日々の恐怖 1月15日 顔(3)
一度も来たことのない場所なのに、BにはAの住む部屋がなんとなくわかった。
3階の、通路の奥から3つ目の部屋。
Bは鍵が掛かっているはずのドアを開けた。
玄関に入ると、右に洗濯機、少し進んで左に風呂場、その奥には電気がついたままの部屋。
部屋の中心には炬燵、左の壁際にベッド、そして右の壁際には本棚。
何となくAらしい雰囲気の部屋だとBは思ったと言う。
Aはそれを聞きぞっとした。
部屋のある階や場所、内装までまったく同じだったからだ。
Bは本棚を見て、本を貸し借りしていたことが懐かしくなり、本を手に取ってみた。
“ この漫画、最新刊出てたんだな。
このグレーの本は小説かな?”
と本をもう1冊取ったとき、急にBは強い気配を感じ、そちらを見た瞬間、本を落としてしまった。
本棚の横の白い壁に、右を向いた女の横顔があった。
Bが、
“ 何だ、コイツは・・・?”
と思っていると、その顔が徐々に回転し、こちらを向いて来る。
正面で向き合ったとき、女は無表情で肌の色が壁紙とまったく同じ白だった。
Bには一瞬仮面に見えたという。
“ これは本当に夢なのか・・・・。”
Bは突然無性に恐ろしくなった。
“ Aの部屋に何故こんなものがいるのか?
自分はこいつに引き寄せられたのではないか?”
そして、Bは、
“ ここに自分が来てはいけなかったのではないか・・・。”
と思った。
こちらを向いている女の顔が歪み、口が徐々に開いて来る。
“ 何だ・・・?”
とBが思った瞬間、急に誰かに襟首を掴まれたように、体が引き倒された。
Bが勢いよく仰向けに倒れて行く。
女の口が動いていたが、Bには何を言っているのか聞こえなかった。
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