのだが、浜辺にも鳥居が立ってる。
つまり境内から海まで参道がまっすぐ続く構造。
ちなみに神明社。
 話を戻すと、俺はAについていって麓の鳥居の前まで来たんだけど、神様の罰が怖かったのと、なんだか妙な胸騒ぎと言うか、嫌な感じがしていたから行かないって言った。
Aにはこの弱虫とかさんざん言われて、癪だから随分迷ったんだけど、結局俺は行かなかった。
それで、20分ほど待ってたら、Aは戻ってきて、

「 つまんなかった。
社の中にはなんもない、鏡があるだけ。」

と言っていた。
なんだ、そんな物かと俺は、ほっとした。

 次の日には、Aから弱虫呼ばわりされたのもケロリと忘れて、Aとやっぱり遊びまくってた。
楽しい夏休みもいずれ終わる。
家に帰る時、Aは見送ってくれて、再来を約束した。

A「またな、来年も絶対来いよ。」
俺「おう。約束する。」

 で、次の年の夏休みも島根に来たんだけど、俺は御馳走されたスイカを食べながら、

俺「明日は、Aと遊びたい。」

と言ったら、ばあさんと叔父さんの顔が急に曇った。(ちなみにじいさんはずっと前に亡
くなってます)。

叔父「あのなあ、お前はA君と仲良かったから黙ってたんだけど、実はA君は死んだんだ。」
俺「えっ。」
叔父「夏休みが終わって、三日程してかな、海でおぼれちまって・・。」

もう俺はショックだった。
昨年の事を思い出して、もしかしたら神社の罰かもと思ったけど、まさか社殿に入っただけで神様が祟り殺すはずはないよなーと思い直した。


 それから、話が飛んで、俺が大学生の頃、オヤジが亡くなりました。
オヤジが亡くなった年の12月初旬に叔父さんから電話があって、大晦日から元旦にかけて 行う、オヤジの地元の祭りに参加しろとのことだった。

俺「おっちゃん、俺、神戸なんだけど。交通費もかかるし、参加しなくてもいいでしょ。」
叔父「馬鹿、お前、兄貴が亡くなったから、お前が本家の当主だぞ。
○○(俺の名字)の本家が祭りにでないなんて、絶対に駄目だ。
兄貴も毎年参加して、元旦に神戸へUターンしてただろ。」
俺「おかげでお袋は、その祭り、本当に参加しなきゃいけないの!って毎年ぷりぷりしてだけどね。」
叔父「ああ、言い訳は良いから。」

と言われて、しぶしぶ祭りに参加させれる事にちまった。

 当日、大晦日の20時に付くと、叔父さんがイライラして待っていた。

叔父「おせーぞ。19時には着くって言っただろ。」
俺「ごめんごめん、松江で鯛飯食ってたらから、でも祭りは21時からだから、十分間に合うでしょ。」
叔父「馬鹿、潔斎する時間を考えろ。」

俺は潔斎と言われて驚いた。
そんなに本格的な神事なのか? 
俺は慌ただしく、風呂場で潔斎して、オヤジのお古の家紋入り羽織袴を着せられ、祭りの会場の浜まで走って向かった。
 浜には、やはり羽織袴の人達がいっぱいいる。
この祭りは女人禁制どころか、各々の家の家長しか参加が認められいないものらしい。
時間が来たら、神主さんが海に向かって祝詞を唱えて神様をお迎えする。
 後は参道を通って、境内まで神主さんを先頭に、松明に照らされてぞろぞろと行列。
神様を社殿に鎮座させた後は、能や神楽等が催されて、一晩中、飲めや踊れやの大騒ぎで一晩過ごす。
飲みまくるのは神人共食神事? ってヤツかな。
 酒飲んで良い気分になってふらふらしてきた頃、社殿をぼーと見てたら、なんだかおかしい事に気付いた。
注連縄なんだけど、左が本、右が末になってる。
つまり、逆に付けられてんだ。
なんだこりゃ、と思いつつも酔ってたから、余り深く考えなかった。
 次の日、なんとなく気になって、叔父に注連縄の事を尋ねてみた。

俺「ねえ、神社だけどさ、注連縄逆じゃない。」
叔父「なに、お前、そんな事も知らずに祭りに参加してたのか。」
俺「だって、オヤジも教えてくれる前に死んじゃったし、おっちゃんも教えてくれてない
でしょ。」
叔父「そうか、すまんな、じゃあ、きちんと説明しておくか。」
俺「頼むよ。」
叔父「あの神社なあ、神明社で天照大御神を祭ってある事になってるけど、実は違う。
ご祭神はもっと恐ろしい物だ。」
俺「えっ、そうなの。」
叔父「明治時代に、各地の神社の神様が調査されたんだけど、役人がこの土地に来た時、単に土地の者は、神様って呼んでただけで、神様の名前は知らなかった。
何しろ昔の人間
は神様の名前なんて、恐れ多くて知ろうともしなかったし、興味もなかった。
それで、役人が適当に神明社ってことにしたらしい。
こうやって、各地の無名の神様が記紀神話の神様と結びつけられてったんだな。」
俺「じゃあ、何の神様か解んないんだ。」
叔父「いや、名前が解らんだけで、どんな神様かは解る。
お前、御霊信仰って知ってるか。」
俺「知ってる。
祟り神とか、怨霊をお祀りして鎮めることで、良い神様に転換して御利益を得るやつでしょ。
上御霊神社とか天神様とか。
まさか。」
叔父「そうだよ。
海は異海と繋がってるって言われるだろ、だから、良くない物が時々海からやってきてしまう。
特にここら辺は地形のせいか、潮のせいか、海からやってきた悪霊とか悪い神様が、あの浜には溜まりやすいらしいな。
それが沢山溜ると、漁に出た船が沈んだり、町に溢れて禍をもたらしたりする。
だから、溜る前にこっちから、神様をお迎えして神社に祭る。
それが祭りの意味だよ。」

叔父さんは続けて語った。

叔父「だから、注連縄はあれであってる。」
俺「えっ、どういう事。」
叔父「注連縄って、穢れた人間が神域に這入ってこれない様に、つまり外から内に入れない様張り巡らすもんだろ。」
俺「そうだね。」
叔父「あの注連縄は逆。
内から外に出れない様に張り巡らされてる。
つまり神様が外に出れないように閉じ込めてんだよ。」

俺は昔を思い出してぞっとした。
 昔、Aが社殿に入り込むと言う事がどれだけ無謀で危険な行為か理解できた。
Aはむざむざ外に出れないように閉じ込められている悪霊、悪神の巣に入って行った訳だ。
もし俺があの時、Aの話を断れずについて言ってたらと思うと、背筋が凍りついて、気が付くと手に汗でじっとりと濡れていた。












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