ベルニーニはまた熱心なキリスト教信者でもあった。成長してから40年間、イエズス会の総本山であるジェズ教会に毎週欠かさずに通い、ミサに参加していた。
そのジェズ教会の天井には、バロック絵画の典型ともいわれるフレスコ画が描かれている。ジョヴァンニ・バッティスタ・ガウッリ作「イエスの御名の勝利」。カトリックの教えが全世界に広がって行くというテーマだ。
与えられたスペースからあちこちはみ出して、人物が天井全体を埋め尽くしている。
人々が絡み合い、錯綜し、極端な遠近法も多用される。バロックとは「ゆがんだ真珠」の意味だが、ここではゆがみを通り越して、まさにぶっ飛んだといってもいいほどの絵だ。
バロックの絵をもう1点。サンティニャツィオ教会はイエズス会の創始者イグナチウス・ロヨラに捧げられた教会だ。
中央に上昇して行くのが聖イグナチウス。
巨大な天井に何本もの柱が立ち、幻の楼閣が宙に浮いている。聖イグナチウスを中心に、四隅に人の固まったポイントが、アジア、ヨーロッパ、アフリカ、アメリカの4大陸を表現している。
仰視遠近法と呼ばれる絵画技法は、すべてが上へ上へと上昇して行く錯覚の世界を実現している。アンドレア・ボッツォの作品だ。
こうしてベルニーニが開いたバロックの世界は絵画、彫刻、建築など芸術の分野に広く浸透していき、ひいては「バロックのローマ」を形成して行った。
ジェズ教会という名前の教会はイタリア各地にあります。ちょうどマルチン・ルターなどの宗教改革でローマ教会の堕落が糾弾されたりした時期で、保守の教会側は建物の豪華な装飾などで権威を強調しようとしました。
必要以上にも思える豪華絢爛ぶりは、そんな社会情勢の背景もあったもののようです。