初回に書いた通り、パリはデモ騒ぎで閉店してしまう店も多かったためパッサージュ内の賑わいもかなり縮小された状態だった。また、いくつかのパッサージュは通りそのものが閉鎖されてしまっていた。
ギャルリー・ヴェロ・ドダは入口から中をのぞいただけだった。
黒と白のタイルが敷かれ、重厚なムード。ネオクラシック調だ。
街灯が連なる一直線の通路は、夜なら一層美しいものになるだろうと思わせた。
パッサージュ・ショワズール。ここには開設当時2つの劇場があったことから、結構にぎわっていたという。
また、かつては文学書の著名な書店があり、ヴェルレーヌなどの文学者たちが出入りする通りでもあった。
残念ながらこの通りも閉鎖されていた。
19世紀前半。1789年のフランス革命を経てフランスは新しい時代へと歩みつつあった。
そこに、18世紀後半にイギリスで始まった産業革命を受けて資本主義が成長を始め、人々は誰もが未来への希望を語ることが出来た時代だった。 そうした背景の中で生まれ歓迎と共に受け入れられたパッサージュもまた、夢をのせて発展の道をたどった。
だが、その流れも瞬く間に時代の変化に押し流される。19世紀後半には新しい進化形態としてショッピングと総合娯楽の複合形態であるデパートが出現、これによってパッサージュは衰退への道をたどってゆくことになる。
21世紀。レトロブームの風に乗って、ある程度の復権を遂げたように見えるパッサージュ。
それが単に、失われてしまった時代への郷愁と感傷を一時味わうだけの場所に留まり続けるのか。あるいは明日へ向けての新しい価値を生み出す場所として生まれ変わるのかは、予断を許さない。
いつの日か改めてこれらのパッサージュを訪ねる旅をしてみようと思う。
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