ティツィアーノ・ヴィチェリオ。ヴェネツィアルネッサンスを代表する画家。「画家の王」とも称された第一人者の作品も、しっかりとこの美術館に収蔵されている。
「聖母の神殿奉献」。この絵は元々この建物(以前はカリタ同信会館だった)のために描かれた作品だ。従って、出口の出っ張り(左右の下部)に沿うように変形した形で制作されている。
まだ幼子だったマリアが神殿を訪れ、15段の階段を上る場面だ。
マリアの愛らしいしぐさに思わず微笑みがこぼれる。
天才ジョルジョーネによって口火が切られたヴェネツィアの盛期ルネサンスは弟子のティツィアーノが成熟の頂点にまで押し上げることになる。
1518年、フラーリ教会に描いた「聖母被昇天」によって一躍注目を集めたティツィアーノは次々と秀作を発表し、1516年のジョヴァンニ・ベッリーニの死と共にヴェネツィア画壇のトップにのし上がった。
その後は劇的な構想、官能的な色彩などを駆使、イタリアのみならずヨーロッパ世界の代表的な画家として88歳の死を迎えるまで君臨し続けた。
「ピエタ」。1576年、その彼の絶筆となった作品。
あれほど華麗、華やかで躍動的だった作風が、最晩年には暗く沈んで荒々しい筆致になっている。結局完成することは出来ず、弟子のヤコポ・パルマ・イル・ジョーヴァネが引き継いで絵を完成させている。
彼の遺体は、出世作となり華々しく画家生涯のスタート点となったフラーリ教会「聖母被昇天」の近くにに埋葬されている。
「アルベルティーニの聖母」。
柔らかな肌色と優しさを湛えた瞳、体温を感じさせる生き生きとした表現の妙が、ここにも表れている。
ティエポロの作品もあった。彼はルネサンス期から遅れてやってきた18世紀の画家。ヴェネツィアにおける最後の巨匠ともいわれる。
「十字架の称賛」と題されたこの絵にも見られるように、彼の作風は軽快で、大胆な短縮法によって平面の壁にすっくと立ちあがる人物像などを見事に描き上げた。そんな天井画などが各地に残っている。
「モーゼとアロンネ」。たくましく立ち上がるモーゼ像に見入ってしまった。
ティエポロの絵は、どれも激しさと共に、諦観とも思える虚しさをも宿しているような気がする。
チーマ・コネリアーノの「キリストの死」。
ビザンチン時代の「聖母子」。こんなに素朴だけど愛らしい母子像に、久しぶりに出会った。すごく癒された。