新イタリアの誘惑

ヨーロッパ・イタリアを中心とした芸術、風景。時々日本。

エドゥアール・マネとその時代を歩く③ マネが試みた逆転の発想と黒の誘惑

2017-03-04 | マネと印象派
 大胆な作品を生み出したマネの創作の裏には、伝統的な絵画からのヒントが隠されていた。


 例えば「オランピア」の構図は、まさに先人の作品を下敷きにしている。


 ジョルジョーネの「眠れるヴィーナス」。

 そしてティツィアーノの「ウルビーノのヴィーナス」。

 また、「草上の昼食」にもティツィアーノ作品がヒントになっている。

 「田園の奏楽」がそれだ。

 いずれもヴェネツィア絵画の巨匠の作品。その伝統的な手法を想定しながら、神話や聖書といったものとは真逆の位置にある世俗の現実風景を描くという、画期的な試みを実践したのが、マネだった。

 また、色彩面でもマネは全く新しい形を取り入れた。従来の絵画では、黒色はほとんど使われなかった。だが、マネは率先して「黒」を多用した。

 「草上の昼食」では、右の黒服の男性によって左の女性の白い裸体が強烈な印象を持つことになったし、

 「オランピア」の女性の首に巻かれたタイの印象的な黒は、鑑賞者の視線を引きつけずにはおかない。

 他の作品も見てみよう。「バルコニー」では、背後の黒服が女性たちの白い衣装の鮮明さを一層際立たせている。

 詩人ポール・ヴァレリイーは「スミレの花束を持ったベルト・モリゾ」について、こう話す。「何よりもまず黒。完全な黒。喪の帽子の黒。ピンクの光沢がある栗色の髪がもつれるこの小さな帽子のあご紐の黒が、私を捉えた」。

 そして、ピサロの言葉は決定的なインパクトを持つ。
 「マネは我々よりたくましい。彼は黒で光を創った!」。

 マネは黒の画家でもあった。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« エドゥアール・マネとその時... | トップ | エドゥアール・マネとその時... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

マネと印象派」カテゴリの最新記事