寒さがジンと染み透る早朝 目覚めたついでに散歩に出かけた
セーヌ川の橋を渡ると かすかに夜明けを告げる空が茜色に染まり
天に向かって針のように尖った屋根を突き出した 建物のシルエットが目に入った
コンシェルジェリー
ここはフランス革命でルイ16世と共に捕らえられた マリーアントワネットが
死刑になる直前の2か月 最後の日々を過ごした建物だ
ウイーンハプスブルク王朝の 王妃マリアテレジアの娘として生まれ
14歳でフランスに嫁ぎ 王妃としての半生を謳歌したものの
最後はコンコルド広場で 断頭台の露と消えた
突然思い出したのは 彼女の彫像だ
ちょうど前日に訪れた サンドニ聖堂にある墓の前に
彼女の像が供えられていた
胸に手を合わせ 何かを祈るかのようにうつむいて物思う姿が
背後のステンドグラスからの 光に包まれて
実に印象的だった
フランス革命時 彼女の遺体は集団墓地に葬られたが
20数年後の王政復古後 遺体捜索の結果発見され
改めて歴代フランス国王の眠る サンドニ聖堂に改葬されて
現在は夫のルイ16世の棺と 並んで安置されている
波乱万丈の生涯を過ごしたのは アントワネットだけではない
歴史的建物コンシェルジェリーでは 1793年1月から1794年7月まで
アントワネット以外にも 実に2600人もの貴族や革命家たちが
最後の日々をここで拘束された後 断頭台へ引かれていった
そんな壮絶な過去を 抱える建物にも今
安らかでほのぼのとした朝日が ゆっくりと昇ってゆく
身の引き締まる感慨を覚えた 師走の朝まだきだった
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます