初秋のフィレンツェの午後 突然の雨に見舞われた
まるでスコールのように 激しく地面をたたき
周囲を濡らし尽くして 1時間もしないうちにさっと止み
後には真っ青な空が 戻ってきた
急きょカフェに飛び込んで 雨上がりを待って外に出た
中心街の石畳は すっかり濡れ切って
くぼみには 水たまりも出来ている
ドゥオモ近くに来て ふと足元を見ると
そこにくっきりと 塔が立っている
ジョットの鐘楼だ
雨が創った水たまりが 即席の鏡に変わり
強い光を浴びた鐘楼を すっぽりとそこに映し込んでいる
14世紀に完成した塔が 21世紀の水面に
突然よみがえった
下部は 鐘楼より長い年月を経た石畳に 隠れた形だが
頂上部とそれを取り巻く青空が くっきりと浮かんでいる
さすが ルネサンスの都ならではの
自然が造り上げた 奇跡の絵画だった