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大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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日々の恐怖 1月28日 声

2017-01-28 21:42:20 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 1月28日 声




 30年も前の話なんで、記憶違いもかなりあると思う。
しかし、途中でトイレを借りた武州日野駅の公衆便所がやたら汚かったのは、はっきり覚えている。
駅の外にあるトイレでワラジムシが大量にいた。
 テントやコッヘルやコンロ、食料、毛布を持参して男4人でキャンプしに行ったんだけど、車で鉄橋を通るたびに下の川でバーベキューやキャンプや釣りをしてる人が見えて、

「 こんな人目があるところは嫌だな・・・。」

という話になって適当な場所を探していた。
 しばらく行くと木の橋があってそこに車を停めたと思う。
そこからリュックで川沿いにずんずん徒歩で歩いた。
川沿いといっても道があるわけじゃなくて大岩を登ったり、進めないところは川の中を歩いたりして川上に進んで行った。
 やっとテントを張れそうなちょうどいいスペースを見つけて、ここにしようってことになった。
あとはテントを設置して、トイレの穴を掘ったり、スイカやビールを川に沈めたり、川で泳いだりで特に書くこともないんだけど、山が近いせいかラジオが入らなかった。
NHKの電波だけガーガーいう雑音の中に少し聞こえて夜になると少しマシになるって感じだった。
 最初の晩はとにかく寒かった。
毛布を敷いてるのに地面の冷たさに参った。
 翌日、これは寒すぎだっていうんで何人か川を戻って、近くにあったキャンプ場に毛布を借りにいった。
でも夜の寒さが何とかなると快適そのもの、楽しいキャンプだった。
 おかしなことが起こったのは、それから2日くらいたってからだった。
真夜中、俺が聞き取り難いラジオを聞いていたら、突然、電池が切れた。
そして、周囲が静かになった。
 すると、外から女の声が微かに聞こえてきた。

「 川でキャンプをしないでください。
川でキャンプをしないでください。」

そう聞こえるんだ。
 川下のほうから声がすると思ってたら、だんだんと近づいてきてテントの前まで来た。
テントの前で喋ってるのが聞こえて、もう怖くて外を見ることも他の3人を起こすこともできなかった。
俺は毛布を被って、怖い怖いと思いながらも時間が経つと寝てしまったようだ。
 翌朝になると仲間の一人がもう帰ろうと言い出した。
夜へんなのが来た、川でキャンプするなって女が言いに来たって言う。
 寝ているとばかり思っていた仲間の一人も、同じ声を聞いていたらしい。
声を聞いていなかった2人が、

「 誰か本当に人が来たんだろう。」

と言ったが、その声を聞いていたヤツが、

「 街中の事件現場や病院じゃあるまいし、こんな人のいない山の中に女が来るわけない。」

これに俺も、

「 そうだ、そうだ。」

と同意した。
それで、これは相当ヤバイかもしれないと、結局キャンプをやめて帰ることになった。
 その帰り道に、また駅のトイレに寄ったとき、でっかいリュックを背負った行商のおばちゃんから、

「 あんたたち、あそこでキャンプなんかしたら危ないよ。
キャンプに来た若い子が鉄砲水に流されて何キロも下流で見つかったことがあるのよ。」

という話を聞いた。
 俺達がキャンプした川と、鉄砲水があったという川が同じなのかは分からない。
たぶん違うんじゃないかと思うし、実は今でも自分が体験したことを半分くらい疑っている。
でも、あの夜のことを思い出すと今でも不思議に思う。











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