日々の恐怖 2月6日 記憶(2)
三年前に母は他界した。
遺品整理の折に、行李の中から数冊の日記を見つけた。
俺が行方不明になった日は、母の激しい懺悔が記されていた。
そして、そこに張り付けられていたのは俺が残したメモ。
ただ、俺の記憶と違うのは、それが緑のペンで書かれていたことだ。
そして、その後の日記から、俺はどうやら行方不明で警察も動いたらしいことが読み取れた。
日記には段々憔悴していく母の様子が記され、ある日、
“発見”
という一語のあるページで日記は終わっていた。
その日を俺が行方不明から発見された日だとするのなら、行方不明になったときから二週間、俺はどこに行っていたんだろう?
保育所で起きたこと、小学校の入学式のこともおぼろげながら覚えている。
その家に帰ってからのことも、それなりに覚えている。
だけど、その2週間の間のことは先に書いたことくらいしか覚えていない。
父は十数年前に他界しているし、主だった親戚もいない。
当時と住んでいるところも変わっている。
母親は俺に何も言わなかったし、俺は俺で家出していたのは1日だけのことだと思っている。
いったい何があったのか、今更だけど知りたい。
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