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大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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日々の恐怖 2月12日 すみません(1)

2017-02-12 20:24:05 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 2月12日 すみません(1)



 前に勤めてた病院の話です。
そこは出来てまだ2、3年という新しい病院だった。
病床19床で、循環器と透析をしている病院というか診療所、そこに新卒で私は入社した。
 町外れにあるにも関わらず、患者さんは多く、繁盛していた。
新しい病院なので建物もきれいで、激務であったがそれなりに快適に過ごしていた。
 私が勤めていたのは、その病院の検査室だった。
出入り口は1ヶ所しかなく病院の中央に位置するところだったので窓もない。
そこで私と私より10年上の女性Aさんと仕事をしていた。
 検査室内での検査だけが仕事ではなかったので、外来に採血に行ったり、心電図を違う部屋に取りに行ったりで検査室にいないことの方が多かったが、外来も心電図の部屋も検査室から近く、看護師や患者さんが訪ねてきても姿や声ですぐ気付いた。
 ある日、心電図をとっていると、

「 すみません。」

という声が検査室の方から聞こえた。

“ 患者さんかな?”

と思い、急いでドアから検査室の方を確認すると誰もいない。
気のせいかと思い、その日はそれで終わった。
しかし、それからというもの、“すみません”という声は続いた。
 この“すみません”は謝罪ではなく声かけのほうで、本当に軽く、

「 すみません、誰かいませんか?」

というようなものだった。
 その声がする度に確認に行くが誰もいない。
きっと私の気のせいなのだろうとあまり気にもしてなかったが、あまりにも続くのでAさんに、

「 最近こういうことがよくあって・・、働きすぎですかねぇ?」

なんて冗談ぽく言ったらAさんの顔色が変わった。
 なんとその声をAさんも聞いていた。
自分だけじゃないということで、なんとなくこれは本当に何かがきていたんだなという気がした。
 その日のうちに調理室から塩をもらい、検査室の出入口に盛り塩をした。
その日から、ぱたりと“すみません”の声は聞こえなくなった。
 あの声は何だったのか分からないが、私もAさんも亡くなった患者さんが、亡くなってるのを分かっているのか知らないがまた検査しに来ましたという感じなのだろう、と思った。
それくらいにあの“すみません”は自然で悪意もないただの呼び掛けに聞こえた。
 これ以外にもAさんといるときこの病院でいろんなことがあったが、Aさんも同じ現象にあったのはこれだけだった。










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