新イタリアの誘惑

ヨーロッパ・イタリアを中心とした芸術、風景。時々日本。

ボッティチェリとフィレンツェ④ 「神から人へ」聖母をより身近に引き寄せたボッティチェリの作品群

2018-10-05 | ボッティチェリとフィレンツェ

 ボッティチェリは30代に入って精力的に聖母子像の作品を描いた。主なものを取り上げてみよう。
 まずは「書物の聖母」(1479年)。ミラノのポルツェ・ペツォオーリ美術館所蔵の作品。実に端正な聖母がいて、青が見事に映える。

 「マニフィカートの聖母」(1482年)。こちらの聖母は落ち着いた柔らかい表情で我が子を見つめている。

 その眼差し。

 天使たちはいずれを見ても美少年ばかり。耽美的な傾向がはっきり表れている。

 次に「柘榴の聖母」(1487年)。この辺りになると、華やかさというより陰りのある表情の方が強く意識される。
 表面の美しさより人の心(内面)をいかに画面に表現するかを探求していたのかもしれない。

 とはいえ、聖母の左側にも、

 右側にも、配された天使たちの何と美しいことか。

 さらに、こんなにも目のパッチリとした、整いすぎた幼いキリストは、そう簡単にはお目にかかることは出来ない。
 この2点はウフィツィ美術館の所蔵だ。

 これらの3点はさまざまな美術書にも大体掲載されている作品だが、もう1点今回の旅で見つけた印象的な作品がある。「聖家族」。
 パラティーナ美術館で、ほぼ順路の最後の頃、壁の片隅にさりげなく飾ってあった1枚だ。

 ひたすらに祈る聖母の真摯な表情に、一瞬のうちに引き込まれてしまい,誰もいない空間でしばし息を潜めて見つめてしまった。

 ボッティチェリは、師匠フィリッポ・リッピが神から人へと近づけた「聖母像」を、より親しい存在へと引き寄せた画家だった。
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